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第24話






 現れた美少女はおそらく13~15歳位だろうか、整った顔に笑顔を浮かべてこちらに近づいてくる。
 彼女の登場で俺達はすでに緊張を解いていた。十数人の男性を率いて現れた彼女が教会でかなりの地位であることは間違いない。
 そんな人物が、盗賊のような真似はしないだろうという判断だ。
 それに彼女は俺達が戦闘態勢にあった事に気づいていた。そうでなければあんなタイミングでこちらに制止をかけられないだろう。
 それに彼女は気になる単語を発していた。 そう『勇者』と。
 彼女が何の警戒もなく俺達に近づいてくる。
 まさか、俺が『勇者』? 確かに俺はこの世界にとって異邦人であるし、複数の加護を持っている。漫画やアニメに出てくる『勇者』そのもののような存在だ。
 確か、この世界には『魔王』もいるらしい。ルクスがそんな事を言っていた。そして、『勇者』は『神官』が選び、神によって加護を与えられる。
ステータスを確認してみる。

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 セイラ ディアノ Lv.20 神官 14歳

 『癒神の選定』  効果 勇者の選定を行う  対象 個人

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 美少女は着ている服の通り、『神官』のようだ。
 しかし、バーラには無かった加護がある。バーラには加護が無く、スキル【回復魔法】があっただけだ。
 ギルドであった僧侶達にもスキル【回復魔法】だけだった。 
 セイラが俺達の目前まで近づいてきた。後ろから赤い騎士甲冑を着た騎士がセイラに駆け寄り声をかける。

「セイラ様、御一人で先にいかれては困ります」

「ごめんなさい、アルフレッド。でもようやく勇者様に会えたんですもの」

 騎士の中でもっともレベルの高い男が美少女神官に声をかけた。どうやらリーダのようだ。アルフレッドというらしい。

「お気持ちは分かりますが、ここはまだ森の中、モンスターたちのフィールドです。ご自愛ください」

「ええ、そうね。そのためにも早く確かめなくてはなりません」

 そういって、俺達に向かって優雅に一礼するとセイラははっきりと告げた。

「はじめまして。わたくし、ソーラ教会の選定神官に選ばれましたセイラ・ディアノと申します このたび、魔王復活及び勇者選定の神託を受け、我が勇者としてあなたをお迎えにあがりました」

 そう言って、右手を差し出してくる。

「お受けいただけますか? 我が勇者 ハイルクス・ブレイブハート」

「・・・なんで俺の名前を?」 

 選ばれた『勇者』は、戸惑っているようだ。ちなみに俺は、自分が『勇者』じゃないかと考えていた自分が恥ずかしくなり少し顔が赤かっただろう。

「あなたが、先々代の勇者の孫であることは調べさせていただきました」

「俺はもう家とは関係ない!! それに、俺にはもう『神官』がついている!!」

「その方は選定神官ではありませんね。確かにソーラ教会の神官ではあるようですが、冒険者として活動することは許されておりません」

 セイラの後ろに控えていたアルフレッドが口を挟んだ。ルクスはアルフレッドをものすごい顔で睨んでいる。おそらく教会とバーラの間に何かあるのだろう。
 ルクスはアルフレッドを睨んだまま動かない。アルフレッドも言うことは言ったとばかりに目もあわせない。
 重い沈黙を打ち払ったのは、セイラであった。

「複雑な事情があるのは承知しております。ですがそれでも私の話しをお聞きください」

 それを聞いてルクスは睨むのをやめた。しかし、全身で不機嫌であると表現している。

「とりあえず、みんなを起こすか?」

 ルクスに耳打ちで確認を取る。事情を知らない俺はこのメンバーで会話を続けることに危険を感じ、当事者であろうバーラ達を連れて来るかを確認した。

「すまない、ヒビキ。お願いできるか?」

 表情を少しだけ緩めて俺にうなずく。俺はみんなが眠っているテントのほうへ近づいていった。
 テントは焚き火から少しだけ離れたところにある。戦闘があればおそらくすぐに分かるが焚き火をしている開けた空間からはすぐには見えないような茂みの中にある。
 休憩組で唯一の男性であるゲイリーがテントのすぐそばで木に背を預けて眠っていたが、俺が近づくとパチッと目を開いてこちらを見てくる。

「なにかあったか? 交代には早いよな?」

「ああ、お客さんが来たんだ」

 客と聞いてゲイリーが一瞬顔を引き締めるがすぐに普段の顔に戻った。俺がこうしてのんきに起こしに来たことで緊急性は低いと判断したのだろう。

「教会の選定神官と護衛の騎士達だ。ルクスを『勇者』に選びに来たらしい」

 それを聞いてゲイリーの顔がまた歪む。

「神官はルクスをブレイブハートとよんでいた。あと、バーラについても何かあるようだった」

 そこまで話してゲイリーから離れ、テントの中のアイラとエミィに声を掛ける。彼らの事情に首を突っ込むつもりは無い。
 ゲイリーの顔を見れば彼もまた事情を知っているのが分かる。他のメンバーに聞かれずに状況を伝えられたのは幸運だ。

