中国防空識別圏:韓国とも一部重なる

毎日新聞 2013年11月25日 10時24分(最終更新 11月25日 11時14分)

 【北京・石原聖】中国が23日に設定した防空識別圏は、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海に限定し、自国の領土と主張する台湾・南シナ海は含まなかった。一方で韓国の防空識別圏とも一部重なっており、圏域の意図をめぐりさまざまな見方が浮上している。

 台湾は中国の防空識別圏設定後に安全保障会議を開いて「遺憾」の意を表明した。台湾も尖閣諸島の領有権を主張し、台湾の防空識別圏と重複しているためだ。これについて中国メディアは「台湾との平和的統一を実現するために台湾そのものを含まなかった」との軍事専門家の見方を紹介し、防衛以外の事情を考慮したことをうかがわせた。

 防空識別圏は、圏内に航空機が入ってから識別が始まる。領空防護の必要性に発展すれば戦闘機の緊急発進(スクランブル)が行われるという運用が一般的なため、中国が尖閣に日本などの航空機を近づけさせないためには、この設定範囲では間に合わない可能性がある。このため、台湾メディアは「中国は領有権の主張をするために設定しただけで、実際に緊張を高める行動には出ないだろう」「当該地域での日本の行政管理権を認めないという姿勢を示すため」との複数の専門家の見方を伝えている。

 一方、南シナ海を含まない点については、中国が南シナ海のほぼ全域の領有を主張する根拠にしている「九段線」との関連性を指摘する意見がある。

 九段線は中国が地図の上に引いた九つの破線で、南シナ海の「主権・主権的権利が及ぶ範囲」に言及した2009年の国連宛ての口上書に添付している。だが、中国はそれぞれの破線の緯度経度という正確な位置を明らかにしていない。

 北京の外交当局者は「防空識別圏を設定すれば、領海・領空の起点はどこか、根拠はなにかを明示する必要性がある。明らかにすればフィリピンとの仲裁裁判に影響を及ぼす可能性がある。南シナ海には設定できなかったというのが実態ではないか」と指摘する。

 一方、韓国を含めた理由は不明だ。別の外交当局者は「韓国を含めずに線を引けたはず」といぶかしがり、「空軍の合理的な運用という観点から範囲を設定したようには見えない」と指摘。「これまで中国は攻撃されたら反撃すると言っていたが、識別圏を作り、自国の要求に従わない場合、先制攻撃もあり得るという強硬論に発展するかどうか見極める必要がある」と話している。

最新写真特集