〔クロスマーケットアイ〕「別世界」の円債市場、低金利嫌う国内勢は外債投資に傾斜
[東京 28日 ロイター] - 株高・円安が一段と進行しているにもかかわらず、国内金利は低下傾向にある。日銀による国債の大量買いを背景に円債市場は一種の「別世界」と化しており、低金利にしびれを切らした国内機関投資家は外債投資に傾き始めた。円債の買い手が多少減少しても、売り手は少なく、好需給に支えられた円債金利は低水準で推移している。
<外債投資は今年3番目の大きさ>
ドル/円 が102円台に乗せ、日経平均 が終値での年初来高値を更新した28日、円債市場はそれらと反する動きをみせ、一段と金利低下が進んだ。順調に入札を通過した2年債利回りは0.085%と日銀が「量的・質的金融緩和」の導入を決定した4月4日以来の水準に低下。5年債利回りも0.185%と4月9日以来の低水準となっている。
10年長期金利はリスクオンの流れから11月25日に0.64%を付けたが、その後は再び低下傾向となり、再び0.6%割れが視界に入っている。金融緩和をベースにする流動性相場では、株高・債券高が同時進行することもあり、珍しいことではないが、金利収入を糧とする国内機関投資家にとっては喜べない状況だ。
実際、財務省によると11月17日―11月23日の対外債券(中長期債)投資(指定報告機関ベース)は1兆4056億円の資本流出超と、国内勢の外債投資は今年3番目の大きさとなった。7週連続の買い越しとなり、計5兆2222億円に達している。米国債だけでなく、フランスなど欧州債にも欧州中央銀行(ECB)などの利下げなどをきっかけに投資が進んだとみられている。
<生保の「参戦」にも期待>
国内の外債投資は、銀行勢が中心とみられ、生保勢の動きはまだ鈍いが、長らく続く金利低迷にしびれを切らし、外債投資に関心を示す生保も出てきている。
住友生命保険は円高リスクが後退したとして、今年度は5年ぶりに外債投資で為替リスクをとる運用を再開。前日会見した古河久人常務執行役員は「円金利中心の運用だが、許容範囲内でリスク資産への投資は、今後の内外の金利為替動向をみて機動的に対応したい」とし「(資産ポートフォリオの)リバランスが起こっているという面もある」と述べた。
ALM(資産と負債の総合管理)上、長期の支払いに対応した長期の円金利資産への投資が中心になるとはいえ、巨額なマネーを握る生保が外債投資に動き出せば、円安が一段と進む可能性もある。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など公的年金の改革案でも投資の分散が提言されており、為替市場の円安予想の背景にもなっている。
国内勢が本格的に外債投資を進めれば、円債に回るマネーが減少する懸念も強まるが、市場では「短期では外債投資と円債投資は別個に動いている。外債投資を増やしたからといって円債投資が減るわけではない」(国内銀行の運用担当者)という。
りそな銀行・総合資金部チーフストラテジストの高梨彰氏は「日銀による大量の国債買いが需給を引き締めており、多少のことでは金利は上がらないだろう。買い手が少なくなっても売り手は少ない」と話している。 <日本株には依然慎重な国内勢>
一方、低金利を嫌った国内勢のマネーが日本株投資に回ることは依然少ないようだ。国内金融機関と個人投資家合計で、今年1月から10月までに約10兆4000億円を売り越している。その間、外国人投資家は約10兆6000億円買い越しと、金額はほぼ合致する。
株高・円安のアベノミクス相場「第2ステージ」が始まった11月に入っても、日本株の海外勢買い対国内勢の売りという構図は続いている。第3週までに外国人投資家が約2兆円買い越しているのに対し、国内金融機関と個人投資家は1兆9000億円の売り越し。「日本株に対しては、国内機関投資家の利益確定売り基調が続いているほか、個人投資家は来年からの株式譲渡益課税引き上げに備えて依然として売り越し基調だ」(国内投信)という。
28日の日本株市場では、海外勢がやや引き、国内勢が買いを入れているとの指摘もあったが、「アルゴリズム取引などで上げ幅が増幅されているだけだ。国内勢の買いは入っているが、中身は薄い」(国内証券トレーダー)という。日本株は大幅高となったが、東証1部売買代金は2兆円を割り込んでいる。
ただ、国内勢の外債投資で円安が進めば、海外勢の日本株投資が加速する可能性もある。大和証券・投資戦略部課長代理の熊澤伸悟氏は「足元の日本株を押し上げたのは、ヘッジファンドなど為替に敏感な海外短期筋だ。円安が一段と進めば、海外短期筋が日本株をさらに買ってくることが期待される」と話している。
<東京市場 28日> ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日経平均 国債先物12月限 国債331回債 ドル/円(15:00) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 15727.12円 145.09円 0.600% 102.15/17円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
+277.49円 +0.01円 変わらず 102.15/17円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 注:日経平均、国債先物、現物の価格は大引けの値。
下段は前営業日終値比。為替はNY午後5時。
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