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第46話
 






 私、フレイ・コークスは小さな頃から上の兄達にいじめられて育ってきた。
 父が家名だけ残ったような貴族の出で、モンスターとの戦闘で何度か武勲を立てて騎士として新たに賞与を貰って生活していた。
 そんな家で私は4人兄弟の末っ子で長女だった。上の兄達は小さい頃から騎士になるといって、成人するとすぐに街の騎士隊の入隊試験を受けて騎士見習いになっていた。
 母はそんな兄達を笑顔で送り出し、あなたも大きくなったら騎士になるのよ。と繰り返し私に言い続けた。
 子供の頃から私は気が弱く、自分の意思を伝えることが出来ずに周りに流されていた為、そんな母に頷くことしかできなかった。
 4歳離れたひとつ上の兄が騎士隊に入ってから、私の体はぐんぐん大きくなっていった。
 いじめてくる兄達もおらず、体も大きくなった私はそれでも気の弱い私のままだった。
 毎日、日課の素振りを続けてはいるが自分が騎士に向いているとは思っていない。
 そんな優柔不断な状態で素振りを続け、成人をむかえたので入隊試験を受けたが、なんの間違いか受かってしまったのだ。
 それからは、訓練、訓練の日々だった。その甲斐あってか私はどんどん強くなっていった。
 同期のみんなと剣を交えても私はほとんど負けなかった。そのうち、騎士見習い筆頭なんて呼ばれ始めて少し気が大きくなっていたのだろう。

「誰でもいいからかかって来い!!」

 そう言い放った次の日には先輩騎士たちにぼこぼこにされていた。自分のどんな技も先輩達には届かなかった。
 それからと言うもの先輩騎士に会うたびに馬鹿にされ、自分より格下と侮っていた同期にまで笑いものにされ始めた。
 私の心はここで折れた。もともと気が弱いのだ。大きな口を叩くのも自分に自信が無いことへの裏返しだった。
 こうなるともう何もかもがダメになった。
 勝てていた相手に気迫で負けてしまう。
 優位に事を運んでも何か落とし穴があるのではないかと悩んで動けなくなってしまう。
 しまいには、戦闘訓練で泣き出してしまう。など、あげればきりが無いほどの失態を犯してしまう。
 とうとう、『泣き虫フレイ』なんてあだ名までついてしまった。

「やっぱり、私は騎士なんて向いていないんだ」

 戦闘中に泣き出してしまった次の日から私は宿舎の部屋にこもって訓練に参加しなくなった。
 始めは心配してくれていた同室のみんなも3日もすれば私を相手にしなくなった。
 2週間ほど経った頃、教官が部屋まで来て私を怒鳴りつけたが私は部屋から一歩もでなかった。

 それから数ヵ月後、騎士見習い卒業の季節になった。 
 騎士見習い卒業の季節になるともう誰も私の事など気にしていなかった。卒業間近でそんな暇も無いのだろう。
 騎士見習いの半数はこのままこの街の騎士隊に配属される。残りの半数は入隊する前から行き先が決まっている者たちだ。
 私は、前者だったのだがすでに教官からも見捨てられている為、卒業と同時にこの部屋からも追い出されるだろう。
 今日までこの宿舎にいられたのもおそらく父が頼み込んでの事だろう。卒業さえしてしまえば騎士の称号は手に入るのだから、せめてそれまでは、と教官たちに頼み込んだのだろう。
 そして卒業の日。私はこの日の為に集まった父としばらくみていなかった兄達によって最低限の荷物を渡され馬車に乗せられた。
 もうどうにでもしてくれと、行き先も聞かずに馬車に揺られて3日経った頃馬車が目的地に着いた。
 大きなお屋敷の前で止まった馬車は私と荷物をさっさと降ろすとすぐにどこかにいってしまった。
 どうしたものかと悩んでいると、屋敷から侍女たちが現れ私の手を引く。

