ここ最近、宗教に関する議論が盛り上がっています。


家入一真、佐々木俊尚、湯川鶴章、イケダハヤト…


たとえば、家入さんは宗教法人を作ろうと考えているそうで。この人なら本当にやってくれるはず。



先日話題になりましたが、佐々木俊尚さんも宗教をテーマに幸福の科学の方と対談しています


湯川さんも、新刊のなかで「スピリチュアルな考え方が主流になる」ということを書かれています。

「スピリチュアルな考え方が主流になる」と主張すれば否定されるが、「目に見えない世界の存在を信じ直感を大事にする人が増える」という表現にすれば、多くの人は同意してくれるだろう。

経済至上主義、科学万能主義に懐疑的な人が増えるなかで、真理は別のところにあることにうすうす気づいている人は増えているはずだ。

U理論のように、見方によっては完全に精神世界的な真理観に立脚しているような理論や主張が、これからますます増えてくるのだと思う。


さてさて、ぼく自身も宗教には強い関心を寄せています。来月頭には、アルボムッレ・スマナサーラ師に仏教について色々伺ってくる予定です。ぼくは特に初期仏教がツボってます。仏教超面白い。お釈迦様ヤバい。


なぜ今「宗教」なのか?:身体性への回帰

なぜ今、一部の論者たちは「宗教」に目を向けているのでしょうか。

それぞれの観点があるとは思いますが、ひとつは「身体性」への回帰なんじゃないかと考えています。


前提として、テクノロジーはぼくらを生身の身体から分離させる傾向があります

匿名アカウントを用いて罵詈雑言を投げかける人が多いのは、まさにその象徴です。彼らは自分のリアルな身体ではできないことを、テクノロジーを使って実現しているのです。
レイ・カーツワイルが「シンギュラリティは近い」で予言するように、バーチャル・リアリティが進化すれば、ぼくらはさらに具体的に、身体を超えることができるようになるでしょう(バーチャル・リアリティのなかでなら、孫悟空にもケンシロウにもなれちゃいます)。
 

で、宗教は、ぼくらに身体性を取り戻させる力を持っています。これが、今、特に知識人たちが宗教的なものに目を向けている理由だと考えます。


わかりやすいところでは、たとえば瞑想をすると、自分の身体の捉え方が変わるわけです。スマナサーラ長老いわく、お釈迦様は「自分の身体をリアルタイムで実況する」という瞑想を行っていたそうです。

ヴィパッサナー瞑想は、日本の坐禅とはずいぶん違います。立つ、座る、歩く、横になるというもっとも基本的な動作をしつつ、それを頭のなかで実況生中継するというものです。

右足をあげるときは「右足、あげます、右足、あげます」と頭の中で生中継して、動作と一致させる。そして感覚の変化を感じ取る。ただこれだけです。この瞑想法で、お釈迦様は悟りを開くに至ったそうです。


真似事でこの瞑想をしてみたのですが、ぼくは「自分の脳みそでは、自分の身体を理解できない」ということに気付かされました。ぜひみなさんも試してみてください。


さて、宗教が教える重要なもののひとつは、「この世の中には、お前の脳みそで理解できないものがある」という真理だと考えます

ぼくはあんまり好きではありませんが、湖の上を歩いたり、死んだ人が復活したり、空中浮遊したりするのも、「この世の中には、お前の脳みそで理解できないものがある」というのが狙いです。


ぼくらの身体は、一部の知識人にとって「新しい謎」なのでしょう。社会について、テクノロジーについて理解はできるけれど、実は、自分自身の身体についてはよく理解していないじゃないか!という新鮮な驚きが、そこにはあります。そして、自分の身体への視点を変え、脳みその思考を相対化することができれば、やっぱり世界の見え方が変わり、感動するわけです。

宗教というのは、身体にアプローチする効果的な方法です。シリコンバレーで瞑想が流行っていると聞いたことがありますが(ジョブズも禅が好きだったとか)、特に東洋の宗教・哲学は、脳を相対化させ、身体を浮き彫りにする力を持っているのでしょう。


不安定な時代のコミュニティとして

注目が高まっているもうひとつの理由は、宗教がもつコミュニティ形成効果でしょう。こちらは特段の説明は不要だと思いますが、会社、地域などのコミュニティが崩壊し、さらに経済・雇用の情勢が不安定となれば、「よりどころ」として宗教コミュニティが機能していくと考えられます。

あの創価学会も、コミュニティとしての機能を果たしたことが拡大の要因だとか。これから日本では、コミュニティ機能の側面から宗教が盛り上がっていくんじゃないかと予想します。

創価学会の会員になったのは、地方から都市部へ出てきたばかりの農家の次三男が中心だった。彼らは、地方に残っていれば、保守的な風土のなかで、自民党の支持者になった。その点で、創価学会の会員、つまりは公明党の支持者は、元来保守的な体質を持っていた。



グローバリゼーションの影響

最後にもっともわかりやすいのは、グローバリゼーションによって異教徒の存在が身近になった、という理由。これについても、説明は不要でしょう。

ぼくらの職場、学校、地域にイスラム教徒、キリスト教徒、仏教徒などなどの方々がいることは、もはや当然になりつつあります。ぼくの近所にもイスラム教徒と思われる人がたくさん住んでおります。

現在10歳以下のお子さんをお持ちの方は将来「インドからの電話で孫の誕生を知る」とか「今年の夏休みには、ブラジルから孫が初めて帰ってくる」という体験をし、なかには「うちの嫁はインドネシア人でイスラム教徒だから、家にお祈りのスペースをつくったの」というケースさえ出てくるでしょう。


今はまだ目立ったプレーヤーはいないですが、そのうちどこかの宗教法人なりNPOが、「異教徒と対話し、異文化を理解する」ための研修プログラムを販売するようになると思います。資本主義的な理由でも、宗教への関心は高まっていくでしょう。


というわけで、身体性への回帰、コミュニティ、グローバリゼーションという観点で、宗教に注目が高まる理由を考えてみました。他に挙げられるとしたら、みなさんは何を挙げますか?

これからますます宗教についての関心は高まっていくでしょう。「宗教」というと大半の日本人はアレルギーに近い反応を示します。21世紀ですし、変な偏見や誤解は解いていきたいですね。


宗教理解を深めるためにオススメの作品をご紹介。

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