読売新聞(yorimo) 11月25日(月)18時5分配信
前田敦子さん主演映画「もらとりあむタマ子」が公開中だ。東京の大学を卒業後、就職もせず、甲府にある実家に戻って自堕落な生活を送っていたタマ子が、1年の歳月を経て、新しい一歩をゆっくりと踏み出すハートウォーミングな物語。メガホンを取ったのは、「リンダ リンダ リンダ」「マイ・バック・ページ」などの作品が国内外で高く評価されている山下敦弘監督。昨年の「苦役列車」に続いてタッグを組んだ前田さんと山下監督に、撮影の舞台裏などについて話を聞いた。
――お二人が再びタッグを組んだ経緯を教えてください。
山下監督:今回の作品は元々、音楽チャンネル「MUSIC ON! TV(エムオン!)」のステーションIDという、チャンネルのイメージ映像のようなものを前田さんを起用して作る、という企画からスタートしました。ステーションIDの映像は1年間流れるので、それなら季節ごとにショートストーリーを作ろうと。僕は、AKB48の頃の前田さんをよく知らなくて、女優としても、普通の女子大生とか等身大の女の子とか、そういった「普通の役」を演じているイメージがなかったんです。前田さんとは「苦役列車」で知り合って、劇場公開された時には3回ほど一緒に舞台あいさつをさせてもらったのですが、前田さんは最後の方なんかもう、集中力がないんですよ(笑)。なんだかフワフワしていて、舞台のそででスカートを手でバサバサさせたりしている(笑)。でも、前田さんのそういう素の部分がすごく魅力的だったので、今回の企画でも「普通の前田さんを見てみたい」という気持ちが第1にあったんです。タマ子のグータラな部分は、あくまで僕の趣味です(笑)。
前田さん:「苦役列車」の舞台あいさつの合間に、山下監督から直接、今回のお話をいただきました。大好きな監督の作品にまた出演できるというだけでうれしかったので、すぐに「やりたいです」って答えました。
――前田さんの演じたタマ子は、食べて寝て、マンガを読んで……というダラダラした毎日を送っているという設定ですが、前田さん自身には、ダラダラした部分はありますか?
前田さん:私のことをよく知っている人がタマ子を見ると、食べ方とかが結構そのままみたいですね(笑)。自分でこの作品を観た時に、ふだんの自分の姿を大勢の人に見られている感じがして恥ずかしかったです(笑)。
――この作品の舞台は、タマ子の実家であるスポーツ用品店「甲府スポーツ」を中心とした狭いエリアで、そこで何か大きな事件が起きるわけでもありません。長編映画として完成させるのは、演出上の苦労も多かったのでは?
山下監督:最初に、甲府スポーツの部屋の中だけで、ステーションIDの「秋編」と「冬編」を撮影したんですが、なぜ部屋の中だけかと言うと、スケジュール的に、他に移動して撮影する時間がなかったから(笑)。それなら、この部屋を中心に、父と娘の物語をじっくり描こうと。そして、「春編」を撮るぐらいの頃に、「映画にしてみようか」という話になってきたんです。そうは言っても、はじめから映画を作るつもりだったわけじゃないので、ストーリーに伏線は張っていないし、撮影済みの「秋編」「冬編」では、タマ子はずっと家の中にいる。このままでは映画にするだけの尺(長さ)が足りない。脚本の向井(康介)と「この後、どうしようか?」と頭を悩ませながらストーリーを考えていきました。結果として、「夏編」が長くなって、最後にタマ子が「ちょっと一歩を踏み出す」という話になりました。今は「本当に映画になっちゃったな」という、すごく不思議な感じなんです。
前田さん:私もいまだにすごく不思議です。なんでこうやって映画の取材を受けているんだろうって(笑)。
山下監督:僕としては、季節が巡ったらまたみんなが甲府に集まって撮影できる、ぐらいの感じでしたから。すごくスケールが小さい「北の国から」みたいなイメージだったんです(笑)。もちろん、「北の国から」の現場とは全然違いますが、キャストやスタッフが甲府スポーツに集まると、独特の空気感がありましたね。映画作りの現場の緊張感とはちょっと違う。みんなが「タマ子」という作品を作ることを楽しんでいるような空気が感じられました。
最終更新:11月25日(月)18時5分
※Buzzは自動抽出された記事です。