「クール・ジャパン」世界発信へ 官民ファンドが本格稼働
SankeiBiz 11月26日(火)8時15分配信
「クール・ジャパン」を世界に発信するための支援態勢が整った。官民ファンド「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」が本格稼働し、25日に東京・六本木ヒルズで記念式典を開催した。同機構は、“日本発”のビジネスを展開しようという意欲的な企業に出資。政府は海外市場の需要を取り込むことで、日本経済の成長を後押しする戦略を描く。
同機構の太田伸之社長は「短期決戦でなく、官民ファンドだからできることをやる」と強調した。機構は国が500億円、電通など民間企業15社が計75億円を出資して発足。太田社長は高級ブランドを展開する「イッセイミヤケ」の社長や大手百貨店、松屋の常務執行役員を務めるなど、ファッション業界に詳しい。スタッフには投資ファンドやバイヤー経験者らを集めた。
機構設立の狙いは、クール・ジャパンを海外で展開するための「基盤」への投資だ。日本のファッションブランドやレストランなどを集めた複合商業施設、日本の劇団や歌手が出演する劇場、ライブハウス、日本の番組を流す衛星放送チャンネルなどへの出資を想定する。安倍晋三政権の成長戦略「日本再興戦略」は、2018年までに放送コンテンツ関連の海外売上高を現在の3倍にする目標などを掲げた。
政府は、これまでもクール・ジャパンの海外展開を支援してきた。海外での試験出店などを支援する「クール・ジャパン戦略推進事業」は、10年度から40を超える事業を支援した。商業ビル大手のパルコは今年2~3月、シンガポールで同事業を活用。中心地の商業施設内で、日本と現地のファッションブランドなどを集めた期間限定ショップを開き、17日間で来客数が目標の5000人を大幅に上回る約5万人を記録した。パルコの阿部正明常務執行役は「予想を上回る反響。商品の現地化などを実地に試すことができた」と語る。今年度も三越伊勢丹ホールディングスがニューヨークで、ラーメン店「博多一風堂」を展開する力の源カンパニー(福岡市)がパリで、それぞれ試験販売などを行う計画だ。
とはいえ、政府が主導する文化産業の海外展開では、韓国が一歩先んじている。韓国はコンテンツ予算を大幅に引き上げ、2009年には文化産業を支援する政府機関「韓国コンテンツ振興院」が設立された。
日本が韓国に追いつくためにはどうすればよいか。経済産業省の伊吹英明クール・ジャパン海外戦略室長は「販売拠点や流通網が弱点になっている」と述べ、リスクが高い大型案件にも投資し、販売基盤を整備する方針だ。
また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの白藤薫主任研究員は「投資以外にも、海賊版の取り締まり要請など国でしかできない後押しを進めることが重要だ」と政府の役割を指摘している。(三塚聖平)
最終更新:11月26日(火)10時11分
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