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今回、本戦のトーナメント表を挿絵として挿入してみました。
期待せずにご覧ください。

第92話





 結論から言えば、俺はルクスとのいきなりの戦闘は避けられた。
 しかし、ルクスと同じくらい厄介そうな『疾風勇者』が初戦の相手だった。
 なんだか、人為的な策略の気もするがどうせ一回戦では予選勝ち残り組みとシード組みでのカードが組まれるらしいので他の相手でも大して変わらないだろう。

 ルクスと戦うまでに3回勝ち抜く必要がある。
 というかこれならルクスに無理して勝たなくても3位決定戦でお目当ての賞品が手に入る。
 色んな奴らが出てるな。
 それぞれの名前を覚えきれないので選手に無料で配ってくれているトーナメント表に直接見たときの印象を書きなぐっていく。

挿絵(By みてみん)

 初めて見る種族も結構いる。
 ファンタジーの王道、『エルフ』や、ケンタウロスのつがい。
 こういったトーナメントものに不可欠のミスターXまでいる。
 まあステータスで確認すれば正体はバレバレなんだが。
 おそらく、王族がセルヴァの為にトーナメントの席をひとつ空けてくれていたんだろう。
 王族近衛も数人出ているから、自分のお気に入りの戦士をぜひ、とか言われて半泣きでアイリーンに頼んだのだろう。

 魔族もあの一体が最後ではなかったようだ。ちゃっかり本戦に進出している。


「ヒビキ、ここにいたのか」

 ルクスが手にトーナメント表を持ってやってきた。

「ヒビキと戦えるのは準決勝になるね」

 ルクスもすでに俺といつ当たるか確認していたようだ。
 最も、ルクスは俺との試合を楽しみにしているのに対して俺はルクスとの試合に勝たなくても良いことに安堵しているのだが。

「そのためには、一回戦で『疾風勇者』を倒さなきゃいけないがな」

「大丈夫。ヒビキなら勝てるよ」

 何の迷いも無くそんなことを言い放つルクス。
 近くに『疾風勇者』がいなくて良かった。また、あの癇癪を起こされたらかなわない。

「まあやれるだけやるさ。賞品が欲しいからな」

 肩をすくめてルクスに答える。
 本戦開始は次の日の朝なので今日はこれで帰っても構わない。
 しかし、周りの本戦参加者達は一様に周りを警戒し少しでも情報を集めようとその場から動かない。

「よし、お腹もすいたし、ご飯にしよう」

 そんな空気など気にもせずにルクスはずんずんと広場から遠ざかっていった。
 さすが、勇者様は胆力が違うな。



 広場を出ると、変身を解いたアイラと客席で観戦していたエミィ、ジルがクェス達と一緒に待っていた。

「お待たせ」

 ルクスがみんなに声をかけるとクェスたちがこちらに気がついた。

「お疲れ」

 クェスがルクスを労うなんて珍しい物をみた。

「疲れて無いよ。俺は試合を見てただけだから。ヒビキのほうが疲れてるよね」

 そう言われてクェスがこちらに近づいてきた。
 すかさず、アイラ、エミィ、ジルが俺の周りを固める。
 クェスには一度、不意打ちを食らっている。その為の用心だろう。

「お疲れ様、『全滅』」

「どうも、師匠」

「トーナメント表、見たわ。ティーゲルが相手なのね」

「そうみたいだな」

「ティーゲルは短気だけど魔術の才能はすごいわ」

 クェスが認めるほどの魔術の使い手か。

「まあ、無理はしないようにするから大丈夫だよ」

「そう、色んな風を使うから気をつけなさい」

 師匠のありがたいお言葉を頂きながら、俺とクェスの間に立ちクェスを威嚇しているエミィの頭を撫でて落ち着かせる。
 すると、横を固めていた2人の頭もすっと俺の両手の近くに寄ってきた。
 よしよし、と両手で2人を撫でくり回す。

「本当に、仲が良いわね」

 バーラがくすくす笑っている。

「仲が悪いよりは良いさ」

「そうね」

「それにしても、ヒビキ。最後の動きはさすがだったな」

 ゲイリーが予選の話を振ってくる。

「運が良かったんだよ。ほとんど消耗せずに最後の4人になれたし」

「そうだな、4人の内2人もプレッシャーに耐え切れなかったのか集中を切らしちまってたしな」 

 良い風に解釈してくれたようだ。

「ふん、どうせまぐれですわ」

 ここまで会話に参加していなかったセイラが口を挟む。

「そうそう。まぐれ、まぐれ」

 今回の発言は俺に都合がいいので乗ってやった。

「あ、あなた、またわたくしを馬鹿にして!?」

 だというのに、こいつは俺に突っかかってくる。
 こいつとは何を話してもケンカになりそうだ。

 ぎゃいぎゃいうるさいセイラを無視してどこで飯を食おうかを相談することにした。







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