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ラナの現在の寿命の問いがありましたが、現在までの表記で最短30年ですね。ただ、本文の中に、さらっとヒントが入っています。現在の寿命を知ると、ライト君が努力しなくなりそうなので、これからも知らないままにします。
42話  蒼と緑の大地
 公爵家の玄関を出て、待っているとテルミル君が出てくる。

 簡単な治療と、装備がフルプレートアーマーに、ハーフシールドが追加されてる。すっごく不満そうです。

 装備の防具もやっぱり魔法具でした。どんだけお金が掛かってるのか不安になりそうです。

 俺の戦闘スタイルでは考えられない装備です。俺はスピードと手数で戦うタイプなので、こんな重装備は基本しないし。
 今から向かう所は、こんな装備は紙同然だしね。

 公爵家のほとんどの人たちが、テルミル君の見送りに来てます。やっぱり、人格的には良い子なんだよね。使用人達にも好かれてるし。テルミル君の防具に、内緒で俺の魔力で防御力と魔法耐性を上げておく。

 さて挨拶も終わったらしいので、逝きましょう。そうテルミル君にとっては、ある意味逝くです。

 転移の瞬間、公爵家の人々を見ると、公爵様夫妻を筆頭に全員が頭を下げている。

 テルミル君次第だけど、多分何かを学んでくれると思う。

 転移の先は、魔の森最深部。

 最初の10日間は、とても話しにならなかった。テルミル君は、自分の力も、相手の強さも分からず突っ込んで行くので、その10日間で少なくても普通なら3桁の死亡回数行ってると思います。

 3日目辺りから、殺意が出てきて、寝ている時に俺を殺しにきたりしてたし。まあ、テルミル君は、少ない自分で採った木の実と水、俺は大きな魔物の肉と豊富な森の恵みで、常に腹いっぱいで、絶対にテルミル君にあげないし、テルミル君も下さいとは言わないし。そして魔物達に、毎日ぼこぼこにされて、原生林の歩きづらい森の中をフル装備で、くたくたになって歩き回り食事を探す日々。
 これは俺でも殺意が出るね。

 只、これはとても重要だと思う。今までの常識、意識、心など一旦白紙にしないと、なかなか新たな事がすんなり入っていかないし。

 夜のテルミル君の襲撃も7日目を過ぎるとなくなった。意識が変わっていったのか、俺が死んだら即自分が死ぬ事に気が付いたのか、テルミル君しか分からない。

 この日以降、テルミル君は俺の動きや、行動を良く観察している。

 そしてついに、10日目、テルミル君が2時間かけて1mほどの赤い8本足のトカゲを狩ることが出来た。

 この赤トカゲ、魔力量が結構多くて、尻尾の一撃はテルミル君では簡単に骨折するほどです。それに小さくても魔力量がある為、テルミル君の魔法剣が効きにくいし。

 不器用にトカゲの皮を剥ぎ、内臓を取り出し、薪を拾ってきて火にかけて、内臓は良く洗わせて刻んで、ホルモン焼きに。調理道具と塩は貸してあげる。

 泣きながらテルミル君は食べてました。よかったね。

 ちなみに、洗いが不十分なのか、夜中に腹痛になってました。内緒で回復魔法を掛けときました。

 15日目を過ぎると、テルミル君は良く話すようになっていた。狩も良く考え、観察していて狩れる獲物も増えてきている。

 ここは魔の森なので、5日ほどで1回ラナが見回り、龍の姿で上空を通過している。いつも密かに合図し合ってる。念話は常にしてるけどね。

 20日目になると、テルミル君は家から装備してきた防具を脱いで、自分が狩った獲物の素材で装備をしてるようになりました。これは俺が作ってあげる。

 25日目を過ぎると、テルミル君は完全に野生児になってました。俺のことは先生と呼んでくれてます。照れくさいし、年齢も俺が年下であるから、呼び捨てでも良いと言ってるけど、変わりませんでした。

