やっぱりエロスゴかった!大島監督「愛のコリーダ」追悼上映も

2013.01.25


大島渚監督はカンヌ凱旋会見を開いた【拡大】

 巨匠、大島渚監督(享年80)の訃報で、久々にそのタイトルを耳にした人も多かったのでは。世界中にセンセーションを巻き起こした官能映画「愛のコリーダ」だ。のちに、裁判でわいせつ性をめぐって争ったことを知る人も少なくなったが、どれほどすごい作品だったのか。

 1976年に公開された「愛のコリーダ」。藤竜也(71)と松田暎子が、昭和史に残る猟奇事件「阿部定事件」を演じた日仏合作映画だ。カンヌ国際映画祭でも、監督週間オープニング作品として上映され話題を独占した。公開時、劇場で見たという映画評論家の望月苑巳氏は、「芸術とポルノがどう違うのか、真剣に悩んだ。映画好きの多くの人が同じ思いだっただろう」と振り返る。

 徹底した性描写にこだわった映像は、当然ながら日本ではそのまま上映とはいかなかった。「ボカシばかりの修整版だったから、ちまたでは『本当に“ホンバン”やってるのかな』『いやいや、あれは疑似だよ』と興味本位でいろいろ言っていた」(望月氏)

 「世界初上映されたのが76年5月15日のカンヌ。正式なコンペではなく監督週間での上映になったのは『ハードポルノ』だったからという説もある」とは、カンヌ国際映画祭の批評家週間審査員経験を持つ映画評論家の小張アキコ氏。

 カンヌでは多くのスターが観賞し、その中には映画「巴里のアメリカ人」のヒロイン、レスリー・キャロン(81)がいたという。ハードなセックスシーンの連続で藤が8キロ痩せたという逸話も。とくに有名な場面がある。

 「吉蔵(藤)が定(松田)の局部に、ゆでたまごを入れる。定がしゃがみこんで、ニワトリがたまごを産むように、ポロンと落としてみせるシーンでは、カンヌの上映会場が大喝采に包まれ、その後、大きな笑いが起きた」(小張氏)

 フランスはもちろん、世界各国で大ヒットとなり、2年後、大島監督は「愛の亡霊」でカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞。その後「戦場のメリークリスマス」と続き、世界にオオシマの名をとどろかせた。小張氏によると、「愛のコリーダ」は80年代半ばまで、パリなどで普通に上映されていたという。

 「愛のコリーダ」のプロデューサーはフランス映画界の旗手、アナトール・ドーマン。98年にドーマン氏は死去し、カンヌでは氏の追悼上映が行われた。「その際、彼の最高の1本に選ばれたのが『愛のコリーダ』。それこそが、世界の映画人が下した評価にほかならない」(小張氏)

 日本では今もオリジナルの作品は見ることができない。

 現在、追悼企画上映を検討している東京・池袋の新文芸坐では、「2000年に公開された『愛のコリーダ2000』は、時代に即した修整方法を取り入れた作品で、当館でも何回か上映している。可能であればもちろん上映したい作品」と話す。新文芸坐のルーツ、人世坐は、公開5日間で上映中止となっていた大島監督の「日本の夜と霧」をいちはやく特別上映し、大島監督に再び脚光を当てた。「特別なご縁があるだけに、ぜひとも追悼上映をやりたい」と意気込んでいる。

 「ぼくは後年、無修整版をみて『やっぱり』と思った。これって、すごい反権力映画なんだと」と望月氏。大島監督が貫き通した映画への思いを、日本でありのままに見られる日は来るのだろうか。

 

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