「こちらです、フレイ様」

 屋敷に案内された私はすぐに風呂に入れられた。3日間湯浴みもしていないので確かに臭う。
 風呂から上がると、上等な肌着と鎧を着せられた。これから何かと戦わされるのだろうか?
 着替えが終わった私はまた侍女に手を引かれてとある部屋の前まで連れて行かれた。
 侍女がコンコンとノックをすると中から男性の声で入室をうながされた。

「ようこそ、カプリス家へ。君がフレイかね?」

 部屋にいたのは、50代位のおじ様だ。父と同世代だろうか。にこやかな笑顔で私を歓迎してくれている。

「あ、あの」

「君の父から君をよろしく頼むといわれてね。ちょうどうちの末娘の護衛、というか話し相手が欲しくてね」

 話し相手。それならこんな私にも出来るかもしれない。しかし、話し相手にこんな鎧は必要ない。

「その鎧も娘が騎士にあこがれていてね。さすがに男性の騎士を近くに置くのはまずいから、女性の騎士をと思っていたんだよ」

 そうか、お飾りの騎士。私にはお似合いだろう。

「娘は少々変わっていてね、それでもかまわないかな?」

「わ、分かりました。ご息女の護衛を拝命させていただきます」

 見習い時代に染み付いていた癖で騎士の礼をする。カプリス卿はうん、と頷いて私が守るべきご息女の下へと連れて行ってくれた。
 ご息女は、屋敷の庭園で紅茶を飲んでいた。カプリス卿が声をかけるとこちらに気づき私ににっこりと微笑んでくれる。
 まるで女神だ。私は素直にそう思った。儚げな雰囲気もその思いに拍車をかけてくる。

「こんにちは、あなたが私の騎士様?」

「は、はい。フレイ・コークスと申します。フローラお嬢様の護衛をさせていただきます」

 緊張しながらあいさつをする。

「よろしくお願いね。フレイ」

「はい」

 フローラお嬢様付きの騎士に任じられてからの生活はまるでおとぎ話の中の出来事だった。
 朝、朝食を済ませてフローラお嬢様のお部屋まで迎えに行くと、フローラお嬢様は天蓋付きのベッドに花びらに囲まれて眠っていた。
 声をかけるのがためらわれるくらい幻想的な光景だった。
 意を決してフローラお嬢様に声をかけるとすぐに目を覚ましてくれた。

「おはよう、フレイ」

「おはようございます。フローラお嬢様」

 すぐにお世話係の侍従が部屋に現れ着替えの手伝いを始める。露にされるフローラお嬢様の肌はシミひとつ無く、まるで絹のようだ。
 着替えを終えたフローラお嬢様をダイニングルームへと連れて行く。
 フローラお嬢様が食事を終えるまで私はすぐ近くで待機していた。つねにフローラお嬢様を見守っているが少しも飽きが来ない。
 いつも、彼女の食事が終わると残念な気持ちになるほどだ。

 食事を終えると、フローラお嬢様は大抵、庭園で一日中紅茶を飲んですごしている。時折、屋敷に訪れている客人があいさつに来るくらいだ。

「ねぇ、フレイ。あなたってとっても強いのでしょう?私、あなたが戦っているところを見てみたいわ」

 フローラお嬢様の願いをかなえるべく、すぐさま屋敷に数人の剣士が呼ばれた。カプリス卿はフローラお嬢様にとてもお優しい。
 私は、剣士を前に平静を保ったように見せていたが内心この場から逃げ出したくなっていた。
 剣を持つ手が震えている。まだ、周りにはばれていないが時間の問題だ。
 のどが渇く。むりやり唾を飲み込むがのどの奥に張り付いていやな感じなる。

「はじめ!!」

 とうとう始まってしまった。カプリス卿は私をお飾りの騎士だと言っていたのになぜこんな仕打ちをするのだろう。
 剣士がゆっくりと剣を振るう。おそらく手加減してくれているのだろう。すぐに終わっては見世物として成り立たないだろうから。
 剣を難なく避けて私もそっと剣を振るう。剣士が私の剣に気づいたのか避けようとするが動きが遅い。
 避ける動きまでゆっくりやる必要は無いのに。そう思いながらも、少しはいいところを見せようと剣を剣士へと軌道修正する。
 すると剣士は体勢を崩して倒れこんでしまう。いいのかなぁと思いながらそのまま剣を相手ののど元付近にぴたりと寄せる。

