WEB特集
ゆるキャラ“過熱” 狙いが裏目に
11月26日 20時35分
全国各地で次々と誕生しているご当地キャラクター、「ゆるキャラ」。
その数は、全国で今や2000を超えると言われています。
「ゆるキャラブーム」が勢いを増す一方で、その“過熱”によって狙いが裏目に出る事態も起きています。
科学・文化部の山室桃記者が解説します。
「ゆるキャラ」旋風
今月23日から2日間にわたって埼玉県羽生市で開かれた、「ゆるキャラさみっと」。
全国各地のご当地キャラクターが集まり、「ゆるキャラ界」のナンバー1が選ばれました。
3年前から開かれている催しで、「ひこにゃん」や「くまモン」など、歴代のグランプリに輝いたキャラクターたちを筆頭に、「ゆるキャラ」は町おこしに欠かせない存在となっています。
参加数は年々増加し、ことしは1580の「ゆるキャラ」がエントリー。
グランプリには、栃木県佐野市の名物、佐野ラーメンのおわんを頭に載せた「さのまる」が選ばれました。
投票総数も過去最多の1700万票を超え、主催者によりますと、会場には24日だけで過去最多の25万人が訪れたということです。
「ゆるキャラ」の歴史
「ゆるキャラ」は、地域おこしや企業などのマスコットキャラクターとして作られていますが、かつては、イベントに参加するもののほとんど目立たない存在でした。
火付け役となったのは「ひこにゃん」です。
平成19年に滋賀県で開かれた彦根城築城400年祭のイメージキャラクターとして登場すると、かわいらしいしぐさが全国的な人気を集め、祭りの来場者は予想を上回り75万人を超えました。
その後、熊本県のマスコット、「くまモン」が登場。 おととしから“熊本の営業部長”として各地を巡って名産品のPR活動に力を入れるだけでなく、激しいダンスを披露したりバンジージャンプに挑戦したりと、これまでの「ゆるキャラ」とはひと味違った魅力をアピールしました。
このほかにも、愛媛県今治市の「バリィさん」や奈良県の「せんとくん」といった個性的なキャラクターが次々と登場し、これまでに誕生した「ゆるキャラ」は2000以上に上ると言われています。
ブーム“過熱”が裏目に
勢いを増す「ゆるキャラブーム」。
一方で、その“過熱”によって狙いが裏目に出る事態も起きています。
例えば大阪府の場合、先月、庁内の「ゆるキャラ」を調べたところ、32にまで急増していることが明らかになりました。
府の各部署が次々と独自の「ゆるキャラ」を制作していたのです。
数多く作ったものの、どれも全国的な知名度がまだ低く、大阪府民からは「作りすぎ」と批判の声も聞かれました。
さらに、「ゆるキャラ」の売り込み方が「あだ」となったケースもあります。
佐賀県鳥栖市の「とっとちゃん」。
深夜放送のラジオ番組でしゃべらせたところ、わいせつ発言を連発。
今月、市長みずからが謝罪会見を開く事態となりました。
異色の「ゆるキャラ」登場
こうしたなか、自治体の公認ではないのに人気絶頂となっているのが、「ふなっしー」です。
千葉県船橋市のPRに一役買いたいと、おととしから自主的に活動を始めました。
当初は船橋市の公認でないために市のイベントに参加することさえできなかったということですが、「ふなっしー」は船橋市の特産「梨」の妖精として、インターネットの動画サイトに投稿を続けました。
入浴シーンを公開したり、ダイエットに挑戦したり、自治体公認の「ゆるキャラ」とは違う個性をアピールしました。
また、「かわいらしく無言で動く」という「ゆるキャラ」の常識を覆し、飛んだり跳ねたりのハイテンションで、会話もするという異色のキャラクターが話題となりました。
公式ツイッターのフォロワーは、あの「くまモン」を超える34万人に達しました。
テレビ番組にも次々に出演し、ついにはCDデビューも。
これまでの活動が認められ、先月には船橋市から感謝状が送られました。
ふなっしーが語る人気の背景
「ふなっしー」が全国にファンを広げたのはどうしてなのか、「ふなっしー」自身に取材してみました。
「ふなっしーが思うに、一から立ち上げて、いろいろ苦労をかさねて、どんどん進んで行く姿に、ひとつの物語として、皆さんが加わっていただいた気がするなっし。その物語を皆さんが見ている、共感していくっていうなかで、いろんなことが起きた気がするなっしなー」。
苦労や楽しみも含め、みんなで時間を共有しながらキャラクターを作り上げていったところが人気につながったということです。
「ゆるキャラ」ということばの名付け親でイラストレーターのみうらじゅんさんは、マイナス面も含めて「ゆるキャラ」は日本の文化に育ってきたと分析しています。
「ゆるキャラは完璧にキャラクターとして確立しつつあるし、世界的に見ても日本独特の文化なんです。昔からある日本のセンスで、“やおよろずの神様”だから、いろんな所に魂が宿ればそれがキャラになる。
世界に誇れる“ゆる文化”だと思います」。
「ゆるキャラ」を育てる
数が増え、競争が激しくなっている「ゆるキャラ」。
より個性的でないと勝ち残れない時代になっています。
その一方で、「ゆるキャラ」を制作することが目的になっていないか、冷静に考える必要があると思います。
自分たちの町のどんな所をPRしたいのか、そのためにはどんな「ゆるキャラ」が効果的なのか、戦略を練ったうえで、その「ゆるキャラ」をどう育てていくのか、自治体をはじめ地域ぐるみのプロデュース力がますます求められる時代になっています。