2013年05月10日 大人のお金の教養
陸上男子400mハードル選手として、シドニー、アテネ、北京と過去3度の五輪に出場してきた為末大さん。日本でも数少ないプロ陸上選手としても活躍してきました。一方で数々の著書を出すなど、アスリートきっての理論派としても人気を集めています。今回は為末さんに、引退後の目標や投資についての考え方を伺いました。
34歳での引退を決意。その先の人生を考えた。
- 神原
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為末さんの本で書かれている内容や引退後の活動などを見ていると、非常にロジカルで戦略的な方なのだという印象を受けます。そういった素養はいつ頃身につけたのですか?
- 為末
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子供の頃からかもしれません。体育の時間に「ポートボール」というバスケットボールみたいな競技をやったときのことですが、ルールでは禁止されていなかったので、友達を肩車してボールをゴールに入れようとしたことがあります。もちろん先生には怒られました(笑)。当時からルールや常識、みんなが普通と思っていることを疑って、いろいろと試してみることは好きでした。
- 神原
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常識に縛られない性格は誰かからの影響ですか?
- 為末
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スポーツそのものからの影響だと思います。スポーツの世界では、ルールが変わったり常識がひっくり返ったりすることはよくあります。たとえばカール・ルイスが活躍した時代には「長身が有利といわれていたのに、その後モーリス・グリーンが出てくると「手足が短いほうが良い」という話になった。「今は常識でも、いつか常識じゃなくなることがある
――気持ち的にもそう構えていたほうが変化に対応しやすいですよね。そんな意識や経験が、自分の性格をつくったのかもしれません。
- 神原
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引退後の人生について意識されたのはいつ頃からでしょうか。
- 為末
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25歳くらいのときに、練習の疲れが翌日になっても回復しないことがしばらく続き、体力的な衰えを感じて、引退後の人生をぼんやりと考えるようになりました。そして30歳で北京五輪に出た後、「次のロンドン五輪への挑戦を最後に引退しよう!」と決めたので、その4年間は引退後の去就についてよく考えました。その際、「自分は陸上競技を通じて何をやりたかったんだろう……」と自問自答しました。陸上に取り組んできた目的を明確にすれば、その目的を達成するための別の手段が見つかると考えたからです。
- 神原
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考えた末に見つかった目的とは?
- 為末
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「びっくりさせること」だったんです! 子供の頃、運動会で速く走ると親や友人がびっくりして、それが面白かったという体験が根本にありました。競技を続けたのもその延長線上です。勝てないといわれた試合で勝つとか、日本人で初めて短距離種目でメダルを獲得するとか、人にインパクトを与えることが自分のやりがいでした。そして陸上競技ではもうびっくりさせられなくなったので、「次はどんな手段で世間をびっくりさせようか」と考えているところです。
スポーツの語源はラテン語の「deportare」にあるとされます。表現をするとか発散をするという意味で、英語だと「play」。英語では演劇も音楽も遊びもスポーツも「play」で表現しますよね。裏を返せばスポーツは単に競技の側面だけではなく、遊びだったり気晴らしだったり表現だったり、いろんな使い道があるということ。スポーツの新しい楽しみ方を何らかのかたちで世間に広めることで、たとえば「気が付いたら健康寿命が延びていた!」ということになれば、インパクトを与えられますよね。そういうことに挑戦していきたいと考えています。
為末 大さん
元プロ陸上選手
1978年広島県生まれ。男子400mハードル日本記録保持者。法政大学卒業。五日市中学で本格的に陸上競技を始め、広島皆実高校3年で総体400m優勝。400mハードルは高校3年のとき、広島国体で初挑戦して優勝。大学から400mハードルに専念。2001年エドモントン世界選手権で、トラック種目では日本人初の銅メダルを獲得。2005年ヘルシンキ世界選手権で2度目の銅メダルを獲得。シドニー、アテネ、北京、3大会連続オリンピック出場。プロアスリートとして陸上競技に取り組む一方、陸上競技の普及活動も精力的に行う。2010年8月、アスリートの社会的自立を支援する「一般社団法人アスリートソサエティ」を立ち上げる。2012年6月、日本陸上競技選手権大会を終え、現役引退を表明。7月「爲末大学」を開校、新たな活動をスタートさせている。
主な著書に『日本人の足を速くする』(新潮新書)、『為末大 走りの極意』(ベースボールマガジン社)、『走る哲学』(扶桑社新書)など。
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- 「スポーツ」で社会問題を解決する。その可能性を探るための新たなレースが始まった。 - ファイナンシャルマガジン より