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ライトに手も足も出なかった、龍達はこの後どうなっていくのか、描いてみます。
14話  龍達の未来
 ラナ母さんが助かってから、早2日。

 今日は、一人で家から南西500kmほどに有る、魔の森と言われている小さめな国家の国土ほど有る森に来ています。
 この森は、長いところでは直径千km有り、100m級の木々が生え、地表は昼間でも薄暗くなっている場所も多い。なにより、正面からやり合うとかなり手こずる、強い魔物がいっぱいいる。

 ここに来たのは、この前お世話になった龍の里の長老エドラムイさんに、お礼の差し入れをする為、狩りにきました。

 探知の魔法で獲物を探す。

 いた!

 始めに見つけたのは、頭が2つ、足が6本、甲羅までの高さ12mほどの陸ガメが5匹です。

 まずは、体に気を巡らし、黒椿に5mの炎の刃、黒桜に5mの氷の刃を出現させ、上空から接近。魔力を切り、落下しながら2匹4つの首を刈り取る。刈り取った亀の甲羅に着地し、ジャンプ。もう2匹に向かいさらに4つの首を刈り取る。最後の1匹が、こちらに突進の体制に入ったので、光の魔法で牽制。のけぞった所を、首下に入り込み両刃で各1つずつ刺し貫いてバックステップ。闇に回収して、終了。

 つぎは、サメに似た頭の牛の群れ20体、大きいものは10mほどある。

 これは簡単でした。上空から接近し、群れの中心に着地し、地面に魔力を流す。黒セラミックで巨体を押さえ込み、黒椿と黒桜を頭に刺していくだけ。これも闇に回収。

 帰り際に大物を発見!

 4枚の翼の鳥、なぜか鶏に似ている。ただとても大きい。体長30m、広げた翼の端から端まで50m以上あるそれが飛んでいた。

 ここまででかいと体術云々はまったく意味が無いので、新しい方法を試してみる。見える範囲のショート転移です。まずは両手に白い炎の槍を出し、転移の魔法で鳥の頭の真上に出現。炎の槍を頭に射出し転移で離脱。見ると頭を吹き飛ばされて、落下していた。もう1度転移し、闇に回収。下を確認すると直径50mほどのクレーターが出来、周りの木が炎上していた。急いで水魔法で消火して終了。

 さてと、これくらいでいいかな。

 転移で龍の里に飛ぶ。

 龍の里中央の盆地に転移した。

 9体の子龍とそれを見守る3体の龍、空には数体の龍が行きかっている。1体の親龍が俺に気付く。一気に里の中が騒然としていく。

 気にせず、黒龍のエドラムイさんを呼ぶ。

 すぐに飛んで来たので先日の礼を言う。

『先日は、ありがたい意見をありがとうございます。母ラナイアウェルは命をとり止めました。今は、前以上に元気になりました。』

『なんの、なんの、それはライト殿の母を思う気持ちが実ったもの、我はほんの少し口を出したに過ぎん。』

『それでも大いに助かったことに違いはありません。今日は、そのお礼に来ました。』

 周りで警戒している龍達をどけて、先ほど狩った魔物を出していく。

 大きい鳥を出した時は、さすがに龍達が固まっていた。

 大きい鳥の首肉と、亀の足一本と、牛?1頭は、俺と長老で食べる分であとは好きに分ける様に言っておく。

 盆地の隅に移動して、黒セラミックでかまどと鉄板を造り火にかける。鳥の首肉は塩と香草で焼き鳥に、亀足は醤油と唐辛子蜂蜜でなんちゃって蒲焼、牛?は半割りで火にかけ醤油と胡椒で丸焼きに、内臓はにんにくとバターと醤油でホルモン焼きにして長老と食べる。最初はおっかなびっくり食べていたが、旨いと分かるとばくばくたべていた。
 ついでに、果実酒も10樽ほど持ってきたので一緒に飲む。飲みながら話を再開する。