「アイラ、エミィ。すまんが起きてくれ。あとクェス師匠とバーラを起こしてくれるか」

 アイラとエミィがクェス達と同じテントで休んでいることを思い出しついでに起こす。
 野宿の時のアイラの睡眠が浅いのはクレストの護衛任務の時に知っている。

「おはようございます、ご主人様。今2人を起こしてきます」

「・・・おはようございます 何かありましたか?」

 すぐさま反応を返したアイラとおそらく連日の強行軍でかなり疲れているであろうエミィが眠そうに返事をした。

「客が来た。俺達ではなくルクスにだが、どうなるか分からん 師匠たちにはゲイリーに話を聞くように言っておいてくれ」

「わかりました 出発できるように準備したほうがよろしいでしょうか?」

「そうだな、もしかしたら出発もありうるかもしれない 悪いが一応準備しておいてくれるか?」

「はい、荷物をまとめておきます」

「ああ、モンスターたちに周囲の警戒をさせておいてくれ。あとエミィは俺と一緒に来い」

「はい」

 エミィを一緒につれて行くのは俺の知らないこの世界の事について知識を補完するためだ。
 この世界特有の決まり事に疎い俺が教会のお偉い神官に不遜なことをしてしまい目をつけられたく無い。
 アイラをテントに残してエミィとゲイリー達でルクスのところに戻った。

「ルクス、大丈夫か?」

 ゲイリーがすぐさまルクスの近くに行きリーダーの無事を確認する。少し遅れて女性2人もルクスの近くに駆け寄った。
 ルクスはパーティメンバーの顔を確認すると、顔をほころばせて大丈夫と答えた。

「それで、うちのリーダーを引き抜こうって野郎はどいつだ?」

 ゲイリーが元から怖い顔をさらに怖くして来訪者達を睨みつけていく。

「私です」

 男ですら尻込みするであろうゲイリーの様子にまったく気圧されることなくセイラが前に出た。

「私、ソーラ教会の選定神官に選ばれました、セイラ・ディアノと申します。以後お見知りおきを」

 先ほど俺達にしたのと同じように優雅に一礼をして挨拶するセイラ。選定神官と聞いてバーラがビクッと反応した。

「私としては、今すぐにでもハイルクス様を『勇者』と宣言したいところですが、ハイルクス様が首を縦に振ってくれません」

「当たり前だ。俺は、『勇者』にはならないし、もし仮になったとしても君の『勇者』になるつもりは無い」

「ええ、ですからゆっくり皆さんとお話させていただきたいのですわ これからすぐにでもウェフベルクに向かって出発しませんか?」

 全員があきれている。ルクスははっきりと拒否しているにもかかわらず、話を聞かずあまつさえ疲れて休んでいる者たちに動けだと?

「無茶を言うな。みんな疲れてる あんたのわがままでそんなことできるわけ無いだろ」

 ついぽろっと小声で本音がこぼれてしまった。
 おそらく聞こえていたのだろう、セイラがこちらを睨んでいる。しかし、ルクスを含む回りのみんなが俺に同意しているのが空気で分かったのだろう、急に態度を変えた。

「わかりました。出発は明日の早朝にいたしましょう」

「そうしてくれ」

 話は終わりだというようにルクスが踵を返して仲間達とテントのほうに向かっていった。おそらく、パーティメンバーと今後の打ち合わせを行うつもりだろう。
 俺達もテントに戻ろうとして、火の番がいないことに気付き、ついでとばかりセイラに話しかけた。

「神官さん、あんたの護衛の騎士達に火の番を頼みたいんだが」

 それを聞いてセイラが声を荒げた。

「どうして私の護衛にそんなことをさせなければならないの!!」

「あんたのせいで火の番のルクスがテントに引っ込んじまったんだよ 少しでもルクスのご機嫌を取りたいならそれくらいしろよ」

 セイラが悔しそうにこちらを睨んできた。

「睨むなよ、こっちはルクスのご機嫌取りの方を教えてやったんだ。別に嫌ならいい。俺達でやるから」

「なっ!?」

「まぁ、義理堅いルクスの事だ、火の番を押し付けたことを俺達に謝って感謝してくるだろうな。そんな役割をあんたに譲ろうって言ってやったんだがまあいいさ」 

 そういって、エミィと焚き火のほうに向かう。

「お待ちなさい!!」

「なんだよ?」

「私達が代わってあげてもよろしくてよ」

「別にもういい」

 無駄に偉そうにセイラが宣言してきたので反射的に拒否してしまった。

「えっ!?」

「こっちはお前にやって欲しいんじゃなくて、やらせてやっている立場だろ?」

 セイラは顔を真っ赤にしている。

「ぐぐぐっ」 

「用が無いならさっさと寝ろよ。明日は早いんだろ」

「わ、」

「わ?」

「私に火の番を譲っていただけませんか!!」

 聞きたい言葉を引き出せたことに満足した俺はあっさりと答えた。

「そこまで頼むのなら仕方が無い。かわってやるよ」

 そのままテントのほうに向かう。背を向けてしまったので分からないがセイラはおそらく悔しそうな顔をしていたことだろう。
 テントが見えてきた頃にエミィがポツリとつぶやいた。

「ご主人様、すっごくイキイキしてました」

 テントに戻り、出発の準備をしていたアイラに出発が明日の早朝になったのを伝え、テントをルクスたちに譲り3人で肩を寄せ合って毛布にくるまり仮眠を取った。






感想にルビー勇者説とか頂きました。
ルビーが何気に人気があるのに嬉しいやら面白いやら、
次回から冒険者の街編が始まる予定です。
読んでいただければ幸いです


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