柏崎刈羽原発 安全審査で初会合11月21日 18時45分
新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所について、運転再開の前提となる原子力規制委員会の安全審査の初会合が開かれ、東京電力の安全対策のうち、新たに設置が義務づけられた装置を巡って指摘や意見が相次ぎました。
東京電力は、ことし9月、運転再開を目指す柏崎刈羽原発の6号機と7号機について、安全審査の申請をしましたが、原子力規制委員会は、福島第一原発の汚染水問題などを理由に、審査会合を見合わせてきました。
初めての審査会合では、東京電力の姉川尚史常務が「自分たちは事故の当事者であり福島第一原発の事故原因を踏まえた対策を反映させてきた」と述べたあと、重大事故の安全対策や地震や津波の想定について説明が行われました。
福島第一原発と同じ「沸騰水型」と呼ばれる原発で審査会合が開かれるのは、柏崎刈羽原発が初めてです。
会合では、「沸騰水型」に新たに義務づけられた、放射性物質の放出を抑えながら格納容器の圧力を下げる装置、「フィルターベント」についての指摘が相次ぎ、「放射性物質を取り除く性能を詳しく確認したい」とか、「『自治体の了解のあとに運用開始』とあるが、運用できないことがあるのか」などの意見が出ました。
柏崎刈羽原発を巡って東京電力は、経営再建の「要」と位置づけて運転再開を目指していますが、規制委員会は福島第一原発での事故対応や汚染水問題を踏まえて審査を進める意向を示していて、審査がどのように進むのかは見通せない状況です。
規制委員会は、次回の会合を1週間後をめどに開く予定で、審査の論点を示すことにしています。
運転再開は見通せない状況
安全審査の申請からおよそ2か月後の21日、初めての審査会合が開かれましたが、審査がどのように進み、運転再開がいつになるのかは見通せない状況です。
東京電力は、ことし7月、地元新潟県に対し、安全審査の申請をすることに理解を求めましたが、泉田知事は、運転再開を急ぐ東京電力の姿勢を批判し、すぐには認めませんでした。
その後、9月、新潟県が条件付きで承認したことから、東京電力は、安全審査を申請をしましたが、原子力規制委員会は福島第一原発の汚染水問題でミスが相次いだことを受け、公開の場での審査会合を見合わせてきました。
また、今月中旬、規制委員会が柏崎刈羽原発の審査を進めると決めた際も、田中俊一委員長は「福島第一原発の対応が最優先なのは変わらず、汚染水問題などで非常に困った事態が起きれば柏崎刈羽原発の審査の中断もありうる」と述べています。
安全審査は、すでに、ほかの6つの原発について先行して進められているほか、規制委員会にとって、福島第一原発と同じ「沸騰水型」の原発の審査は初めてとなることから、「フィルターベント」など新たに確認する項目もあります。
さらに田中委員長は、20日の会見で、「東京電力の経営などの考え方も含めて見ないといけない。『下請け業者』を使う体質があり、現場を知らないという問題もあるので改善してもらいたい」と述べています。
仮に、安全審査が終わったとしても、運転を再開するためには、地元新潟県などの了解が必要で、運転再開がいつになるかは見通せない状況です。
東電「審査長期化の場合は値上げも」
東京電力は、柏崎刈羽原子力発電所の運転再開を業績改善の柱と位置づけています。
公的資金の投入や金融機関からの融資を受ける前提となっている現在の事業計画では、ことし4月以降、6号機と7号機を含む4基の原発を年内に順次、運転再開させることになっていました。
しかし、地元・新潟県の泉田知事が、福島第一原発の事故を踏まえた安全対策が十分ではないなどとして反対していたことや、汚染水問題でミスが相次いでいたこともあって、計画が大幅に遅れていました。
東京電力は年内をめどに新たな事業計画の取りまとめを進めていて、この中では柏崎刈羽原発の6号機と7号機について、国の安全審査が少なくとも半年間かかることや新潟県との調整などを見込んで運転再開の時期を来年7月とする方針です。
来年7月に運転が再開できた場合来年度の経常損益は1000億円を超える黒字を見込んでいます。
また、運転の再開が来年10月になった場合でも、およそ360億円の経常黒字になると試算しています。
一方で、運転再開が再来年1月になった場合は130億円の経常赤字、再来年3月末まで運転が再開されない場合は800億円余りの経常赤字に陥ると試算しています。
このため審査の長期化などで、6、7号機の運転再開が見通せない場合などには、電気料金の値上げが必要となることも事業計画の中で明記することにしています。
東京電力は、原発の運転停止に伴って火力発電用の燃料費が大幅に増加しているうえ、福島第一原発の事故の賠償や廃炉作業に多額の費用が必要で、柏崎刈羽原発の運転再開による収益改善が不可欠だとしています。
泉田知事 審査内容を注視
原子力規制委員会が柏崎刈羽原子力発電所について、安全審査の初会合を開いたことについて、新潟県の泉田知事は「汚染水問題に対する東京電力の対応が十分だとは思えないなかで、なぜ公開の場での審査を始めたのかわからない」と規制委員会の姿勢を批判したうえで「議論されていたフィルターベントは、性能の審査だけでは安全を確認することはできない」として今後、審査の内容を注視していく考えを示しました。
地元の人たちは
新潟県柏崎市では、住民たちが原子力規制委員会の審査の様子をインターネット中継で見守りました。
柏崎刈羽原発からおよそ5キロの距離にある柏崎市椎谷地区では住民たちが集まり、インターネット中継で原子力規制委員会の審査の様子を見守りました。
住民たちは、格納容器の圧力を下げる装置、「フィルターベント」についての議論を東京電力から公表されている資料を確認しながら真剣な様子で聞いていました。
佐藤正幸さんは「原発事故の反省を踏まえてきちんとした審査が行われ、多くの住民の安全の確保や安心につなげてほしい。規制基準をクリアするかどうかだけでなく、避難計画などの対策についてもきちんとチェックしてほしい」と話していました。
また、福島県富岡町から柏崎市に避難している川井幸子さん(76)は、自宅が福島第一原発の10キロ圏内にあり、事故の翌日から避難を始め、4か所の避難先を転々とし、今は柏崎市のみなし仮設に1人で暮らしています。
富岡町の自宅は「帰還困難区域」に指定されていて、戻れるめどは立っていません。
川井さんは「審査する委員会の委員には、事故は起きるということを前提に真剣に審査してほしい」と求めたうえで「事故は二度と経験したくない。柏崎刈羽原発の運転が再開されるようなことがあれば、ようやく慣れた今の避難場所も離れざるをえない」と話していました。
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