第6話
ブレトの街から徒歩で15分ほどのところにある森の中。
今回、俺たちが討伐依頼を受けたシャープウルフはここに生息している。
とはいえ、この森には積極的に人を襲うモンスターが割りといる。
今も、別のモンスターを相手にしているところだった。
「はあぁ!!」
アイラが剣を横薙ぎに放ち『スライム』を一刀両断にして戦闘は一応の決着を見る。
「おつかれ。」
俺が声をかけると、アイラはスライムのドロップアイテムである『スライムの肝』を渡しながら答えた。
「はい、ありがとうございます。」
「戦闘は大丈夫みたいだな」
ここまで数回、モンスターとの戦闘があったがアイラはどれも一撃で倒している。
「はい、ここのモンスターは私の村にいたものより弱いみたいです。これならお役に立てますね。」
うれしそうに返事をするアイラ。
いや、多分アイラが強くなっただけだ。
「そうか、しかしまだシャープウルフは出てきてないし油断はするなよ」
「はい、シャープウルフはとても速くて攻撃力が高いと聞いています。
スライムやワームはモンスターの中では最弱だと聞いていますから」
アイラが油断なく周りの気配を探る。
アイラには周りに生き物がいるか気配で分かるらしい。
弱体化したステータスで生き抜くための技術なのかもしれないな。
「でも、体がとても軽いんです。村にいたときはスライムを倒したときには息が上がっていたんですが」
「まあ、『呪い』が解けているしな」
「そうなのでしょうか?」
そうか、アイラは自分の『呪い』の正体が分かっていなかったんだっけ
「アイラの『呪い』はステータスにマイナス補正をかけるものだったからね」
今はその『呪い』は解けて、さらに『加護』によるパラメータ強化がかかっている。
おそらく、ステータスの急上昇で体感的に体が軽く感じているんだろう。
「本当に、『呪い』が解けたのですね」
「まだ、信じてなかったのか?」
「いえ、ご主人様が嘘を言うはずがありません。ただ、生まれてからずっと私には『呪い』がかかっていたので・・・ 」
それはそうか、十数年『呪い』と共に過ごしてきたのだ。
それを、昨日あったばかりの男が解けたと言う。
こんなに胡散臭い話はなかろう。
アイラの信頼はこれから徐々に上げていこう。
「ですが今確信しました。ご主人様はやはりすばらしいお方なんですね。」
あれ、アイラが尊敬した目でこちらを見ている。
今、徐々に信頼を勝ち取ろうと決意したところだったのだが。
「とりあえず、もう少し奥に行こう。 アイラ、生き物の反応があったら教えてくれ」
「かしこまりました。」
「あちらに何かあります」
少し進むとアイラがそういった
「なにか? モンスターか?」
「分かりません。でも、生き物の気配もあります」
良く分からないが何かあるほうへと慎重に進んで行った。
そこには、確かに良く分からない何かがあった。
「なんだ、あれ?」
湧き水のように液体がゆっくりと湧き出しているが水ではないようだ。
粘性のあるその液体がくぼみにたまっていく。
そして、ある程度たまった粘液は意思を得たかのようにずるずるとくぼみから出て行く。
あれは『スライム』か?
「『スライムの泉』ですね。 初めて見ました。」
「スライムの泉?」
オウム返しに俺がアイラに尋ねる
「はい、魔力の濃い森には必ずどこかに『スライムの泉』があるとされています。」
『スライムの泉』は、その名の通りスライムを生み出し続ける。
そして、ほかのモンスターがスライムを食べて魔力を得る。
魔力が一定以上になればモンスターは増殖するようだ。
つまり『スライムの泉』は、スライム限定の湧きポイントということか
そしてスライムを餌とするモンスターも近くにいると。
「『スライムの泉』はモンスターの集まるところってことか」
「はい、ですから腕に自信のある冒険者は、『スライムの泉』の近くに何日も泊まりこみ狩りを行うこともあるようです」
「俺たち以外の人間はいるのか?」
「今、近くに人はいないようです。まだ、見つけられていない泉だったか、もしくは最近できた泉なのだと思います。」
「なるほど、ではここで待っていればシャープウルフも現れるかな」
「はい、シャープウルフもスライムを食べるモンスターですから」
そんな話しをしていると、話題のシャープウルフが現れた。
シャープウルフは、その鋭い動きがその名の由来らしい。
ただの普通の狼に比べと2回りほど大きいその体格からくりだされる一撃は地球での熊の一撃のそれに近い。
その上、狼と同じように群れで行動する事が多い。
ゆえに、シャープウルフは『ルーキー殺し』とよばれることもあるのだ。
ヴルルゥ
とうなり声をあげながら二人に襲い掛かったシャープウルフは17体。
本来、冒険者を始めて1週間足らずのルーキーではまったく歯が立たず殺されるだろう。
そもそも、駆け出しの冒険者が群れのシャープウルフを相手取ることはめったにない。
パーティを組み、パーティよりも数の少ない小さな群れを探して狩るのが常識だ。
しかし、ここにいる二人は非常識だった。
「っせい!」
と声をあげ、飛び掛ってきた一番近くのシャープウルフを一撃でしとめたヒビキ。
シャープウルフに速度で勝るアイラ。
どちらも、非常識なまでの強さであった。
数の暴力を上回る圧倒的な個人の実力によって、シャープウルフは見る見るうちに数を減らしていく。
戦闘を開始して十数分が経過する頃にはその数はゼロになっていた。
「よし、全部倒したな」
一番奥にいたこの群れボスを倒して一息ついた。
「はい、シャープウルフも何とかなりました。少し速かったですが大丈夫です。」
シャープウルフのドロップアイテム『シャープファング』を回収しながらアイラが答えた。
今の戦いで、ヒビキは確信した。
アイラは、相当強いのだ。
「シャープウルフをまったく問題にしてなかったな」
「いえ、そんなに強くなかったですから」
いやいや、十分強いから!! と自分の事は棚に上げてアイラを評価する。
「討伐依頼は10体分だったから一応達成だけどどうする?」
「もう少し、戦ってみたいです。」
「わかった。日没まで狩りを続けよう」
この日、この森のシャープウルフを狩り尽くしてしまうのではないかと思うほどにモンスターを倒し続けた。
ギルドで換金したあと、宿でステータスを確認してみるとレベルが上がっていた。
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ヒビキ ジンノ Lv.6
剣士 16歳
体力
450(+150)
筋力
90(+30)
すばやさ
90(+30)
知能
203(+68)
運
375(+125)
『戦神の加護』
効果 戦闘職のステータスが上昇(大) 重複不可
対象 パーティ
『知神の加護』
効果 魔法職のステータスが上昇(大) 重複不可
対象 パーティ
『匠神の加護』
効果 生産職のステータスが上昇(大) 重複不可
対象 パーティ
『癒神の加護』
効果 神聖職のステータスが上昇(大) 重複不可
対象 パーティ
『鑑定神の加護』
効果 あらゆるもののステータスを確認できる。
対象 本人
『商神の加護』
効果 商いに関して有利になる
対象 本人
『光の加護』
効果 あらゆる状態異常を治す
対象 指定
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アイラ Lv.5
戦士 15歳
体力
840(+280)
筋力
252(+84)
すばやさ
483(+161)
知能
132(+44)
運
132(+44)
『戦神の加護(従者)』
効果 戦闘職のステータスが上昇(大)
対象 本人
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