「ま、まいった!!」

 そのまま勝利してしまった。周りがおお、と声を上げて賞賛してくれる。
 あれ?これってわざと負けてくれたのだろうか?
 確かに私はお飾りとはいえフローラお嬢様の騎士だ。もしかしたらこの試合も最初から私が勝つことが決まっていたのかもしれない。
 カプリス卿のほうを見ると、彼は驚いた顔をして私を見ていた。さすがに上級貴族様は演技もうまいようだ。

 次の剣士もたいした動きを見せなかったので、剣を弾き飛ばして終わらせた。
 観衆は割れんばかりの拍手をくれる。本当に私の実力だろうか?

「すごいわ、フレイ。あと1人よ。頑張って~」

 フローラお嬢様から応援をしてもらった。もう私の実力などどうでもいい。すぐに次の相手を要求した。
 3人目の相手は前の2人よりちょっとだけ強かった。
 私の攻撃も剣ではじかれていたし、油断すると相手の剣が私の急所を狙ってくる。
 しかし、前の2戦で私も戦闘の勘を取り戻してきた。難なく攻撃をかわす。
 剣のぶつかり合いが10に届く頃だろうか、疲れからか相手の足元がふらついてきた。
 私はまだ体力に余裕があったのですぐさまその隙を突いて相手の剣を弾き飛ばす。
 またもや周りから賞賛と拍手が降りかかってきた。

「いや、すごいな。フレイ、君の父君に勝るとも劣らないすばらしい剣捌きだったよ」

 カプリス卿は興奮して私の手を握ってきた。がっしりと掴んだ手が少しだけ痛かったがそれ以上に嬉しかった。

「フレイ。本当にすごいものを見せてもらったわ。さすが私の騎士様ね」

 フローラお嬢様も私を褒めてくれている。

「は、はい。ありがとうございます!!」

 この日、私はようやく本当の騎士になれたのだ。『泣き虫フレイ』は今日は嬉しくて泣いた。



 私が心から騎士になれた日から数日が経っていた。
 あの日以来、フローラお嬢様は以前にも増して私をそばに置いてくれた。

「フレイ。お庭に珍しいお花が咲いているの。一緒に見に行きましょう」

「フレイ。私と一緒にお風呂に入りましょう」

「フレイ。朝食を一緒にとりましょう」

「フレイ、」

「フレイ、」

「フレイ、」

 私は今まで以上にフローラお嬢様にお使えしようと心を決めた。
 フローラお嬢様の望む騎士になろうと努力した。
 フローラお嬢様の騎士は、誰よりも強く。敵を前にしても逃げ出さない。
 フローラお嬢様の騎士は、正々堂々と戦い。そして勝利する。
 フローラお嬢様の騎士は、どんなことがあっても主君を守りぬく。

 そうして、フローラお嬢様の望む騎士を目指して様々な試練を突破した。
 モンスターの群れに1人で立ち向かい重傷を負いながらも勝利した。
 多くの騎士に決闘を申し込み、そして勝利を重ねた。
 スラム街に済む浮浪児たちに食事を与えたこともある。

 何度か危ない目にもあったがフローラお嬢様のお願いだ。私は喜んでそれをこなしていった。



 フローラお嬢様の騎士を続けて2年ほど経ったころ、カプリス卿にしばらくこの街を離れるように指示された。
 どうやらこの街にモンスターの大群がせまってきているようだ。

「分かりました。フローラお嬢様は必ず私が守ります」

 そう伝えたのだが、馬車の御者と護衛として4人の冒険者が準備された。
 カプリス卿は心配性である。少々面白くないが、卿の顔を立てようと護衛を受け入れた。


 街を出て数日は順調だった。護衛の男達は森で必要な技能をしっかりと持っている。
 フローラお嬢様は馬車の中でおとなしくしてくださっているため特に危険なこともなく道程の7割を消化できた。
 しかし、ウェフベルクまでもう少しと言うところで男達が騒ぎだした。

