トップ > ニュース&情報 > 国際情勢 > 鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

航空自衛隊出身の軍事ジャーナリストが内外の軍事情勢を多角的に分析する。メルマ!ガ オブ ザイヤー2011受賞

RSS


メルマガの登録・解除

登録した方には、メルマ!からオフィシャルメルマガ(無料)をお届けします。



軍事ジャーナル【11月27日号】中国空軍の敗北

発行日:11/27

 中国が防空識別圏の設定を宣言した。2月に中国軍の羅援少将が設定を提案していたが、その時点では軍上層部は羅援の提案を無視していた。それが何故この時期に採用されたかと言えば、16日、17日と二日連続でロシアの空軍機が沖縄に接近するという事件があったからだろう。
 この二日とも中国軍機がロシア機に対応する形で沖縄に接近しており、その飛行経路は今回設定した防空識別圏と重なるのである。実は12日にロシアのプーチン大統領はベトナムを訪問しており、ロシアの最新戦闘機の供与について話し合われたという。
 今のベトナムにとって最大の脅威は中国であるから、この露越の動きはどうみても対中包囲網の形成である。その上でロシア軍機の東シナ海進出である。中国は反射的に防空識別圏の設定を宣言したのであろう。要するにロシアを牽制したのである。

 しかし中国が防空識別圏を設定するとなれば、中国が領有を主張している台湾や尖閣、そして韓国の一部も含まれることになる。設定を宣言した23日、中国の情報収集機が飛行し、そこは日本の防空識別圏でもあるから、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進し中国機に接近し監視した。
 言うまでもなく中国から見ると中国の防空識別圏を日本の戦闘機が飛行しているわけだから、中国の戦闘機が緊急発進して日本の戦闘機に接近して監視しなくてはならない。ところが中国の戦闘機は緊急発進しなかった。
 そもそも防空識別圏とは戦闘機が緊急発進する範囲を指す。戦闘機が緊急発進しない防空識別圏など何らの実効性を持たない、言わば絵に描いた餅でしかない。それを見た米軍はB52爆撃機を飛行させ、やはり中国戦闘機は発進せず、中国が宣言した防空識別圏は八方破れの陣となった。

 おそらく航空自衛隊のF15が緊急発進したのを見て中国空軍の戦闘パイロットは二の足を踏んだのであろう。中国にはJ10やJ11などF15に一応対抗できる機種はある。しかし稼働率が異様に低く墜落率が驚くほど高いと言われる。当然訓練も儘ならず、パイロットの練度も低い。
 一口にいえば、空自のF15が出撃した瞬間に中国空軍は敗北したのである。中国が防空識別圏を設定したとの報を受けても動揺せず通常の手続きに従って緊急発進した空自のパイロットや現場指揮官の勇気は称賛に値する。
 これが民主党政権だったら、岡田幹事長みたいのが、中国を刺激するなとか言って緊急発進を中止させたに相違なく、そうなれば中国の防空識別圏は公式に承認されたものとなり、中国空軍は台湾、尖閣、韓国に勢力を広げていた。安倍政権は東アジアを救ったとも言えるであろう。

 中国の制服のトップ、軍事副主席の許其亮は空軍出身である。中国の権力闘争は昨今いよいよ激化しているから、許は責任を問われて失脚するかもしれない。失脚を免れるためには失敗を糊塗していよいよ強硬策に出ることも考えられる。たとえば1996年に台湾近くに軍事演習と称してミサイルを次々に打ち込んだが、形勢挽回、窮余の一策として有り得る。
 東アジア戦争の第1ラウンドに我々は勝利したが、戦いはまだ終わってはいないのである。

| 次の記事>> | 最新の記事

ブックマークに登録する

TwitterでつぶやくLismeトピックスに追加するdel.icio.usに追加Buzzurlにブックマークニフティクリップに追加Yahoo!ブックマークに登録記事をEvernoteへクリップ
My Yahoo!に追加Add to Google

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

登録した方には、メルマ!からオフィシャルメルマガ(無料)をお届けします。


この記事へのコメント

コメントを書く


上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  1. 名文,感服いたしました。

    とがわ 2013/11/29

  2. ロシア牽制とは考えも及ばなかった。

     2013/11/28

  3. 自衛隊万歳。それにしてもマスゴミが報じない価値ある情報をいつも有難うございます。

     2013/11/27

  4. メディアが流す情報だけでは解らないとこまで書かれていて、とても興味を持ちました。ありがとうござました。

     2013/11/27

  5. まさに常在戦場ですね。
    鍛冶先生に敬服いたします。

     2013/11/27

  6. とても勉強になりました。有難うございます。

     2013/11/27

  7. 鍛冶先生独特の見解、聞けばなるほどと大いに納得します。
    気違いに刃物との例えもあります、危険度を増すお隣様との付き合いにはハードとソフトのバランスが取れた備えを充分にする事が肝要と考えます。

     2013/11/27

  8. 大変参考になりました。近隣諸国と連携して
    中国を追い詰めていくべしと思います。

     2013/11/27

  9. 東アジア戦争の第1ラウンドに我々は勝利したが、戦いはまだ終わってはいないのである。

     2013/11/27

このメルマガもおすすめ

  1. Japan on the Globe 国際派日本人養成講座

    最終発行日:
    2013/11/24
    読者数:
    13129人

    日本に元気と良識を。歴史・文化・政治・外交など、多方面の教養を毎週一話完結型でお届けします。3万8千部突破!

  2. 宮崎正弘の国際ニュース・早読み

    最終発行日:
    2013/11/29
    読者数:
    20657人

     評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

  3. 頂門の一針

    最終発行日:
    2013/11/29
    読者数:
    5275人

    急所をおさえながら長閑(のどか)な気分になれる電子雑誌。扱う物は政治、経済、社会、放送、出版、医療それに時々はお叱りを受けること必定のネタも。

  4. 甦れ美しい日本

    最終発行日:
    2013/11/28
    読者数:
    7092人

    日本再生のための政治・経済・文化などの発展・再構築を目的とし、メールマガジンの配信を行う

  5. 桜・ニュース・ダイジェスト

    最終発行日:
    2013/11/23
    読者数:
    2531人

    開局以来、日本を主語とする番組を製作、発信している日本文化チャンネル桜の公式メールマガジン。レギュラー番組やオススメ番組の放送・配信予定など、チャンネル桜の最新情報に、よりスムーズにアクセス出来ます!

発行者プロフィール

過去の発行記事