読売新聞(yorimo) 11月25日(月)18時5分配信
――あらためて、「女優・前田敦子」の魅力はどんなところだと思いますか?
山下監督:「苦役列車」の時もそうだったけれど、彼女は自分を「空っぽ」にして現場に来てくれるんです。変に自分で役を作り込んだり、勝手に役をアレンジしたりしない。僕がやって欲しいことを彼女は空っぽの中に詰め込んで、120%のものを見せてくれるんです。それは、監督のいいなりになる、という意味ではなくて、役者としてのセンスだと思う。監督としてすごく仕事がやりやすいし、なおかつ、僕の要求以上のものを見せてくれるから、今回もとても面白かった。おかげで、撮影現場も和気あいあいとした感じで、すごく楽しかったです。
――スクリーンからも、穏やかで、ゆったりとした雰囲気が伝わってきます。
山下監督:現場はもっとゆったりした感じだったんですよ。役者さんたちはどんな雰囲気だった?
前田さん:みんな、無に近かったです(笑)。いい意味で。
山下監督:今でもよく覚えているのは、ラストシーンです。夏にタマ子がアイスを食べるシーンだったんですが、甲府スポーツの前で、太陽が出るまで3時間ぐらい待ったんです。あの時のみんなのまったりさはすごかったね(笑)。
前田さん:すごかったです(笑)。
山下監督:寝ているやつはいるわ、向井は何かシナリオを書いているし、あっちゃんはその辺をフラフラ歩いている(笑)。案の定、ゆるゆるのラストになったけれど、タマ子がすがすがしくなっているんです。あれはよかったですね。
【略歴】
まえだ・あつこ 1991年7月10日、千葉県出身。2005年、AKB48結成時からのメンバー。12年8月卒業。「スワンの馬鹿!〜こづかい3万円の恋〜」(07年、KTV)でドラマデビュー、大河ドラマ「龍馬伝」(10年、NHK)などテレビドラマに出演。『あしたの私の作り方』(07年)で映画デビュー。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーの「マネジメント」を読んだら』(11年)で映画初主演、第35回日本アカデミー賞話題賞、第21回日本映画批評家大賞新人賞を受賞。山下敦弘監督とは第4回TAMA映画賞最優秀新進女優賞、第67回日本放送映画藝術大賞映画部門優秀助演女優賞・最優秀新人賞、第22回日本映画プロフェッショナル大賞主演女優賞を受賞した『苦役列車』(12年)につづくタッグ。本年は本作のほかに『クロユリ団地』に出演し、大ヒットを記録。
やました・のぶひろ 1976年8月29日愛知県生まれ。95年、大阪芸術大学映像学科に入学、熊切和嘉監督と出会い、『鬼畜大宴会』(97年)にスタッフとして参加。初の長編『どんてん生活』(99年)で、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター部門グランプリを受賞。長編2作目の『ばかのハコ船』(2002年)も各地の映画祭で絶賛される。初の35ミリ撮影による『リンダ リンダ リンダ』(05年)で女子高生バンドの青春を瑞々しく描いてロングランヒットを記録する。『松ヶ根乱射事件』(07年)に続き手がけた『天然コケッコー』(07年)は、第32回報知映画賞監督賞、第62回毎日映画コンクール日本映画優秀賞をはじめ数々の賞に輝いた。その後も妻夫木聡、松山ケンイチ出演『マイ・バック・ページ』(11年)、『苦役列車』(12年)を発表、国内外で高い評価を得ている。
読売新聞yorimo
最終更新:11月25日(月)18時5分
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