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今回は、ライト商会のエルフの国総責任者と、龍人の国総責任者の2人にスポットを当ててみたいと思います。
31話  ライト様って
 -サイドー セミール

 私が初めて、ライト様にお会いしてから、6ヵ月経ちます。

 たった6ヵ月ですが、怒涛の様に流れた6ヶ月でした。

 最初に、ホテルの支配人をしている父から、この話を聞いたとき受けるかどうか正直悩みました。自分で商売もやっていたが、後進としてなかなか売り上げが伸びず、生活も何とか暮らしていってる状態でした。
 そんな時に、父が女性2人に男の子1人のお客様が、商会を立ち上げるのに人を募集しているとの話。あの厳格で厳しい父が、なぜか薦めてくる話。
 とりあえず会ってみる事にした。

 最初は、2人の女性に目を奪われた。エルフの線の細いしなやかな美しさではなく、内から滲み出す魔力と、健康な体の生命力、均整のとれた体の魅力と、光と闇のギャップの魅力、どれ一つとっても桁違いの魅力でした。

 ボーっとしながら、座って話し始めた時、自分の大きな勘違いに気付かされました。

 真ん中に居る、人間種の子供、多分成人するかしないか位の男の子で、髪と瞳が黒色で、光の加減で7色に光って見える、見たことの無い色の少年。ぱっと見、純朴そうな外見の少年と目が合ったとき、雷に打たれたように感じました。

 目の力が違う。

 此方の能力や、性格を正確に把握しようとする観察の眼差しなのに、不快感が全く無く、心の奥まで見透かされそうな瞳。少年のはずが、壮年の男性のような落ち着きはらった瞳。

 失礼ながら、最初この少年は、2人の女性のペットぐらいに感じていたが、全く違っていた。私なんかより、はるかに強大な力を持った2人の女性が、心からこの少年を慕い愛している。
 全く力を感じさせない、この少年が力が無い訳が無いのに。

 この瞬間に、この少年、ライト様の近くで何をするのか、何を成すのか見てみたいと言う欲求が膨れ上がってしまった。

 この後、契約を交わして仕事についてさらに驚くことになりました。

 ライト様は、最初の2ヶ月で、店舗14店、暴力組織の壊滅吸収、孤児達などの低所得者の新たな雇用、産業の立ち上げ、迷宮の完全攻略などを成しました。
 ありえません。

 店舗は従業員込みで雇用し、失業者を出さずに発展させ、暴力組織は新たな警備という組織を立ち上げ、成り立たせ、彩色の雇用で孤児達の仕事を生み、その全てを成功させる豊富な資金。

 そして何より、迷宮を完全攻略する超一流の冒険者としての実力。普通6人のチームで最高150階層前後の攻略を、単身で300階層まで攻略する戦闘力。
 私が商人なので、詳しく理解できなくとも、その異常なくらいの力はわかります。

 私が商人である為に分かることもあります。

 それが、商売のやり方の違い、商売の考え方の違いです。

 ライト様は上を相手にしていません。取引として相手はするのですが、見ておられるのは何時も従業員と、一般の庶民の方々です。市場を壊すような乱売は一切しないし、極端に儲けようとしない。いつでも市場の価格を気にして、庶民の生活を守られている感じを受けます。

 従業員たちも守られています。能力や力、特技など良いところを評価して、どんどん待遇を良くしてくれます。給料はもちろん、休暇で保養地が格安で使えたり、住む場所が良くなったり、階級が上がったりします。自立を考える人には、資金を貸し与えたり、必要な知識を教える制度を確立したりして、サポートしてくれます。

 この前市場で、元孤児の子達が将来ケーキ屋さんになりたいとか、冒険者になりたいとか、騎士になりたいとか夢を言い合っているのを見て、子供達が夢を語っているのがとてもうれしく感じました。

 もしかしたら、ライト様は新たな世界を作ろうとしているのかも知れません。

 努力が報われる、子供達が笑っていられる世界。

 この6ヵ月で、この首都の西地区の治安が劇的に変わってしまいました。夜でも子供や女性が1人で出歩ける街です。よその者が殺人を犯した以外は、泥棒や引ったくり、喧嘩に、傷害などの軽犯罪しか起こりません。

