秘密保護法制報告:取材例、細かく規定 「あきれた内容」
毎日新聞 2013年11月26日 02時30分
「酔いに乗じて秘密を聞き出す」と罰せられる? 初めて内容が判明した麻生太郎政権の内閣官房が検討していた2009年の秘密保護法制の報告書は、処罰対象になる取材方法を細かく例示していた。現在の特定秘密保護法案は処罰対象を「著しく不当な方法」とだけ記し、具体例は示していないが「秘密保護」に関する官僚側の「本音」が垣間見える。識者からは「あきれた検討内容だ」と批判の声が上がった。【青島顕、日下部聡】
「買収」「多量に飲酒をさせて酔いに乗じて秘密を聞き出す」「引き出しに保管された秘密の盗み見」−−。報告書は「社会通念に照らし、妥当とは認められない方法」として七つの行為を例示した。共同通信記者時代に外務省の機密費を取材した小黒純・同志社大教授(ジャーナリズム研究)は「取材方法について、官僚から言われる筋合いはないし、法律で縛るのはおかしい。お酒を飲む程度にもいろいろあり、グレーゾーンを広げるだけだ。こんなことをまじめに検討していたなんて」とあきれる。
現在審議中の法案にある「著しく不当な方法」について、政府は「取材対象者の人格を著しくじゅうりんするもの」と説明。森雅子・法案担当相は7日の衆院本会議で「単に酒席において情報を得る行為は(不当な方法に)当たりません」と答弁したが、どの程度までよいか不明確なままだ。
また、報告書には秘密の有効期間も国会への報告も記載はない。秘密にすべき情報を第三者にチェックされることなく、事実上、官僚で独占できる構成になっていた。
指定された秘密の解除について、報告書は「要件に該当しなくなったときは、指定権者が速やかに解除しなければならない」とだけ記述。指定の期間や役割を終えた秘密文書の保存については一切触れていない。秘密に指定した文書が「要件に該当する」と官僚が判断する限り、永久に明らかにならない可能性が大きい内容だった。
現在の法案が含めていない地方自治体や独立行政法人の職員も、法の対象にすることが「適当」だと報告書は指摘。独法では「人工衛星の研究開発、大量破壊兵器に転用可能なロケットにかかる機微技術の研究」があることを根拠にしている。地方公務員や独法の職員も身辺調査を含む適性評価対象になると想定されていたことになる。