 29日目、テルミル君の獲物は3mの青い猿人でした。ランクはCランク位の魔物です。

 てきぱきと皮を剥ぎ、内臓を取り出し直ぐに下処理して、肉を切り分け焼いていく。この頃は、臭み消しの薬草や、香味の野草、少し辛い葉っぱ等で下味まで付ける様になってます。モツの煮込みを作って昼ごはんでした。
 昼過ぎは、青猿の毛皮も装備に融合したり、取り付けたりして強化に費やしました。

 夕飯は俺の自宅にご招待です。

 事前にラナ達に連絡して有ったので、すごい料理にデザート、お酒です。山海の珍味に、迷宮の高階層の食材をふんだんに使用した料理の数々。
 皇族でも食べた事の無い料理だと思います。

 テルミル君が泣きながら、笑ってガツガツ食べてます。食いすぎで動けなくなりそうです。

 最初は、スケルトン達や、ミノちゃんズを警戒してましたが、最後の方では、一緒になって楽しそうに踊ってたし。すごく踊りが下手だった。

 1ヶ月ぶりのお風呂に入って、この日は俺の部屋でテルミル君は眠りに付いた。ぐっすりなので、俺は久しぶりに、妻達と激しい夜を過ごしました。愛おしさが溢れて、自制が効かずたっぷり注いで、また3人が気絶してしまった。いけない、いけない。反省。

 夜明け前に起き、テルミル君も起こす。

 さて最後の仕上げです。

 テルミル君も俺の魔力に包んで、飛翔する。

 有る程度、高度を取った所で、上空に向けて音速飛行をかいしする。時々光魔法の転移も混ぜて距離を稼ぐ。

 そして上空5万kmほどで滞空する。自分達の周りを厚い空気の層を作り魔力で補強している。

 そして日の出を迎える。テルミル君は声が出ず、驚きで目が見開かれている。

 「覚えておくと良い。君が住んでいる世界はこんなにも広い。そして、君が生活している場所、国はあの辺りでお肉の切れ端ぐらいしかない。住んでる都市は更に小さくて、分からないほど小さい。
 君はこれから貴族の世界で生きてくけど、ほんの少し目を外せばそこには、商人の世界や、庶民の世界、果ては魔物の世界など色々無数にある。
 どの世界も生き残る事は同じで、ただその手段が違うだけです。
 君が魔の森で生き残った様に。あそこで生き残れた君は、大概の事は大丈夫。」

 「・・・はい、・・・先生。」

 喜んでくれたのか、泣きながら返事が返ってくる。

 今度は首都に向けて飛んでいく。

 トスラト皇国首都上空2千km。

 「あの果物の種位の大きさの物が君が生活していた所。さあ、帰ろう。」

 そのまま、首都に、公爵家の庭に向けて飛んでいく。

 昨日の内に、商会を通じて到着の大体の時間は伝えてあったので、庭には家族と使用人達が出てテルミル君を出迎えてくれた。

 テルミル君は公爵夫妻と抱き合ってます。周りの使用人達も涙している人もいます。こんな言い方も変だけど、良い貴族に成れそうそうです。

 そうだ、テルミル君の魔法剣がぼろぼろなので、昨日の夜、久しぶりにテルミル君が狩った魔物を素材にして、黒ビーズの武器を作りました。
 ロングソードで剣腹に、赤トカゲの鱗付き皮をアクセントに融合させ、握りには青猿の皮を融合させて滑り止めにする。鞘には青猿の皮を外側に使い、内側は赤トカゲの皮で滑りを良くしてあります。

 テルミル君に近づき、ロングソードをあげる。魔法剣ほど綺麗じゃないけど、切れ味と耐久性は段違いに良い筈です。

 これまでテルミル君が狩った魔物の残りと、最初に装備していた装備品の全てを出して帰ることにします。

 「また、授業で逢えると良いね。」

 門を出て、見えなくなるまで全員が頭を下げていた。恥ずかしいからやめて。

 こうして、テルミル君育成計画?が終わりました。

 帰ってラナ達と思いっきり、イチャイチャしよう。30日分。
本編に出さないですが、裏情報として、最終的には、第2皇女様19歳はテルミル君18歳と結婚する予定です。


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