読売新聞(yorimo) 11月25日(月)18時5分配信
――長い時間をかけてタマ子を演じていると、前田さんの中でタマ子という存在がだんだん成長していくような感覚があったのでは?
前田さん:一度撮影が終わると、次の撮影は3か月後ぐらいになるので、「久しぶりだから、忘れていたらどうしよう」と思ったりはしたけれど、「タマ子が成長していく」という感覚はなかったですね。
山下監督:タマ子は成長していくような役柄ではないし、前田さんは、ドラマをはじめ、いろんな仕事をしているじゃないですか。僕としては、前田さんには忙しい仕事の合間を縫って、「タマ子」を演じてもらったという感覚で、その時々の前田さんの状態を生かして「タマ子」を作ったつもりなんです。例えば、衣装合わせの時に、前田さんの髪形の印象がちょっと変わったね、という話になったら、それを生かしたタマ子にしようと。四季それぞれの物語だから、タマ子のイメージが前後でつながらなくても構わないんです。「今の前田敦子がこうだから、タマ子をこんなふうに変えてみよう」みたいな感じで。タマ子というキャラクターを作り上げるために無理やりうそをつく必要がないから、僕たちにもストレスがない。そういったところも今までの映画作りとは違うし、ストレスのない感じが、この映画の空気感として表れているような気がしますね。
――タマ子と父親の善次の関係が印象的でした。会話は少ないけれど、善次は奔放な娘のことを優しく見守り、タマ子は不器用な父を思いやっています。前田さんは、この親子関係をどう思いますか?
前田さん:父と娘の関係って、あんな感じなんじゃないでしょうか。娘って、「お父さんのことは好きだけど、一線を画する」みたいなところはあるのかなと思うんです。「ここまではお父さんに話すけれど、これ以上は話す必要はない」とか。だから、演じていてもしっくりきました。
山下監督:善次が離婚をしているので、タマ子の家にはお母さんがいません。お父さんが半分お母さんみたいになっていて、炊事、洗濯、掃除も全部、お父さんがやっちゃう。だから、タマ子もああなっちゃう。タマ子が、善次の見合い相手の女性と二人きりで話をするシーンがあって、タマ子は「ダメな親父なんですよ」とぼやきつつ、「お父さんが全部やってくれちゃう」みたいなことを言うんです。「自分をダメにしているのはお父さんのせい」と思いたくなるタマ子の気持ち、僕にはよく分かります。もちろん、それはお父さんのことが嫌いというわけではなくて、タマ子の甘えでもあるけれど、その心理状態って、息子と母親の関係にもあるし、すごく普遍的なものだと思います。
最終更新:11月25日(月)18時5分
※Buzzは自動抽出された記事です。