TPP:実質合意へ最終調整 知財・関税先送り
毎日新聞 2013年11月26日 02時33分(最終更新 11月26日 02時52分)
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加12カ国は、12月初旬にシンガポールで開く閣僚会合で「実質合意」をとりまとめる方向で最終調整に入った。米ソルトレークシティーで24日まで開かれた首席交渉官会合で、公共事業を外国企業に開放する「政府調達」などの分野で合意のめどがついたと判断した。ただ関税など難航している分野も多く、閣僚会合でどこまで政治決着を図れるかが、目標の「年内妥結」へのカギとなる。【宇田川恵、大久保陽一】
「閣僚会合に上げる論点はだいぶ絞られてきた。だが裏を返せば、各国にとってなかなか譲れない線が残っているということだ」。会合を受け、東京都内で25日、記者会見した大江博首席交渉官代理は、成果を評価しつつ、交渉の厳しさも隠さなかった。
大江氏は、今回の会合について「日本が交渉に参加した(7月末の)マレーシア会合以降、一番大きな進展があった」と説明した。実際、数カ月前には難航していると言われた「政府調達」分野の議論がほぼ決着。コンビニなどのサービス事業者が外国で不利な扱いを受けないためのルールを作る「越境サービス」でも、ベトナムなどが外資規制を緩和する検討に入り、合意の方向となった。
一方、元々100を超える論点があるとされる「知的財産権」分野は、最終日の24日をほぼ丸々使って議論した。「閣僚会合に上げる論点を相当絞り込まないといけない」ことで一致。ソルトレークシティーで引き続き26日まで分科会を開き、絞り込みの作業を続ける。
ただ、大江氏は「大きな進展があったわけではない」と述べ、閣僚会合で政治決着を探るしかないとの見方を示した。閣僚会合では、難航分野の話し合いがまとまらなくても「実質合意」を宣言、交渉前進をアピールする方向だ。
◇「聖域」着地点見えず 日本、包囲網に警戒も
コメなど重要農産品の「聖域」を抱える関税分野についても、首席交渉官会合では各国が2国間交渉の現状を説明するにとどまり、大きな進展はなかった。「にらみあいが続き、着地点が見えるのには時間がかかる」(大江氏)見通しだ。
日本が聖域とするコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の重要5項目は、関税分類では計586品目となる。