社説:日韓関係 冷静に向き合いたい
毎日新聞 2013年11月28日 02時30分
日韓関係は、出口の見えない迷路に入り込んでしまったかのようだ。安倍晋三首相と韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は就任以来、まだ一度も公式対話に臨んでいない。
27日には韓国外相がソウルで「関係安定化には韓国政府も努力する。日本側もかなり気を使っている」などと発言し、前向きの変化を期待する見方も流れたが、首脳会談につながる変化ではなさそうだ。
目の前の日韓摩擦は深刻である。特に韓国司法が、日韓国交正常化の際に取り決めた国家間の合意に反する形で、元韓国人労働者への損害賠償を日本企業に命じる判決を連発したこと。これは国際的な法秩序を揺るがすものであり韓国への信頼を大きく損なったと言うほかない。
最近は大きな話題にならないが、従軍慰安婦を象徴する少女像がソウルの日本大使館前や米国にまで設置された件なども、日本国民の韓国観を手ひどく傷つけてしまった。
韓国側にも言い分はあろうが、あまりに一方的な対日非難は関係改善の可能性をつぶしてしまう。
朴大統領は安倍政権の歴史認識への不信を理由に日韓会談を拒み続け、その姿勢に多くの日本国民が強い違和感を抱いている。
朴大統領には、少なからぬ日本国民が現在の日韓関係を極めて残念に思っている事実を真剣に受け止めてほしい。隣国の統治権者があまりに硬直した姿勢を維持し続ければ、国民の対韓イメージは冷ややかなものとなり、人的、物的な交流も沈滞してしまうだろう。
私たちは朴大統領を一方的に批判しているのではない。日韓が多様な分野で良きライバルとなり、互いに認め合う関係になりたいと思うからこそこの指摘をするのである。
一方、安倍首相をはじめ政権幹部と外交当局は、あらゆる手段を駆使して日韓関係改善の道を探るべきである。韓国の当局者らも日韓関係を重視し、対策に力を入れているという。好機をのがしてはならない。
また、東シナ海の大半に防空識別圏を設定した中国の動向について、韓国は遺憾の意を表明したものの対中貿易への依存度が極めて高いことなどから摩擦を起こしたくないのが実情だ。これは韓国にとって極めて敏感な問題であり、日米韓の防衛当局者による協議を急ぐなど、3国の結束が乱れないよう細心の注意を払うべきである。
一連の日韓摩擦では韓国メディアの激しい批判が続いたが、最近、韓国紙の論調にも柔軟さが見える。状況が一変するわけではなくとも、日韓双方で前向きの流れを作ることは不可能ではないように思える。ぜひとも実現せねばなるまい。