1票の格差:参院選「無効」判決 要旨
毎日新聞 2013年11月28日 東京夕刊
◇参院1票の格差、判決(要旨)
1票の格差を巡り、参院選岡山選挙区の選挙を無効とした28日の広島高裁岡山支部の判決要旨は次の通り。
第1 事案の概要
本件は、2013年7月21日の参議院議員選挙について、原告らが議員定数配分規定は人口比例に基づかず、憲法14条等に違反し無効であるから、岡山選挙区の選挙の無効を求めたものである。
第2 判断の要旨
1 国政選挙における投票価値の平等は、国民主権・代表民主制の原理及び法の下の平等の原則から導かれる憲法の要請である。
2 投票価値の平等は最も基本的な要請とされるべきであるから、国会は投票価値の平等を実現するように十分に配慮しなければならない。
3(1) 10年選挙後、4選挙区において議員定数を4増4減するという内容の改正がなされたが、それでも、本件選挙当日の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大格差は、1対4・77と5倍に匹敵する程度の格差であり、4倍を超える選挙区が6選挙区、3倍を超える選挙区が岡山県を含めて11選挙区に及んでいる。全有権者数の3分の1強の投票で、選挙区選出議員の過半数を選ぶことができ、不平等さは甚だ顕著であるといえる。
本件定数配分規定は本件選挙当時、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていると認められる。
(2) 09年大法廷判決は、07年選挙の選挙区間の議員1人当たりの選挙人数の最大格差は、なお大きな不平等が存する状態で、国会が速やかに適切な検討をすることが望ましいと判示している。国会は遅くとも、大法廷判決が言い渡された09年9月30日から、選挙制度の抜本的改革を内容とする立法的措置を講じる責務があった。
しかし、大法廷判決から本件選挙までの間、約3年9カ月の期間が存在したが、議員定数を4増4減するという改正にとどまり、本件選挙までに抜本的見直しを講じた改革に真摯(しんし)に取り組んだというには疑問が残る。16年選挙に向け、選挙制度の抜本的な見直しをした法案が成立する見通しは不透明だ。
投票価値の不平等状態の是正は他の懸案問題に優先して取り組むべきものであり、東日本大震災の対応や景気回復等の課題が山積していることを考慮しても、不平等状態を是正する案を国会に上程すらできなかったことの合理的理由があるとはいえない。