動物保護施設:犬猫処分させない、獣医師らが開設 飼い主に講習、愛護の精神広めたい−−倉吉 /鳥取
毎日新聞 2013年11月23日 地方版
県内で犬や猫の殺処分をゼロに近付けようと、地元の獣医師らが、飼えなくなった犬や猫を受け入れる動物保護施設を倉吉市に開設した。1万3000平方メートルの敷地内にドッグラン、放牧場も用意し、動物病院並みのケアを行う全国でも珍しい取り組み。東日本大震災の被災地で、行き場を失ったペットが多くいたことも設立のきっかけで、関係者は保護した犬や猫を引き取ってくれる人への講習会などを通じ、「動物愛護の精神を広く伝えたい」と話している。【高嶋将之】
施設名は「人と動物の未来センター アミティエ」。原則、保健所が収容した犬や猫を引き受ける。建物には犬専用の個室や犬猫用の大部屋、処置室があり、最大で犬50〜60匹、猫20匹を収容。鳥やタヌキなどの野生動物を保護していた野生生物センターを拡充し、9月にオープンした。公益財団法人「動物臨床医学研究所」(倉吉市、山根義久理事長)が運営。来春にも県内の保健所から犬や猫の受け入れを始める計画で、費用は会員の獣医師らの会費や一般からの寄付などで賄う。
前日本獣医師会会長の山根理事長は「動物病院と同等のケアができる体制が整った」と話す。県内では飼い主がいない犬猫が年間1300匹前後殺処分されており、「ゼロに近付ける」のが目標だ。
既に東日本大震災後、東京電力福島第1原発事故で福島県の旧警戒区域に取り残された犬と猫各5匹を保護している。山根理事長は被災地に何度も足を運び、放置されたペットの犬や猫を見た。さまざまな事情があったと理解しつつも、「国や自治体、住民に動物愛護の精神がもっと必要では」と思ったことが設立のきっかけになった。
保護した犬や猫は順次、希望する飼い主に引き渡される。飼い主の講習会を定期的に開き、飼う責任を事前に指導するほか、引き取った後も連絡を取り合い、飼育状況を確認する。山根理事長は「飼い主を希望する人には引き取り手の資格を厳密に問い、飼う責任を学んでもらう」と話す。
研究所は、静岡県沼津市でも大規模な動物保護施設の建設を計画しており、費用面で運営を支援するサポーター会員を募集している。問い合わせは同研究所東京事務所「人と動物の会」(03・6661・7574)。