東洋経済オンライン 11月25日(月)8時0分配信
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江戸川区の「学童」は、親の仕事の有無を問わず、希望者全員が入れる |
「日本」「東京」単位の情報は山ほどあっても、「区」や「市」レベルの情報はほとんどない。いったいどの街に住むべきなのか判断がつかない、という人も多いのではないか。
そこで、この連載では、話題の「区」や「市」を訪ね歩く。第一回目は、「学童保育」の常識を覆したと評判の、江戸川区に行ってきた。
今、首都圏で待機児童問題と並んで深刻化しているのが「小学生の放課後」問題だ。共働き家庭は、学童保育施設に子どもを預かってもらうことが多いが、職員が少ない、内容が単調でつまらない、夏休み期間の対応が不十分――。さらに、希望者増で入れないという自治体も増え、親たちの悩みの種となっている。
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それらの「解決のヒントになる」と、全国から注目を集めているのが江戸川区だ。同区の「すくすくスクール」は、子どもが放課後の時間を過ごす先進的なモデルとして、全国から視察が殺到している。
江戸川区方式は、ほかの自治体の学童クラブとどう違うのか? 多田正見区長に聞いた。
■ 全国初! 希望者「全入」の学童
――江戸川区は「子どもが多い街」として知られます。若い夫婦や1人の女性が産む子どもの数が多く、小学校の数も東京23区でトップです。そのため、子育て支援において、ほかの区にはない、独特の取り組みが多数あると聞きました。
よくほかの自治体などから視察に来ていただくのは、「すくすくスクール」ですね。現在、江戸川区には3万6000人の小学生がいますが、そのうちの7割弱、2万4000人がスクールに登録しています。
いわゆる(共働き家庭の子どもを放課後に預かる)学童保育では、小学校3年生までが対象でしたが、「すくすくスクール」には年齢や人数の制限がありません。希望すれば、誰でも入ることができます。この方式は全国で初めてですね。
――「全入」とは画期的です。多くの自治体には、共働き家庭の子どもを学童クラブで預かる仕組みがありますが、近年は激戦化し、入れない子どもも出ています。入れたとしても、狭い部屋に「すし詰め」になっていることも多いと聞きます。なぜ、それが可能なのですか?
希望者全員を受け入れますから、確かにものすごい人数を預かっています。でも、学校の施設全体を丸ごと使えるので大丈夫なんですよ。図書館でも体育館でも、運動場でもすべて使っていいのです。
ほかの地域では、学童クラブという施設に「隔離」するようなイメージでしょう。でも、それでは、子どもは自由に遊べない。(学童に入っていない)友達とも遊ぶことができません。
すくすくスクールは、学校の延長のようなイメージです。仲の良いクラスの友達と一緒に過ごすこともできるし、1年生から6年生までいるので、縦の人間関係を構築することもできます。
江戸川区では、これまで学童クラブを利用していた子どもも、すくすくスクールに合流してもらって、同じ過ごし方をしてもらっています。「学童クラブ登録」をしている子どもは、保護者のお迎えが来る夕方6時までお預かりしています。
*編集部注:すくすくスクールには2とおりの登録の仕方がある。「一般登録」(参加日や帰宅時間が自由。無料)と、「学童クラブ登録」(参加日や時間の管理などを保護者と連絡し合って進める。平日は午後6時まで預けることが可能。月4000円)。一般登録・学童クラブ登録ともに、保険料として年間500円の負担あり。
講師役を地域住民にお願いしたところ、希望者がたくさん出てくださった。それぞれの得意な分野、たとえば英語などの勉強から、お茶やお花、囲碁、将棋などの趣味に関することまで、幅広く教えてもらっています。スポーツを指導してもらうこともありますよ。子どもは学校での学習とはひと味違う、さまざまな体験ができます。
たくさんの講師のまとめ役として、各校にスクールマネージャー(すくすくスクールの校長先生のような役割)を置いています。彼らが講師を差配してくれるのです。ボランティアによるサポートの方や、学童クラブの先生をご経験された方など、講師は学校ごとに数十人います。150人ぐらいが講師として活動している学校もあります。
――それは手厚いですね。大人たった数人で、子ども数十人を任されているということもよく聞きますので。
講師には若い方もいますが、会社を退職された方や、子育てを終えた方など、比較的高齢者が多いのが特徴です。特に、お年寄りの講師の方は熱心です。「これがなければ、私の生きがいがない」「年齢を忘れるほど、自分も元気になる」と話す方もいるぐらいです。
最終更新:11月25日(月)8時0分
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