『以前、母さんに龍の話を聞いたことがあります。母さんは歴史の話のつもりで、話してくれたようですが、俺には龍の滅びの話に感じられました。』

『ほう、なぜかな?』

『はい、先に聞いておきたいのですが、オスとメスの対比は今どれくらいですか?』

『うむ・・・3対5ぐらいかのう』

『・・・やっぱり。』

 1.5mほどの子龍が、匂いに誘われてジーっとこちらを見ていたので、長老に断わり、牛肉を切り分けてあげる。うれしそうに母龍の元に走っていくのが見えた。

『信じる、信じないは、長老にまかせます。今から話す事は、俺にとっては真実です。俺の魂は、異世界から来ていて、向こうで生きた20年の記憶を持って転生しています。』

『にわかには、信じられない話じゃの。』

 今度は、他の子龍がこちらを見ていたので、今度も長老に断わり切り分けてあげた。

『俺のいた世界は、神も、精霊も、魔物も、亜人も、龍達すら居ない、人と獣の世界で魔法も、魔力も無い世界でした。』

 今度は、子龍と一部の親龍も居ました。牛肉半分とホルモン半分を上げた。

『そんな世界ですから、人間は何万年の年月をかけ、少しずつ進化し、成長し、自然から学び、世界を理解し、道具を作りました。俺が死んだ時の時代は、世界中の人がいつでも話しが出来る道具や、この大陸なら端から端まで飛ぶのに4時間で飛ぶ道具や、馬車の何百倍の荷物を一度に運ぶ道具や、海の中を自由に動く道具、空のもっと上の星の世界に行く道具まで作っていました。』

 さっきの子龍と親龍が、俺と長老の周りに集まって来ている。何だろうと思い一番近くにいた、子龍に聞いてみると一緒にお話が聞きたいそうだ。長老に確認しするとかまわないと言うことなので、一緒に話してあげる。

『そんな便利なものを造れる人間ですが、貴方達が言っていたように、おろかで、欲の深い種に変わりなく、人間同士の争いや、人間の国同士の戦争があり、自然を壊してまで種を拡大していきました。最終的には、自分たち人間を含む生物全てを何百回滅ぼせるほどの道具まで作ってしまいました。』

 いつの間にか、全ての龍たちが思い思いの姿勢できいていました。

『そんな世界の知識が在ったので分かるのですが、向こうでは、人間の繁栄の陰で何万という種が滅んでいきました。その種たちは、だいたいが変わっていく環境の変化についていけないか、変化を拒んだ種で、ほとんどの種が末期になるとメスの比率が異常に上がります。種としての防衛本能で、子供を生めるメスを増やそうと自動で行います。その反対もあります。
 向こうの世界のお話で、最後の1匹になった亀の話を聞いたことがあります。世界のどこを探しても同族が1匹もいない亀の話。ただ死ぬまで、食って寝てをを何十年も繰り返し、子も残さず死んで行くのを待つだけの悲しい命の話。とても心が締め付けられるように悲しかったのを覚えています。』

 龍達が全員一言も喋らないで聞いています。

『異世界の記憶を持っている俺が、この世界を知った時思ったことは、基本元の世界も弱肉強食ですが、とても優しく暖かい世界という印象です。この世界は事象を司る神々がいて管理し、導いてくれ、精霊たちが自然を管理してくれる。ある意味守られた世界だと感じたからです。』

 長老の目を静かに見つめて続ける。

『そんな世界で、数が減って行ってる種族って、神々に今までは、数が多すぎるか、いらないと思われている可能性が高いと思いませんか?』

 周りがざわめく。

『別に神々に聞いたわけでもないし、この世界を全て知っている訳けでもないから、間違っているかも知れない。』

 果実酒を少し口に含む。

『龍という種はこの山脈という小さな世界にこもって、変化を拒んで滅んで行こうとしている。なら神々の尺度で測れば、変化の無い停滞はこの世界の滅亡で、変化を起こせる存在を神々は必要としていると想像できる。
 今の大陸の人口の多い順に、生活や、環境が変わった順になっているとおもいませんか?』

