中国の一方的な防空識別圏設定に触発された中日の確執が米中の確執に拡大し、いわゆる「G2」(米中2大国)に挟まれた韓国は軍事安保に頭を痛めている。安保同盟関係にある米国と、最大の貿易市場である中国というG2のはざまでジレンマに陥っているというわけだ。専門家らはこれを「コリア・パラドックス」と呼んでいる。
2010年夏、韓国では哨戒艦「天安」爆沈事件を機に北朝鮮に武力アピールするため、西海(黄海)上で米空母戦団を含む大規模な韓米日海上合同演習を推進した。しかし、中国側が予想以上に強く反発したため、東海(日本海)上に訓練場所を変えた。中国や米国がどのような見解や反応を示すかにより、韓国の立場が非常に困難となることを示す例だ。
まず、韓米日三角安保同盟について、中国は「わが国に向けた封鎖政策ではないか」と疑いの目を持っている。韓国は中国を意識し、韓米日同盟に慎重なアプローチをしてきた。米太平洋軍司令官らが頻繁に言及した韓米日海上合同演習で、米日は戦闘訓練が含まれるハイレベルな合同演習を希望したが、韓国軍は捜索・救助訓練レベルでの参加にとどまった。もし米中対立が深まれば、韓国に対しどちらに付くのか選択せよとの要求が強まるかもしれない。
米空母戦団が含まれる西海韓米合同演習も、中国の反応によっては2010年のときのように「頭痛の種」になり得る事案だ。中国は初の空母「遼寧」を、西海を管轄する北海艦隊(青島)に配備している。軍消息筋は「中国は西海を自分たちの中庭と考えているため、米空母の西海進入を非常に不快に思っている」と話す。韓米両国軍は先月も西海上で米第7艦隊所属の空母「ジョージ・ワシントン」などが参加する合同演習を実施した。
韓中軍事交流・協力の強化は、韓国政府・軍が対北朝鮮抑止力確保などのため積極的に推し進めてきたが、米国はこれに対し直接的・間接的にけん制してきた。韓中軍事協力の強度が上がれば上がるほど、米国は敏感にならざるを得ないとみられている。
米中の確執が深まれば韓国の悩みも深まる軍事安保問題。日本の集団的自衛権行使問題も、米中の利害関係が分かれる。米国は中国をけん制するため日本の集団的自衛権行使に賛成・支援しているが、中国は反対している。しかし現在、この問題について、韓国政府は日本が韓半島(朝鮮半島)情勢に介入する可能性などを考え、警戒している状況だ。
米国のミサイル防衛(MD)体制に関する問題も懸案事項だ。韓国政府は、北朝鮮の弾道ミサイル飛行時間が短く迎撃が難しいという韓半島の置かれている環境や中国の反発などを考慮し、米MDに参加しておらず、韓国独自の防御手段を確保する「韓国型ミサイル防衛(KAMD)」体制の構築を推進してきた。米国は「韓国はどっちつかずの姿勢を取っている」との不満を抱いており、探知距離が1800キロ以上の地上配備Xバンドレーダーをペンニョン島に配備するよう要請している。