〔クロスマーケットアイ〕物価上昇に日欧で異なる為替反応、追加緩和期待への影響がカギ

2013年 11月 29日 14:49 JST
 
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[東京 29日 ロイター] - 為替市場で、ユーロと円が同じ物価上昇に対し、異なる反応をみせている。現在、マーケットを動かすドライバーは金融政策であり、物価動向を追加緩和期待というフィルターを通した材料としてマーケットがみているからだ。ドイツの物価上昇で、欧州の追加緩和期待は後退しユーロ高が進行。一方、日銀目標に対し、インフレは不十分とみられている日本では追加緩和期待は途切れず、円安が続いている。

 <独CPI上振れで欧州緩和観測後退>

ドイツの11月消費者物価指数(CPI)速報値は前年比1.3%上昇し、前月から予想外に加速した。29日に発表される11月のユーロ圏CPIは0.8%の上昇が予想されているが、市場では、独CPIの上振れで、0.9%上昇に加速する可能性があるとの見方が強まっている。

本来なら、物価の上昇(インフレ)は、通貨価値の下落を通じて通貨安方向の材料だ。しかし、足元の為替市場では物価動向に反するようにユーロ高が一段と進行。ユーロ/円は一時139円70銭まで上昇し、約5年1カ月ぶりの高値をつけている。ユーロ/円の上昇にけん引され、ドル/円も5月23日以来となる102円台後半に入ってきた。

  物価動向と異なる動きをユーロが見せているのは、「現在、為替市場を動かすドライバーが物価動向そのものではなく、追加金融緩和期待にある」(IG証券マーケットアナリストの石川順一氏)ためだ。物価動向そのものではなく、物価動向がどのように金融政策に影響するかで為替の方向性が決まるという。

前月発表された10月のユーロ圏CPIは市場予想の1.1%に対して、0.7%と大幅に下振れするディスインフレとなり、利下げ懸念からユーロ売りが加速、欧州中央銀行(ECB)は7日の理事会での利下げへと踏み切った。

その「残像」が残る市場では、短期の物価動向を金融政策に結び付けやすくなっており、ドイツの物価上昇で、通貨安材料である追加緩和期待が後退し、ユーロ高につながっている。

<日銀の追加緩和期待は途切れず>

一方、日本でも物価上昇が進んでいる。29日に発表された10月の全国CPIで、振れの大きい食料とエネルギーを除くコアコアCPIも、前年比0.3%上昇と5年ぶりにプラス転換じるなど、物価上昇傾向が鮮明になった。

「アベノミクスの効果が次第に進展し、デフレ脱却に向け、脱出しつつある」(甘利明経済再生担当相、29日閣議後会見)と政府も認めるように、順調な物価上昇である。市場のドライバーである追加緩和期待が後退し、円高方向に振れてもよさそうなものだが、実際は円安基調は途切れないままだ。

日銀が掲げる目標は2年で2%のインフレ率。コアコアCPIが水面上にようやく浮上した程度では、市場の追加緩和期待は消えず、円安基調にも大きな影響を与えないという。「白川時代の1%目標では追加緩和期待は後退したかもしれない。2%とした初期設定がうまく効果を上げている」と第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は指摘する。

持続的で緩やかなインフレ傾向の維持にはまだ不十分との指摘もある。「2%達成には、サービス部門の賃金上昇が欠かせない。賃金を引き上げる動きも出ているが、消費税の8%への引き上げのマイナスインパクトを相殺するにはまだ不十分だ。持続的な賃金上昇のためには、規制緩和などを通じて、企業が安定的な収益拡大への自信を持てるようにする必要がある」とIHSシニアエコノミストの田口はるみ氏は話す。

  ただ、市場では「予想以上にアベノミクス効果が出ている」(国内証券)との声も聞かれる。夏場の大きな調整を経て、日本株高と円安は「第2ラウンド」に入ってきた。成長戦略などの遅れは懸念されているものの、経済指標も好調だ。安易な追加緩和は、さらなる追加緩和を求める市場との「追いかけっこ」にも陥りやすい。国債を7割購入する現在の緩和策を超えるインパクトのある施策はなかなかないだけに、「期待」をどうつなぐかが今後のポイントになりそうだ。

 <東京市場 29日> ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

日経平均  国債先物12月限 国債331回債   ドル/円(12:00) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 15716.51円 145.05円 0.610% 102.52/54円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

-10.61円 -0.04円 +0.010% 102.20/22円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 注:日経平均、国債先物、現物の価格は前引けの値。

下段は前営業日終値比。為替はLDN午後3時。

 
 
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*統計に基づく世論調査ではありません。