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第4話


いつもの宿に戻り、二人部屋に変更してもらう。荷物などほとんどない為部屋の移動はスムーズに行われた。
さて、ほとんど衝動買いでアイラを購入してしまったため、今この部屋にはアイラのためのものが何一つない。
とりあえず、アイラのことをまるで知らない自分に気づきアイラとの会話を始めた。

「俺は、ヒビキ。冒険者をやってる。これからよろしく」

「は、はい。よろしくお願いします。」

彼女は律儀に腰を折って頭を下げた。

「あ、あの 私は『呪い』持ちなのですが、ご主人様は、冒険者様なのですよね?」

アイラは不安そうにこちらを見る。
それはそうか、時として命のやり取りもある冒険者が、
どんな不幸を撒き散らすか分からない『呪い』を持った奴隷をパーティに入れる事は普通ありえない。
つまり自分は一人で森やダンジョンの探索をさせられるのではないかと考えているようだ。

「ああ、そうだ。アイラには探索を手伝ってもらうことになる。
 もちろん、探索は安全とは言えないが一人で無理をさせるつもりはないから安心して。」

「は、はい。ありがとうございます!」

また、大げさなお辞儀だ。勢い良く頭を下げると腰にある尻尾が目に入る。

「さてと、じゃあ試してみるかな。」

彼女を見たときに思いついたことを試してみることにした。

「アイラこっちに来て。」

手招きでアイラをよぶと、恐る恐る近づいてくる。 う~ん、警戒されてるなぁ

「大丈夫。何もしないよ。少し試したいことがあるんだ」

「は、はい。」

彼女の肩に手を置いて、『光の加護』を意識する。

すると、一瞬部屋が光に包まれてすぐに元に戻った。

確かな手ごたえを感じ、アイラのステータスをチェックする。

******************************************
アイラ Lv.4
戦士 15歳

体力    
750(+250)
筋力
240(+80)
すばやさ
465(+155)
知能
120(+40)

120(+40)

『戦神の加護(従者)』  
効果 戦闘職のステータスが上昇(大)     
対象 本人

******************************************

おお、『呪い』が消えて、さらに『戦神の加護(従者)』がついた為にステータスがあがってる。
ていうかめちゃめちゃ強くないかこの娘。

「えっと、今のはなんだったのでしょうか?」

不思議そうにアイラがたずねてくる。

「今、アイラの『呪い』を消したんだよ」

できるだけなんでもないことのようにさらっと答えた。

「えっ!? そんなことができるのですか?」

先天的な『呪い』は解呪できないとされていたが、
やはり『光の加護』なら『呪い』を状態異常と判断して取り除くことができるらしい。

「俺は、『加護』持ちだからな」
この世界で『加護』持ちは、それなりに貴重だ。しかも『加護』の詳しい内容は本人にしか分からない。
つまり、なにかおかしなことをしても『加護』の力だといってしまえばみな納得する。

たとえば、ギルド登録したその日に、数十体のモンスターを討伐して驚かれても、
薬草採取の依頼を受けて、『鑑定神の加護』で大量の薬草を短時間で採集してきて驚かれても、
最後にこういえばみんな納得した。
「俺、『加護』持ちだから。」

