ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
初投稿作品です。文章も構成も拙いですが、少しずつ更新していきます。暖かい目で見守ってください。
0話 奇跡の原点
(ちっくしょ~、なんてついていないんだ。ゆっくり寝てられると思ったのに・・)

 高卒で何とか就職して早9か月、初の6日間の長期休暇だっていうのに朝3時に起こされて無理やり家族旅行の運転手にされた。
 世の中不景気で、とりあえず入った会社は朝は9時から、夜は10時まで毎日残業(もちろんサービス残業)、まともに取れた休日が9か月でたったの3日、若くなければ過労死するぞ!って位の悪条件。昨日も今年最後だからって夜11時まで仕事って何だよ。

 横でおやじが、イビキをかいて寝ていて、後部座席で母親と妹が2人でコックら船を漕いでいる。
 行先は長野のスキー場にあるペンションまでの6時間チョイ。
 残りまだ2時間は有りそうな中、雪道を快調に飛ばすと、空がやっと明けてきたくらい。
 連れと一緒に行った時より、状況が悪い。友達なら眠くならない様に、話しかけてくれたり、音楽をかけたり、運転を代わってもらったりといろいろ出来る。
 でも家族だと、序列がはっきりしていて、そんな気遣いなんて、一切無い。

(ダリ~、さっきから5分しか経っていねー!コーヒーでも飲むかな・・。)
 左前方にあるコンビニの看板が視界に入る。缶コーヒーでも買おうと左にハンドル切った時、それが起こった。

 キキキーードゴオン!ズガガガーーー

 はっと音が聞こえた方を見ると、対向車線から、トレーラーが横転し、雪道を滑ってくるのが見えた。
 そして、ドオウン!!という音と衝撃と共に意識が暗転した・・・。



「・・ウゥ!・・・・どうし・・た?」
 目が覚めると、辺りは油と煙の臭いでむせ返るほどの酷さ。車内を見れば、両親と妹がうめき声を出している。

(・・トレーラーが滑ってきて・・ぶつかって・・事故・・!)

 はっと、トレーラーを振り返るとエンジンから大量の煙が噴き出してきている。こちらの車はエンジンルームが、ぐちゃぐちゃに潰れ、フロントガラスが無くなっていた。
 幸いエアバックが効いて、家族はとりあえず無事そうだ。

(助けないと・・。)
 少し歪んだドアを開けて外に出ると、足の下に油が流れ出ていて広がっている。トレーラーから噴き出る煙がどんどん増えてきている。

 ボフンーー!
(ヤベエ!トレーラーのエンジンから、火が出やがった!早くおやじ達を助けなきゃ!!)

 ソッコーで反対側に回り込み、おやじと母親の順に離れた雪の上に横たえる。最後に妹を引きずりだしておやじ達の横へそっと下した時、今までで1番大きな音と衝撃が来た。

 ドガガガアーーーーン!!!!

 衝撃で、5メートルほど飛ばされて、駐車場の壁でとまった。すぐに起きようとするが、動かない。

(あれ?立てない?・・耳鳴りスゲー・・右目が暗い?・・右胸とお腹が重い?・・あれ?力が入らない?・・あれ?)
 軽くパニックになる。

 軽く深呼吸をして落ち着くと、首と目を動かして確認していく。

 目をそっと足に向けると、右足が直角に右に曲がっていて内腿から白い棒が出ていた。左足はひざから下が無かった。右腕は反対に曲がって手のひらがぐしゃぐしゃだった。左腕は体の下に回り込んでいて見えなかった。胸と腹から金属の棒と板が生えていた。なんか喉に詰まったので、咳をしたらスゲー血が飛び散った。
「ゴフゥ!!」

(あれ?・・寒くなってくる・・力が抜けて・・来る?・・眠い?・・・・・・・・ああ・・死ぬのか?)

 なんとなく自分が死ぬことが分かる。体の奥からジワリと黒い染みがひろっがて行く様な感じがある。
 これが死期を悟るってことかもしれない。

 ゆっくり瞼が落ちていくとき、おやじに抱えられてる妹と、その後ろの母親の姿が見えた気がした。

(よかった・・)

(・・・・まだ・・やりたい・・こと・・いっぱ・・・い・・・・死に・・・たく・・・・な・・・・・い・・・・・・な・・・・・・・・・・・・・)



 そして光輝く、暖かな闇の中へ包まれる様に静かに沈んでいった・・・・・・。

 鈴木敏夫 享年19歳、あまりにも早い人生にその幕が引かれていった。







あまり残酷にならないように、淡々と描いたつのりです。最後のほうは脳内アドレナリンで痛みを感じていない状態を描いてみなした。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。