 もう1口果実酒を含む。

『貴方達はこの前、人間風情ガといっていた。そう、人間のような弱い存在の中からすら、貴方達龍の存在に対抗し、勝てる固体が出ているのに、それを知らなかった。
 人間は弱いし、欲が深いから、知識を蓄え、トレーニングして基礎体力を少しでも上げて、道具を作り、技を考え少しでも強くなろうとする。
 弱いと人間の中ですら、生き残れないから。
 人間は弱いとしか知らない貴方達は、すぐに殺せと言っていた。龍達の里に1人で来た人間が勝算も無く、対抗手段も無く、相手も知らずに来ると思いますか。この里全ての龍を殺すのに多くても10分かかりません。
 知らない貴方達は、この前滅びの一歩手前にまで行ったんです。』

 息を吸う。

『まずは、知ることから始めたらどうだろう。自分たちのことを知り、固体ごとの特性や個性を知る。次に、この住んでいる場所の山脈の生き物や植物鉱物を知る。その次に龍人や獣人のことを知る。
 そうやって少しずつ自分たちの住む世界を広げていったらどうだろう。
 他種族との違いを理解して交流すれば、龍にとってさほど価値の無いものが、相手にとって価値があると分かるかもしれない。そういった交流の中で、龍にとって必要な知識や技、道具や武具など手に入れていけば、龍はもっと強くなる。
 俺が龍より強くなったなら、同じことをする龍は神に匹敵する力を持つ可能性が有ると思うけど、どうだろう?』

 周りの龍達が思い思いに話し始める。

『今まで話したことは、俺が母さんから龍について聞いた時、思ったり感じたりした事を話しただけで、間違っているかもしれない。ただ言えるのは、この子供たちの未来は、この里で過ごすより、輝いて生きいきしている事だけは確かだと思う。
 俺のいた世界の最後の亀に、貴方達の子や孫がならなければ良いと思う。
 みんなで考え、話してみるのも良いかもね。』

 話を終えて、長老にもう1つのプレゼントを渡す。

 黒ビー玉から造った10mの槍で、【貫通強化】、【強度増加】をかけてある。

 亀の甲羅を黒椿で4分割にして岩に重ねて立てかける。そこに力の強い龍に攻撃してもらう。一枚目の甲羅に爪あとが付く。今度は槍を持ってもらい甲羅を突いてもらう。破砕音と共に後ろの岩まで貫通していた。

 それを長老さんに好きに使ってと渡して帰ることにした。

『あ!そうだ。母さんの名誉の為に言っておきます。ラナイアウェルは聖獣にランクアップしました。』

 と言うと、今日一番のどよめきが起こる。

『そ、それは、ほんとうですか。』

『はい。こんな事でうそを言ってもしょうがないし、本人が了承すれば連れて来ましょうか?』

 何か長老さんが考えこんでいる。何だろう?まあいいか。帰ろう。

『お待ち下され。もし良ければ、母君にお会いして謝罪をしたい。それと良ければライト殿には、もっと里の者に色々な話をしてもらいたいのですが、いかがじゃろう?』

 なにを思ったのかこんな事を言ってきた。

『分かりました。帰って話し、本人が良ければ明日にでも伺います。』

 そう言って転移で帰りました。

 結果で言うと、翌日母さんと里に行きました。その後、2ヶ月間は龍の里の勉強会の先生みたいな事をさせられました。

 2ヶ月間、母さんとアマリリスは、一番後ろの位置でお茶をしながら爆笑していました。



 
戦闘シーンですが、基本食料調達なので、丸焦げや、爆発、消滅系の攻撃が出来ないので、地味に奇襲が多くなっています。


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