第58.5話 cat days
俺はダイアンを選んだ。生地の薄い服では隠せないほどの存在感を放つ双峰。
横を向いているのかと思っていたダイアンの瞳が端では決して俺を視線の外に置かないように調整されていることに気がついてしまったのだ。
「あなた、物好きね。まぁ別にいいけど」
そう言って、俺の手を引いていくダイアン。
手を繋ぐだけの積極性に欠ける態度かと思われたが、歩くたびにしゅるん、しゅるんと尻尾が俺にフェザータッチしてくるのだ。
「えっと、ダイアン?」
「・・・なによ?」
「いえ、別に」
「ふん」
個室の中は灯りが抑えられて雰囲気がある。部屋の真ん中に大きなベッドと、簡易なシャワー設備のある小部屋である。
そして窓には厚手のカーテン。なるほど、そりゃ中を見せるわけにはいかないか。
部屋を見渡していると、ダイアンから声がかかった。
「早く服、脱ぎなさいよ、あんた」
あんたって、さすがにそれは無いだろう。
「ヒビキだ」
「そう、じゃあ早く脱ぎなさい、ヒビキ」
いきなり呼び捨てだ。なんとなく憎めないのは、俺の名前を呼ぶ声がやさしかったからだろうか?
いそいそと服を脱いでいるとダイアンも服を脱ぎ始めた。
ぷるん、いや、ばるん、かな? かなりしょうもないことを真面目に考えてしまった。
「早く来なさいよ」
さっさと服を脱いだダイアンはすでにベッドで寝転がっていた。シャワーは浴びないようだ。
「ああ、よろしく」
ここまで緊張無く自然にはじめられたのはダイアンが最初からこんな態度でいてくれたおかげだろうか。
ダイアンの上に覆いかぶさり、その見事な胸に手を伸ばす。
うん、やわらかい。指がどこまでもしずんでいく。
「男って胸が好きよね」
ダイアンがふぅとため息をついてこちらを見る。いや、そんな目で見ないでくれ。何かに目覚めそうだ。
「言い訳をさせてもらうなら、こんなすばらしいものが目の前にあったらとりあえず触るさ」
「こんなの邪魔なだけよ。動きずらいし、男は見てくるし、女は嫌な顔するし」
「じゃあ、俺にくれ!!」
「ふにゃっ」
胸をもみしだく。時にやさしく、時に大胆に、まさに縦横無尽にダイアンの胸を楽しむ。
「きゅ、急にやる気にならないでよ」
そういいながらも決して俺を引き剥がそうとはしないダイアン。
むしろ、本人は気づいていないのか猫獣人の細くて自在に動く尻尾が俺の胴体にぎゅっと絡まってくる。
「ふむ」
尻尾の存在に気づいてしまった俺は、しゅっと、尻尾を先端から扱く。
「あ、はぁ、ふぅ」
数回撫でただけでダイアンはふにゃふにゃになってしまった。ふむ、尻尾は弱点だな。
「ちょっ、ちょっとやめなさいよぅ」
感じすぎるのか本気で嫌なようだ。それでも胴体から尻尾を放すつもりは無いようだ。
仕方が無いので、次のターゲットにロックオンする。
「えっ、そ、そこもダメェ!?ギ、ニャ、ニャ~」
両腕を押さえ込み、鼻と唇で猫耳を攻める。外敵を排除するように、ぴくん、ぴくんと耳が震えるがお構いなしに中を攻め立てる。
「お願い~、もう無理だからぁ」
しばらく、耳、尻尾、耳、尻尾、耳、耳、耳と攻めているとダイアンから泣きが入った。
「じゃあ、ここでやめちゃおうか?」
「やぁ~」
「うん?どうすればいいの?」
「や、めないでぇ」
要望どおりに攻め続ける。
ダイアンは必死で耐えようとしているが、すんすんと俺の匂いを嗅いでは体を擦り付けてくる。
面白いのは決して抱きつかずに自分のわき腹を胸板にこすりつけたりと猫っぽさを感じてしまう。
試しに真正面からぎゅっと抱きつきダイアンとしっかり目を合わせようとすると、ギギギと背中に爪を立てられてしまった。
「痛いよ、ダイアン」
「だって、ヒビキが」
少しむくれていたが無言で背中の方に行き、傷口をぴちゃぴちゃと舐めてくれた。
「ありがとう」
「ふん」
また顔を背けられてしまったので今度は後ろから抱きつく。
両腕にダイアンの胸の感触があって非常にすばらしい。
そのまま、次のラウンドになだれ込む。
「にゃ、にゃーーー」
今晩はやけに店の周りにオス猫がたむろっていたらしい。
朝日が目にしみる。亜人の、特に猫獣人の娘の体力とおねだりには舌を巻く思いだ。
ダイアンは結局、一晩中俺の欲望を受け止め続けた。しかし、これは俺の圧勝と言うわけではない。
後半になればなるほど、俺が自発的にダイアンを抱いたのではなくダイアンからのおねだりによってやる気になってしまっていたのだ。
最後のほうなんて、足腰立たないくせに、
「もう、終わりかにゃん?」
なんて挑発されてしまって、こっちも意識を失う一歩手前まで追い込まれてしまった。
「帰るんだ」
「あ、ああ、もう時間だしね」
「逃げるのね」
やはり無駄に挑戦的だ。
「ま、また来るから」
そうつたえてもダイアンは横を向いたままだ。しかし、
「そう、いつ来るのよ?」
未だに尻尾が俺を放してくれていない。
「じ、時間が取れたらくるから」
「わかった」
ようやく尻尾を放してくれる。
「じゃあ、また、ね」
ダイアンは最後のほうはかなり打ち解けてくれた。真正面から抱き合うスタイルがお気に入りのようだった。
しかし、かなり消耗したな。
ほうほうのていでゴブリンの村まで辿り着く、気分は軽く敗残兵だ。
「よそのメスの匂いがします」
ただいまといいながら扉を開けると、アイラがおかえりより先にそんなことを言い出した。
「おかえりなさい。ご主人様。どういうことでしょう?」
エミィはおかえりだけは言ってくれた。本当におかえりだけだ。
2人に玄関で問い詰められ続けていると、今起きたのかジルが寝間着姿であくびをしながらやってきた。
「なんの騒ぎじゃ?朝っぱらからうるさいのぅ」
アイラとエミィが事情を説明する。しかし、ジルはなんでもないことのように言い放つ。
「何じゃそんなことか、良いではないか主も男じゃよそに女の1人や2人おってものぅ」
ジル、お前って奴はーーー
「過ぎたことを言っても仕方ないじゃろ?よその女の匂いが嫌なら上書きするしかないじゃろぅ?」
ジル、お前って奴はーーーーー!!
「なるほど、そうですね、ではご主人様こちらへ」
「ご主人様、すりすり」
「うむ、わらわも匂いつけしておくかのぅ」
俺は、今日、死ぬかもしれない。
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