■ 献血時の安全検査すり抜け輸血、1人がHIVに感染
病気やけがをした人たちを救う献血。善意で支えられ、毎年500万人以上が協力しています。ところが、HIV=エイズウイルスに感染した血液が検査をすり抜けて2人の患者に輸血され、このうち1人がHIVに感染していたことがわかりました。
「本当に遺憾な話。善意の献血が被害につながってしまう」(田村憲久厚労相) 厚生労働省と日本赤十字社によりますと、今月、40代の男性が献血に訪れ、血液を検査したところHIVへの感染が判明しました。 この男性は2月にも献血をしていたため、保管していた検体を改めて詳細に調べたところ、微量のHIVの遺伝子が検出されました。しかし、当時行われた検査ではウイルスは検出されていなかったため、男性の血液はすでに患者2人に輸血されていたのです。 厚労省は患者に告知し感染していないか調査したところ、このうち60代の男性がHIVに感染していることが確認されたということです。もう1人についても、調査を進めています。 「安全」なはずの献血。なぜ、HIVに感染した血液が混じってしまったのでしょうか。日赤の血液検査は、世界でもトップレベルの精度ですが、HIVは感染して50日間ほどは検出が難しく、検査には限界があるといいます。 「きちんと検査して安全な血液を患者に届けたいという思いでやっているが、どこまで検査の精度を高めたとしても、その検査で検出できない期間はどうしても一定程度出てしまう」(日本赤十字社・中野顕彦広報係長) さらに、男性は献血に訪れた際、事前の問診に虚偽の申告をしていました。 「裏面に問診票があって、これにお答えいただく」(日本赤十字社・中野顕彦広報係長) 問診票には6か月以内に「不特定の異性との性的接触」や「男性同士の性的接触」など、感染の可能性がある行為について記入する欄があります。男性はこの質問に「いいえ」と答えていましたが、その後の調査で「男性同士の性的接触」があったことを認めたということです。男性は、エイズ検査の目的で献血を利用したと見られます。 「検査に献血を使われるのは困る。(検査は)保健所で無料で匿名でやっているので、そちらをお使いいただきたい」(田村憲久厚労相) 今回の事態を受け、厚労省は、検査手法などについて改めて検討する方針です。 「誰かを病気にしてしまうことが起こる可能性について、(ドナーが)さほど自覚的でなかったからできたと思う」(血液事業部会のメンバー、ネットワーク《医療と人権》・花井十伍理事) 「保健所(の検査)は敷居が高い。HIVに特化していると検査が受けにくい。気軽に検査ができるようなシステムを立ち上げることが必要」(血液事業部会のメンバー、埼玉医大病院・岡田義昭医師) (26日17:24)
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