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      秘密保護法案 避難住民など懸念

      秘密保護法案 避難住民など懸念

      東京電力福島第一原発で原発事故の収束作業にあたる会社からは、特定秘密保護法によって原発関連の情報に特定秘密の対象が拡大することへの懸念から法案に反対する声があがっています。
      25日の公聴会で意見を述べたいわき市の原発関連会社の名嘉幸照会長は、およそ40年にわたって福島第一原発などで設備の設計や管理などに携わってきました。
      原発事故の後は会社を避難区域の富岡町からいわき市に移転させ、現在も従業員を福島第一原発に派遣して、放射線量の計測や汚染水処理など事故の収束と廃炉の作業にあたっています。
      名嘉さんは特定秘密保護法について「原発で働く労働者が現場で知り得た情報を話せば処罰の対象になるのではないかと不安になり情報が表に出なくなる。テロ対策としてハード面を強化することは大切だが、情報というソフト面を規制することは現場の労働者に暗黙のプレッシャーを与えることになる」と話しています。
      その上で、福島第一原発では作業員の被ばく線量が限度に達したことで、仕事を辞めざるを得なかったりほかの職場への配置転換が行われたりしていることを指摘し、「法案の成立によって、原発で働くことを敬遠する作業員が増え、今後40年かかるとされる
      廃炉作業の人材を確保することがこれまで以上に難しくなるのではないか」と述べました。
      さらに原子力業界では原発の安全性について疑問を口にすることが長年、タブー視されてきたことを指摘し「原発について開かれた情報がない限り安全とは言えず、現場の情報がいままで以上に開かれたものにならなければならない。原発の本当の情報が知らされないと、暗黙のうちに安全神話が生まれてくる。原発事故の教訓が生かされない中で特定秘密保護法案を原発に適用するべきではない」と訴えました。
      公聴会のあと名嘉会長は、「原発の安全確保には内部告発が重要だ。福島で公聴会を開いたということは、その大事さを考慮しているということだと思う。原発で働く作業員にプレッシャーをかけてほしくないという思いは伝えられたと思う」と話していました。
      特定秘密保護法案について福島県議会は先月9日、国会と政府に対し慎重な対応を求める意見書を57人の県議会議員の全会一致で可決しました。
      意見書では原発事故の直後、放射性物質の拡散を予測するシステム、SPEEDIの情報の公開が遅れたため、一部の住民が放射線量が高い地域へ避難してしまったことをあげ、「国民の生命と財産を守るための有益な情報が公共の安全と秩序維持の目的のために『特定秘密』の対象に指定される可能性は極めて高い」としています。
      また、刑罰による秘密保護が国民の「知る権利」を保障する上で重要な内部告発や報道機関の取材活動を萎縮させる可能性を指摘し、「ファシズムにつながる可能性があり、制定されれば民主主義を根底から覆す瑕疵ある議決となることは明白だ」として、国会と政府に慎重な対応をとるよう求めています。
      意見書が議決された当時、県議会の議長を務めていた自民党の斎藤健治議員は、法案に慎重な理由について「SPEEDIなどの原発に関わる情報を国家秘密にされてしまっては県民の健康維持はどうすればよいのかという思いが根本にある」と述べました。
      また、斎藤元議長は「原発事故の内容や汚染水などの現状をすべて包み隠さず、県民に公にしてもらいたい。もし秘密にされては、4号機からの燃料の取り出しなど危険な作業が続く中で県民は安心できない」と述べました。
      原発事故のため避難を余儀なくされている住民からは、特定秘密保護法によって住民が必要とする原発関連の情報が公開されなくなるのではないかと懸念の声があがっています。
      南相馬市の志賀勝明さん(65)は、自宅が原発事故の避難区域に指定され市内の別の場所に夫婦2人で避難しています。
      志賀さん夫婦は原発事故の直後、放射性物質が拡散した北西方向を通って相馬市に避難しましたが、放射性物質の広がりを予測する「SPEEDI」の情報が公開されていれば、被ばくを避けて避難できたと話します。
      志賀さんは、「情報がないためどこに避難すべきか被災者が右往左往しているときに、政府はSPEEDIの情報を知っていた。いまはそれを追求できるが、法案が成立してしまえばそういう情報があったこと自体が隠されて追求すらできなくなる可能性がある。
      避難している住民は、原発の実態がどうなっているのかを一番知りたい。真実を知ることができないようにする法案を許すことはできません」と話しました。
      志賀さんは25日、福島市で開かれた公聴会の会場に出向きましたが、入場できる人が事前に決められていて傍聴することはできませんでした。
      志賀さんは、「本当に必要な法案なのであれば、もっと広く多くの人たちが公聴会に参加できるようにすべきだ。公聴会が限られた人たちの中で進められること自体がこの法案の問題を表している」と話していました。
      25日の公聴会で意見を述べた7人はいずれも各党から推薦された人で会場で傍聴できる50人も各党に事前に割り振られていため、一般の住民は入場することができませんでした。
      会場周辺には、公聴会に入ることができなかった市民団体のメンバーや住民などおよそ100人が集まり、法案に対する抗議活動を行いました。
      参加者たちは、「特定秘密保護法案に反対」とか「情報は民のもの」などと書かれた横断幕を掲げたりチラシを配ったりして法案の廃案を訴えました。
      参加した福島市の49歳の女性は、「限られた人たちを集めて行う今回の公聴会は、公聴会をやったというアリバイづくりとしか考えられません。原発の情報はいまでさえ後から判明する事実があるのに、この法案が成立したら私たちが必要な情報を得られなくなるのではないかと心配です」と話していました。
      また、福島市の72歳の女性は、「復興関連の法案についてはゆっくりと時間をかけて進めているのに、この法案だけ議論を尽くさずに急いで決めるのはおかしい」と話していました。

      11月26日 09時41分