8話 胡椒がほしい
いつも夜になると、光の玉を浮かべて取り留めの無い話をしながらのんびりしています。ふと話しながら、最近気付いたことがある。
死についてである。
いつも食事の為、生きて行く為、生き物(魔物など)をしとめて、血を抜き皮を剥ぎ内臓を取り、そしておいしくいただく。この世界には経験値と生命力の吸収がある為、自然と弱肉強食の意識が身に付く。弱い生き物は強い生き物の血肉になり、強い生き物はさらに強い生き物の血肉になり、そして寿命で死亡して自然に返る。だからいつかは、俺より強い魔物に殺されるときも来るかもしれない。
ま、そうならない様に、何時でも後悔しないように鍛錬や練習、実践を積み重ねていく。そして今では、殺すという行為にあまり忌避感は無い。殺すにも、殺されるにも、共感できるかは別にして、理由が有ると思うから。
前世も入れて、早27年、こちらの世界で8年間生きて、この世界に馴染んできたんだとしみじみ思う。
塩を取りにいってから1ヶ月、今は帰り際に闇に海水を取り込んだ分を使って自宅で塩を作っています。この1ヶ月で、30トンほど塩ブロックを作りました。雑貨屋さんでの販売も順調で、近隣の村や、町にまで塩が安価で出ています。『白龍の塩』でブランド化されてたのは笑えた。
味付き食事にはまってる、ラナ母さんは基本肉食、今の塩、香草、バター、蜂蜜、果物ではパターンがどうしても限られてしまう。豆と塩で醤油にチャレンジしているがまだ成功していない。
香辛料が、特に胡椒がほしい。
という事で、長老さんに聞いてみると、大陸の南方にラトナ商国という商業と貿易の国があり、そこでは大陸のもので揃わない物は無いとのこと。そこならいろいろ欲しい物が揃いそうである。
ただ距離が6千km、首都ならさらに1千km距離がある。今の飛行速度では時間が掛かりすぎる為、トレーニングをする。
目指すのは、ジェット飛行で音速が出れば、片道6・7時間で行ける。魔力で流線型に体を包み、雲の上に出る。さてイメージ開始。筒を作り、前方から風を吸引させ白い炎を発生させ、後方に噴射させ、内圧を上げていく。
キュイイイーーーーーーーーーーーー。
速度がどんどん加速されそして、
ドウウン!!!!!
音の壁を突破した!
眼下の雲がものすごいスピードで流れている。雲の切れ間に山、森、草原、町・・いろいろなものが流れていく。音を置き去りにして無音の中で感動した。
人1人の純粋な力だけで、音速の壁を超えられるこの世界、すごすぎる。
ちょっと大変なのは、魔力の消費が半端無い。飛行に入ると、筒、吸引、白炎、圧力の4つの魔法を同時に使用してるので、ゴリゴリ魔力が減っていく。このままでは、3時間ほどが限界そうだ。
転移して家に戻り、ラナ母さんに言って、2日ほど外出することにしました。母さんはかなりぐずったが、飛ぶスピードが違う事と、人間の国に行くこと、燻製魚と肉の管理があるので納得してもらった。さて、明日は出発です。
日も昇ったので出発です。
南に向かって飛行しながら、上昇していく。十分に高度を取り上昇してから水平飛行にきりかえ、音速飛行に切り替える。これからは、普通の飛行と、音速の飛行を切り替えながらラトナ商国を目指すことになる。
2度目の音速を終えた時、母さんと同じ位の魔力を感知した。殺気は無いが、警戒している気配がするので、速度を落とし、近づくのを待ってみる。近づいてきたのは緑色の龍でした。
警戒させたままなのも、なんなので話しかけてみる。
『あの、エルフの国に住む白龍、ラナイアウェルの義理の息子のライトといいます。あなたは?』
『ア・・アア!私は風龍で、フィオドルという。あまりにも、早いスピードで飛んでいるものがあったので、つい好奇心で調べに来たんだが・・・人間とは思わなかった。』
近づいてきたのは、風龍でした。しばらく飛びながら情報交換しました。それによると、フィオドルさんは季節ごとに移動して渡りをしている事、龍人の国と獣人の国の間に龍たちの大きな集落がある事など話て別れました。向かってる方向が違うしね。
夕方になりそろそろ、野宿の場所を探すことにする。下降しながら飛行していると、街道が遠くに見えたので、そちらに向かって飛んでみる。たぶん、ここらはラトナに入っていると思う。なにしろ俺、国境関係無しに飛んでるし。
ここらで降りようとしたとき、遠くで追われている馬車を発見した。
急いで近づくと。しっかりした造りの馬車と護衛?が20人弱、それを追ってる50人ほどの、馬に乗った装備がばらばら、髪はぼさぼさ、近寄ると臭ってきそうないかにも、盗賊風集団。空から見ると良く分かるが前方にたぶん、待ち伏せの人の気配と人影発見!