 最初に、ライト様とめぐり合えた奇跡に感謝します。

 今日は、この国首都の本店の工事が終了する日です。ライト様達も来られるはずですので、しっかり隅々まで見ていただこう。今ではライト商会が、この国でトップを張る商会になっているのだから。
 あの方に認めてもらうことが、この頃では一番の喜びに感じます。

 ライト様の近くで、この国が変わっていくのを、これからも見ていきたい。

 そう思う今日この頃であります。


 ーサイドー  トラミーズ

 初めてライト様と会ったのは、5ヶ月ほど前、エルフの国の首都にいる龍人たちの間で、人間種を連れた聖白龍様の話題が飛び交っていた時。

 この時私は、自分の商隊の将来について、悩んでいる時でした。定住の無い移動商人は、将来の見えない商売、寄る町や都市で、収入が大いに変動する。定住型の商人の隙間を縫って、日々の糧を得る商売。なかなか貯蓄までに行かない商売。

 そんな時に、話題の聖白龍様からお声が掛かったらしい。

 喜び勇んで向かい、2つ返事で了承していたわ。

 後で分かったのだけど、始めライト様は聖白龍様の手伝いをする、使徒か何かと思っていたのに、実際は全くの逆でした。

 全ての事業は、ライト様お一人でなさっていて、それを聖白龍様達がサポートしているようなのです。

 そしてやっている事は、今まで私がやっていた商売と全く別物の商売でした。物をなるべく高く販売する商売でなく、なるべく安く販売する商売。安全といった価値を売る商売、人を育てる商売。

 それらを学んで、いざ龍人の国にいくときの、転移の魔法もすごかった。何ヶ月も掛かる行程を一瞬で、龍人の国の首都まで飛んでしまう。とてつもない力の一端を見た気がしました。

 そしてライト商会として与えられた店舗が、とても大きな店舗で、ここからが目の廻る様な生活の始まりだったわ。

 大型の倉庫で、取り扱いの商品を目の前で、積み上げられ、店舗でその数々を価値と利用法を聞き、どんどん出される商品たちを、並べていく日々。そして直ぐ開店。

 はじめはそれほど忙しくなかったが数日で、近所の奥様や食堂の店主などから絶大な支持を受ける様になり、10日目には従業員の追加で50名の補充をお願いしてしまいました。

 お会いしてから5ヶ月で、商店1軒、食堂3軒、ケーキ屋2軒を立ち上げ、温泉センターはあと2ヶ月ほどで開店の見込みです。

 これだけの店舗を、個人の資金で現金で支払う資金力に驚きですわ。

 特に温泉センターと呼ばれる施設は、圧巻で、温泉や宿泊、酒場にレストラン、カジノにマッサージ等複合の大型施設になりそうです。魔法具や迷宮のアイテムをふんだんに使用していて、今までに無い施設になりそうです。すごいのは、この施設でさえ現金での支払いです。
 この前冗談で聞いてみて、その資金力に絶句してしまいました。大国の国家予算を軽く超えていました。
 ちなみに、これは現金の話で、ライト様の使用する闇の収納魔法の中に、現物の商品が何倍も入っているようです。

 私が受けた印象は、ライト様はその資金と物資を消費したいだけに感じるときがあります。

 そしてその消費の結果、更に資金が増えていっているという循環になっているのではないでしょうか。消費が、更なる資金になり、また消費に廻ると言う新しい循環です。それも市価よりもあえて下げるのです。故意に価値を下げて、大量の消費を誘い、更に利益が上がり、それを消費するという新しい価値のあり方がすごいです。

 ライト様ならではの、新たな価値観ですわ。

 この価値観は主婦や飲食店など、食に関わる人ほど支持しています。

 そして今、迷宮の高階層の魔法具や、武具の取り扱いも言い渡されました。

 この国の迷宮を一人で攻略したそうです。

 この方がなぜ、聖白龍様に愛されているのか、少し理解出来てきました。

 この後ライト商会はどうなって行くのでしょうか、先が今は楽しみです。

 知れば知るほど、ライト様の不思議が増えてる気がします。

 ではまたの機会に。
今回は閑話として、陽の目を見ないサブキャラに、目を向けてみました。いよいよ次回より、人間の国に行きます。


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