「騎士さま。この辺にモンスターがうじゃうじゃいる。このままじゃいつか捌ききれなくなる」

「これは、道を変えたほうがいいと思うぜ」

 口々にそういう男達。

「そうか、それでどれだけ日程が伸びる?」

「そうだな、迂回路を通って1日ほど伸びそうだ」

「水や食料は足りるのか?」

「ああ、大丈夫だ。どっちも多めに準備してる」

 こうして、我々は迂回路でウェフベルクを目指した。
 道中は数度モンスターに襲われたが、何とか馬車に触れさせずに撃退した。 

「迂回路でこれじゃあ、元に道にはどれだけモンスターがいるんだろうなぁ」

 男の1人がぼそりとそんなことを言い出した。

「こりゃぁ、ウェフベルクもやばいんじゃないか?」

 男達が逃げる算段を考え始めたようだ。私は男達に声をかけた。

「貴様ら、何を言っている」

「だってよ、騎士様。ここはもうウェフベルクまでは目と鼻の先だぜ?俺達だけで走っていけば今日の夜にはつく」

「私達をおいていくつもりか!?」

「ちがう。そんなところでこんなにモンスターが出るのがおかしいって言ってるんだ」

「もしかしたら近くにモンスターの大群がいるのかも」

 私はその意見を鼻で笑う。

「モンスターの大群なら今、ブレトに向かっているはずだ。そんなにいくつも大群がいるわけが無いだろう」

「そ、そうだよな」

 この会話の数時間後に私達はモンスターの大群に出会ってしまうのだが、そんなことは誰にも分からなかった。





「はっ、はっ、はっ、フローラお嬢様、大丈夫ですか?」

「はっ、ええ、はっ、大丈夫、はっ、よ」

 フローラお嬢様は息切れ交じりの答えをかえす。そろそろ限界だ。
 モンスターの大群に襲われ、馬車を捨てて逃げてきた。護衛の冒険者達は、2人やられるのを見た。あとの2人は私達を置いて逃げ出してしまったが周りを囲まれつつあったので正直助からないだろう。
 御者は、一番最初にモンスターに襲われて死んだ。
 私達は冒険者達がモンスターに襲われている間に馬車から降りて、がむしゃらに走って逃げていた。

「とりあえず、周りにモンスターはいないようです」

「そう、急に走ったから疲れてしまったわ。どこか休めるところは無いかしら?」

 フローラお嬢様にはいまいち緊張感が無いようだ。そもそも、現在もまだ命の危険がある状況だと理解しているのだろうか?

「申し訳ありません。荷物も全て馬車の中においてきてしまいました」

「まぁ、大変。なんとか取りにいけないかしら?お気に入りのティーセットが入っていたの」

 この期に及んでティーセット。いや、きっと極限状態の私を和ますための冗談だ。

「申し訳ありません。回収はおそらく無理です」

「そう、残念だわ」

 やはり冗談だったようだ。すぐに興味をなくしてしまわれた。

「今日のところは、どこか休めるような場所で休みましょう」

「そうね、近くにお家があればいいのだけれど」

「そうですね」

 これも、冗談だ。
 すこし、歩いているとなにやら前のほうが騒がしい。聞き耳を立てていると、人ではないようだ。

「ギギッー」

「ギ、ギ、ギー」

 そこにいたのは50匹ほどのゴブリンだった。
 私はとっさにあげそうになった悲鳴を口に手を当てて我慢した。
 同じ光景をみたフローラお嬢様が悲鳴を上げないかと心配してみてみると、キラキラと目を輝かせていた。

「すごいわ、本物のゴブリンね」 

「お嬢様、少し声を小さくしてください」

「ええ、そうね。ごめんなさい」

 どうやらゴブリンたちはどこかに行くようだ。他のゴブリンより一回り大きいゴブリンが指示をしてどこかに向かっていった。
 とたんに静かになるゴブリンたちの村。
 私は警戒を続けているが、フローラお嬢様がスタスタと村の中に入って行った。

