秘密保護法案公聴会:「アリバイ作りだ」福島市民怒り

毎日新聞 2013年11月25日 12時26分(最終更新 11月25日 12時49分)

特定秘密保護法案の公聴会が開かれる会場前で抗議のプラカードを掲げる女性=福島市で2013年11月25日午前9時23分、須賀川理撮影
特定秘密保護法案の公聴会が開かれる会場前で抗議のプラカードを掲げる女性=福島市で2013年11月25日午前9時23分、須賀川理撮影

 「原発事故の情報が隠されるのでは」「国民の意見を聞いたというアリバイ作りだ」。政府が臨時国会での成立を目指す特定秘密保護法案を巡り、衆院国家安全保障特別委員会が25日、初の地方公聴会を福島市で開いた。だが、26日にも同委員会で採決される可能性がある上、傍聴は50人に限定。入場できなかった市民らは会場前で「秘密保護法を許さない」「秘密保護法は原発事故の真実をかくす」などの横断幕やプラカードを掲げ、法案反対の声を上げた。【喜浦遊、蓬田正志】

 JR福島駅前では午前9時過ぎ、自民党の額賀福志郎・元防衛庁長官ら特別委の委員が会場入りする時間に合わせ、待ち構えた複数の市民団体の計約70人が「なぜ法律を作ろうとするのか」「原発情報が秘密になってしまう」などとスピーカーで訴えた。

 抗議行動を呼び掛けた一人で、福島市の元教員、佐々木慶子さん(71)は、東京電力福島第1原発で行われている事故収束作業も、法案で定める「テロ防止」の理由から特定秘密にされる可能性があると指摘。「そうなれば作業中にトラブルがあっても分からず、身の安全が脅かされかねない。戦後最大の悪法だ」と訴えた。

 傍聴に訪れた県民からも、次々と批判の声が上がった。南相馬市の漁師、志賀勝明さん(65)は「原発事故のとき、南相馬市より放射線量が高い郡山市に避難してしまった。正しい情報があれば、安全な場所に身を寄せることができたはず。情報公開してもらわなければ、自分たちの行動が安全か判断できない」と話した。

 郡山市のフリージャーナリスト、人見やよいさん(52)は「(政府に寄せられた)9万件以上のパブリックコメントの大半が法案に反対する意見だったのに、なぜ作ろうとしているのか」と批判。公聴会については「『意見は聞きました』というアリバイ作りにしか思えない」との見方を示した。

 市民団体は駅前で「秘密保護法反対」のビラをまき、手に取った福島市の無職、椎名千恵子さん(67)は「隣の伊達市に孫がいる。孫の安全を守るためにも情報を出してもらわなければ」と話した。

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