なんとも残念な光景というほかない。政府・与党が衆院特別委員会で特定秘密保護法案の採決を強行した。法案はその後の衆院本会議で自民、公明両党とみんなの党などの賛成多数で可決された。
この法案には、国民の「知る権利」を損なう危うさがある。日本維新の会、みんなの党との間で修正がなされたものの根本的な問題は解決されていない。徹底した見直しに向けて議論を続けるべきだ。私たちはそう主張してきた。
それが、短期間でまとめた修正案を十分な審議時間を確保することなく採決する拙速ぶりである。
政府・与党は「慎重に審議してきた」という。だがともに修正案を作った維新の会は「審議が尽くされていない」として、採決を欠席した。このことが実態をよく表している。
審議の場は参院に移る。「良識の府」の理念に恥じない議論と法案の抜本的な見直しを求めたい。
法案では防衛、外交、スパイ活動、テロの4分野で、特に秘匿する必要があるものを、各省の大臣が特定秘密に指定する。秘密を漏らした公務員には最長で懲役10年の刑が科せられる。
指定の範囲が広く曖昧なため、何が秘密かよく分からないまま情報を受け取った側も罪を問われかねない。条文上はスパイと市民の別なく罰則が設けられている。自由にものを言えない、重苦しい社会になってしまう恐れがある。
本紙の世論調査でも、秘密保護法案については「反対」が50%で、「賛成」の26%を上回った。「懸念はない」と答えたのはわずか6%にすぎない。このような状態で、法案をそのまま通してしまって本当にいいのか。
知る権利の侵害を抑えるためには、最低限、指定する秘密の範囲を厳しく絞り込み、明確に規定する必要がある。そのうえで指定の適否を直接チェックできる第三者機関を設け、秘密を解除した後には公開するルールを作ることが不可欠だ。
採決に先立ち25日に開かれた福島県での公聴会では、意見を述べた参加者7人全員が、法案に反対するか、慎重な対応を求めた。自民党が推薦した浪江町長を含め、誰一人正面から賛成しなかった。
異例の事態といっていい。国民の抱く疑念や不信感はまったく解消されていない。政府・与党もここは立ち止まって、もう一度考え直してみるべきだ。
知る権利
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