「す、すごいです。『加護』をお持ちの方に初めてお会いしました!』

「あまり『加護』について知られたくないから、解呪の事は秘密にしておいてくれ」

「わかりました! あの、それで私の『呪い』は本当に消えたのでしょうか?」

「ああ、信じられないなら明日冒険者ギルドに行ってギルドカードを発行するからその時に分かるだろう。」

『加護』持ちと同じく『呪い』持ちもカードに表記されるのだ。
悪い意味で『加護』と同じ様に周りに影響を与えるのだから当然かもしれないが。

「い、いいえ けしてご主人様を疑っているわけではないのですが・・・」

「いきなり、『呪い』がなくなったといわれても信じられないよな。 うん、気にするな。明日には分かることだ。」

「は、はい」

「それより、アイラの装備や生活雑貨を買い揃えないとな、奴隷を購入するつもりなんてなかったから」

「えっ!? ご主人様は、奴隷が必要で私を買われたのではないのですか?」

やはり普通、奴隷なんて衝動買いするものではないらしい。

「ああ、アイラが可愛かったからつい買ってしまっていた」

正直に話す。嘘は言っていない。『呪い』が解呪できるか気になったのも事実だが。

「そ、そんな。可愛いだなんて~」

アイラは頬に手をあて顔を真っ赤にして照れていた。
うん、そんなしぐさも可愛いな。
思わず、抱き寄せ一緒にベッドへ座った。
アイラを俺の足の間に座らせ背中から抱きしめる。
それ以上のことは、今はしない。あせらず、慎重にだ。

アイラはとても控えめな性格らしい。
長年『呪い』持ちとして虐げられていたからだろうか。
亡くなった両親以外とは、ほとんど交流がなかったらしい。

「とてもやさしいご主人様に買っていただいてよかったです。」

と涙を目に浮かべて言われたときはこっちがあわててしまった。
まあ、見た感じただの冒険者の俺が安い奴隷を買い求めたのだ。
下手をしたら使い捨ての盾にされるのではないかと心配していたようだ。
その可愛さに思わずアイラを抱きしめる手に力が入る。

「必要なのは、服とかかな? 俺、虎獣人のこと詳しくないんだけど他に必要なものとかあるか?」

アイラの虎耳を後ろからなでながら質問した。
虎獣人は生肉しか食べないとかそんなことは無いようだ。
アイラはまだ少し緊張しているようで、時折びくっと反応し恥ずかしそうに顔を伏せる。

「あの、首輪をいただけますか?」
真っ赤な顔でそうつぶやいた。 そういう趣味なの?
俺は、反射的に問い返した

「首輪?」

「はい、獣人の奴隷には首輪をつける義務があるのです。」

「ふーん、 義務なら仕方ないのかな。ほかには?」

そうか。義務なのか、すばらしい趣味の持ち主かと思って思わずあせってしまった。

「特には、後は人と同じだと思います。」

「なら、とりあえず洋服屋かな 首輪も売ってるかな?」

聞きながら今度はアイラの尻尾を撫でる。尻尾の付根から先っぽまでを何度も丁寧になで続けていると、
アイラの体から少しずつ力が抜けていくのを感じる。
実家で飼っていた愛猫を思い出しながら思うさま撫で回す。

「はい、売っていると思います。ですが、装備屋にも首輪があります。」

「装備屋の首輪か、それって『装備品』扱いだよね?」

「はい、頭装備扱いとなります。」

「なら、首輪は明日、装備屋で買おう」

「はい、ありがとうございます」

そんな会話をしながらも俺の両手は、アイラの虎耳と尻尾を撫でるのをやめない。
アイラは少し潤んだ目をして、俺に体重を預けてくる。
『装備品』は、モンスターから取れる素材を使って作られるものらしい。
魔法がかかっているためあらゆる体格の人にフィットする。
また、普通の鎧や武器より頑丈で切れ味が良かったりする。
その代わり、体の各部位に装備品は一つずつしかつけられない。
アクセサリーは同系統の物でなければ複数つけられるようだ。
つまり指輪をつければ、もう他の指輪はつけられないが、イヤリングや腕輪なら大丈夫なのだ。
ファンタジーなんだか現実的なんだか良く分からん。

日常でつけ続ける首輪が頭装備である以上、兜系の装備はつけられないので無駄に弱い装備をつけるのはまずいだろう。
この日は、アイラと夕食を食べ、アイラと体を水で洗い、アイラと同じベッドで眠りにおちた。
アイラはベッドの上でも可愛かった。 本当にいい買い物をしたようだ。




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