秘密保護法案:「巨大与党の暴走が始まった日」海江田代表
毎日新聞 2013年11月26日 23時48分(最終更新 11月27日 03時37分)
「これより採決」。26日午後8時過ぎ、衆院本会議場に伊吹文明衆院議長の声が響いた。野党席で民主党議員らが机をたたいて抗議する中、自民、公明、みんなの党の大半が起立して賛意を示し、特定秘密保護法案はあっさりと衆院を通過した。傍聴席では十数人が立ち上がり「自民党、恥を知れー」と叫んだが、安倍晋三首相は気にするふうもなく起立したまま20回以上も拍手した。
「小手先の修正で妥協してしまったみんなの党の執行部には失望を禁じ得ない。行政機関の長たる首相が第三者機関とは笑止千万だ」。採決前の反対討論で、民主党の長島昭久元副防衛相は与党と修正合意し、法案に賛成したみんなをこき下ろした。長島氏は「衆院での審議を踏まえて参院でも改めて熟議を重ね、さらなる法案修正に向けて努力されんことを求める」と付言し、容易に法案成立は許さないとの姿勢を示した。
長島氏が批判したみんなでは、江田憲司前幹事長は採決前に退席。井出庸生(ようせい)、林宙紀(ひろき)両氏が議場内で起立せず、法案賛成の党方針にあらがった。
江田氏は本会議後、「基本的人権に関わる重大法案。強行採決は容認できない」と退席理由を説明。井出、林氏はそろって記者会見し、「情報漏えいの法整備には反対しないが最小限でなければならない」(井出氏)、「党以前に国民があるという思想信条がある」(林氏)と理由を述べた。
今回の法案審議を複雑にしたのはみんなと、日本維新の会の対応だった。造反こそなかったが維新も揺れた。
「与党との協議でいい修正案ができたと思うが、それと審議はまったく別ということであえて退席した」。衆院国家安全保障特別委員会に出席しながら、採決では退席した維新国会議員団の藤井孝男総務会長の弁明は歯切れが悪かった。この日午前に採決された修正案は維新と自民、公明、みんな4党の共同提案にもかかわらず、退席して賛否を明らかにしなかった。橋下徹共同代表に近い大阪系の議員を中心に「合意内容が不十分」との異論がくすぶっていたためだ。反対派を抑え込むため、与党から提示された26日の衆院採決に応じない方針も決めていた。「賛成」も「反対」もできない状況。同日夜の衆院本会議でも「棄権」以外に選択肢はなかった。