「お。お嬢様。危険です。まだゴブリンがいるかもしれません」

「ねぇ、このお家だけ人が住めるようになっているわ。今日はここに泊まりましょう?」

 フローラお嬢様が指をさしているのは確かにゴブリンたちには大きすぎる家だ。誰か人間か、人間に近い姿の種族が住んでいるのだろう。

「いけません。中に何がいるか分からないんですよ」

「大丈夫よ。なにかいたらフレイが倒してくれればいいんだから」

 そういって、家の中に入っていくフローラお嬢様。驚くことに鍵がかかっていなかった。

「誰もいないわ。ねぇフレイ私おなかがすいてしまったわ」

 そういいながら家の探索を始めるフローラお嬢様。

「見て、食べ物があるわ。フレイ、料理してもらえるかしら?」

「だめです。誰のものかもわからないのに勝手に、」

「でも、私、おなかがすいてしまったのよ?」

 結局、お嬢様の訴えに負けて食料に手を出してしまった。申し訳ないがありがたくいただくとしよう。
 その日はそのまま、家にあったベッドで眠りについてしまった。
 ここ最近、ほとんど野宿だったので疲れがたまっていたのだろうと思う。
 目が覚めるともう朝だった。私は一瞬自分がどこにいるのか分からなかった。
 ふと窓を見ると、誰かが家の中を覗き込んでいる。
 誰だろう。私も窓の外を見ようとベッドから立ち上がり、窓の外のゴブリンと目があった。

「うっわぁぁぁ!!」

 私の声にびっくりしたのだろう。窓の外のゴブリンは逃げ出してしまった。

「はっ、フローラお嬢様!!」

 現状をやっと思い出して、フローラお嬢様を探すが家の中にいない。
 まさか、外に出たのか?
 急いで鎧をつけ剣を手にとって家の外に出る。
 あたりを見渡すと、いた。
 数匹のゴブリンに囲まれそうな状態のお嬢様を見つけ私は駆け出した。

「お嬢様ーーー」

 私の声にびっくりしたのだろう。ゴブリンたちは散り散りに逃げ出した。

「どうしたの、フレイ?」

「ご無事ですか?」

「ええ、ゴブリンさんたちと遊んでいたのよ」

「危険です。家に戻りましょう」

 私は、お嬢様の手を取って家に引き返す。
 それから冷静に観察していくつか分かったことがある。
 どうやらゴブリンはこの家に入れないようだ。
 これは、覚悟を決めてドアを開けっ放しにして様子を見て分かった結果だ。中を覗き込みはするが、決して入っては来ない。
 次に、私達に危害を加えるつもりは無いようだ。
 これも、確認の為に私1人で外に出てゴブリンたちに近づいて分かったことだ。
 とりあえずの安全は確保されているようだ。
 しかし、私は確認後は一度も外に出なかった。やはり家の中が最も安全だろうという判断だ。
 今日も食料に手をつけることに罪悪感を覚えながらも食事にする。食事のあとは体力回復の為にすぐに寝ることにする。
 明日は、何とかウェフベルクへ出発したい。おそらくすぐ近くまでは来ているはずだ。方向さえあっていれば1日歩かず到着するだろう。

「汗を流したいわ」

 次の日、朝一番にフローラ様がおっしゃった。
 幸い、この家には湯浴みが出来るスペースが家の中にあったので、湯を沸かしてフローラ様に湯浴みをしてもらう。
 ついでに私も残り湯でさっと体を洗わせて貰う。フローラ様が風邪を引かないようできるだけすばやく済ませる。
 お召し物の着替えは無いためまた元の服を着ることになるが我慢していただいた。

「お気に入りのドレスも置いてきてしまったわね」

 そう言われて申し訳ない気持ちになる。なぜあの時、バッグのひとつも掴んで逃げられなかったのだろうと自己嫌悪におちいってしまう。
 フローラお嬢様に謝ろうとした瞬間、開くはずの無いドアが開いた。



「おい。あんまり、中の荷物に触るなよ」

 私は、フローラお嬢様の騎士として強くなければならない。動揺しながらもそう決意して、現れた男に問いかける。


「き、貴様ぁ、何者だ!?」







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