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脱常識! 江戸川区のすごい「学童保育」

東洋経済オンライン 11月25日(月)8時0分配信

 数日間の職場体験を実施する自治体はたくさんありますが、丸1週間続けるのはここしかありません。

 区内には5000人強の中学2年生がいますが、みんなもれなく、どこかの事業者に預けます。5000人もの人を預かってもらうために、現在、1600事業者に協力してもらっています。2005年からスタートしましたが、そのために私も工場や商店など、あらゆる団体に出向いて、「受け入れをお願いします」と言って回りました。

 実施から8年が経過し、事業主の方から「1週間続けることがいい」との声をたくさんいただくようになりました。3日ぐらいだと、なかなかモノにならないようです。しかし、不思議なことに、4日目あたりから、あいさつの仕方や働くことへの理解が変わってくるのだそうです。

 こんな話もありますよ。ある魚屋さんでは、子どもを朝4時から河岸(魚市場)に連れて行った。そのお礼に、お母さんがケーキを持ってきてくれたのだが、主人は「ケーキはいらないから、魚を買ってくれ」と言ったそうです。もちろんジョークですが、大人同士のコミュニケーションや地域の活性化にもつながっている、ということです。

 この事業は、地域の協力がなければできません。「地域ぐるみ」で人を育てる、とはこういうこと。先生による学校の授業とは、ひと味違うのですね。

■ 保育ママ活用にも信念

 ――「地域ぐるみ」での取り組みは、簡単にできるものではないと思います。背景として、江戸川区にはどのような風土があるのでしょうか。

 子どもを家庭的な雰囲気の中で保育する「保育ママ制度」(編集部注:区が認定した保育ママが、自宅で子どもを預かる制度)が浸透していることが、その理由のひとつかもしれません。全国に先駆けて、1969年から実施しています。これも地域の理解と協力がないとできない事業です。

 江戸川区は1970年代前後、高度成長期の保育急増時代に「保育所が足りない」と問題になったのですが、いたずらに施設を増やすことはしませんでした。「0歳や1歳児を無条件に保育園に入れるのはどうか」という考え方もあり、「少なくとも0歳児は公立保育所では預かりません」、と宣言したのです。 

 そこで、経験のあるママさんに子どもを預かっていただくことになりました。現在は、ほかの地域よりも圧倒的に多い、200人ぐらいの保育ママさんがいますよ。

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最終更新:11月25日(月)8時0分

東洋経済オンライン

 

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2013年11月30日号
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