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京都もリニア誘致参戦…奈良ルート決定済みだが

 JR東海が計画するリニア中央新幹線の駅誘致に、京都府・市が躍起になっている。「奈良市付近」となっている現行ルートに対し、「京都の方が経済効果が高い」と変更を訴えるが、奈良側は「もう決まったこと」と取り合わず、むしろ県内の誘致合戦が過熱する。リニア誘致を巡る古都のさや当ての行方は――。

京都市営地下鉄の四条駅では、エスカレーターのベルトでリニア誘致をPRしている(京都市下京区で)=宇那木健一撮影

 「リニアを、京都へ。」「このままでは京都を通りません」

 買い物客や観光客らが行き交う京都市営地下鉄四条駅。21日から、府や市、府商工会議所連合会などでつくる協議会がエスカレーターに掲示した広告には、リニア誘致を呼びかけるキャッチフレーズが躍る。年末まで掲げられ、市バスの車体広告などでもPRする。

 国は2011年5月、災害時に東海道新幹線に代わる大動脈を確保する狙いから奈良ルートとする整備計画を決定。京都誘致を目指す同協議会は1990年の設立後、休眠状態だったが、東京―名古屋間が着工される14年度をタイムリミットとみて昨年、22年ぶりに活動を再開した。

 同協議会は「文化、芸術、宗教、伝統産業、観光の中心地の京都が国土軸から外れる」と主張。奈良ルートより建設費は2800億円高いが、経済効果は年間で40億円多い690億円と試算する。府と市は今年度、誘致活動費として計1000万円の予算も組んだ。

 山田啓二知事は「関西の観光のエースは京都。京都に来る客をどう他の地域に持って行くかだ」とし、門川大作市長も「京都だけのためではない。オール関西で機運を高めたい」と訴える。今後、奈良県が参加していない関西広域連合を通じ、国に要望する考えだ。

 強気の背景には「成功体験」がある。64年の東海道新幹線の開通前、京都駅をパスする当初ルートを市民や地元財界の猛反対で変更させ、全列車の京都停車を実現させた。

 リニア誘致でも、国やJRを動かすには地元の盛り上がりが不可欠とみて、京都市は▽15秒CMを映画館で上映▽うちわ1万枚を祇園祭などで配布――などを展開。先月28日には高台寺や西陣織工業組合などが「『リニアを、京都へ。』京の会」を発足させた。

 攻勢を強める京都だが、JR東海は「整備計画に基づいて着実に進める」と素っ気ない。JR関係者は「京都ルートに変えると、着工や完成時期が遅れる可能性がある」と漏らす。

 観光客や市民の反応は様々だ。群馬県館林市から訪れた自営業半田静江さん(60)は「交通網が整っている京都は旅の拠点として便利。奈良も好きだけど、断然、京都ルートに期待します」。一方、京都市伏見区の会社員福岡有加さん(28)は「京都ルートなんて、周りで話題になったこともない。市民の関心を高める努力が不十分」と辛口だ。
リニア中央新幹線 1973年に国が基本計画を決定し、主要な経過地を「甲府市付近」「名古屋市付近」「奈良市付近」と指定。2011年5月には整備計画に格上げされた。完成すれば東京から名古屋を40分、大阪を67分で結ぶ。東京―名古屋間は27年の開業を目指す。大阪延伸は45年の予定だが、関西の政財界が前倒しを求めている。

2013年11月25日  読売新聞)
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