『馬車と護衛のみなさん!空から雷で援護します。敵の足が止まったら、その場に停止して下さい。前方に待伏せされてます!!』
一応、馬車の集団にだけ念話で断わりを入れて、後ろの集団に魔法を放つ。
「<麻痺天雷>!!」
ドガガガガガガーーーーン!!!!
盗賊風の集団に麻痺の雷を念入りに叩き込み、馬もろとも麻痺させて、そのまま馬車を飛びながら追い抜く。そして前方集団にも、
「<麻痺天雷>!!」
ドガガガガガガーーーーン!!!!
こいつら、空は無警戒なので面白いように当たるし、気配や魔力を察知できるので、逃げようとしても全部分かるしで、取りこぼし無く痺れさせました。後方50名、前方70名、馬50頭程いたので前方の70名は魔力で浮かべて馬車の所まで運びました。
馬車に近づくと、馬車から厳つい壮年の男性とたぶんその奥さんが降りてきてお礼をいわれてしまった。困った時は、お互い様ということにして、ここでの野宿を提案してみた。快く了承してくれたので、まずは、聞いてみる。
「こいつら、どうなんの?」
主犯格は、処刑されその他は奴隷にされ一生こき使われるそうです。自業自得。馬がかわいそうなので、回復してあげて最初に回収したけど、50頭って結構な数だ。ここで、ちょっとした質問と提案をしてみた。なんだか馬車の人たちと護衛さん達が、感謝しながら警戒しているっぽいから。
まずは、この盗賊の懸賞金500万C、馬の販売価格250万Cとのこと。
「馬車の人たち商人なので馬を差し上げて、盗賊の懸賞金は護衛の人たちで山分け臨時ボーナス!」
いきなり歓声が上がり、全員がフレンドリーになった。大人ってゲンキン・・。
それからは順調で、まずは首領を探し拷問。アジトを聞き出し、5人引き連れアジトに到着。護衛5人に周りの警戒をしてもらって、単身突入。雷で残りの盗賊5人を麻痺させながらお宝回収。現金1200万C(後で数えた)、武具、食料、貴金属、宝石など闇に回収。
ここで少しアクシデント。さらわれた女性が7人、奥の牢屋にいた。ついでに助けた。荷馬車が1つあったので、それに女性達と拘束した盗賊の残りを乗せてもどりました。
戻ると盗賊全部が一箇所にまとまっていたので、残りも一緒にして土魔法でまわりを囲んで天井をつけました。空気穴はついている。
さて、ひと段落したので野営の準備。みんな、何人かのグループになって準備しようとしていたので、さらわれていた女性達に手伝ってもらって、大鍋料理開始。
魔法で水を半分入れ、火にかけ昆布を入れる。葉野菜を刻んでもらい、芋を皮を剝いて大きめに切って鍋に入れる。沸騰前に昆布をだして、塩を入れる、あくをすくって、食べれる茸をいれ、盗賊から回収した乾燥肉を刻んで入れ、ワインみたいな酒があったので3Lほど入れて少し煮込む。味をみて蜂蜜と、塩であじを調えて、火を止め香草の刻みを散らして出来あがり。前に取ったたこの足一本だして鉄板にバターをひき、炒めてワイン?でフランベして蒸らし塩と香草で味を調え刻んでいく。使ったワインは、樽で殆んど残ったのでそのまま飲んでもらう事に。
木の器を出して女性達に盛ってやり、木の枝で串を作り蛸を刺してかじってもらう。黒セラミックでコップを作り、黒桜の氷機能で冷やしたワインも勧める。
ワイワイ食事を食べてると、馬車の人たちが珍しそうに寄ってきたのでいっぱいあるのでどうぞとすすめた。護衛さん達もちらちら見ていたので、こちらにも声をかけ、結局全員で食って飲んで話した。
鍋はもう1回、蛸3回、ワイン?1樽追加した。
いろいろ話した。馬車の人たちはここから1日進んだ商国の第2の都市エキナの商人で、一二を争うほどの大商人だそうです。都市に入るのに身分証がいるようでしたが、商人さんが紹介状を書いてくれるようです。ついでに、盗賊から回収した武具や食料など半値以下で買い取ってもらい、その代わり女性達の面倒をお願いした。
話していると、欲しい物が殆んど揃いそうなので明日は首都ではなく、エキナに行こうと思う。
ラナ母さんに今日の出来事を話し終え寝ることにします。
おやすみなさい。
やっぱり、1話で終わりそうに有りませんので、半分にしました。次回は、食料品関係です。
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