日韓関係 会ってこそ信頼も築ける
身の回りの人間関係に例えて考えてみよう。相手から面と向かって「あなたのこういうところが悪い」と言われるのは確かに面白くないが、弁解も反論もできる。
直接話せば、誤解が解けることもある。しかし、相手が第三者に対して自分の批判をしていることを知るのは、また違う不快感がある。「どうして直接言わないんだ」と思いたくもなる。
韓国の朴槿恵(パククネ)大統領が、日本に対する批判を続けている。
朴大統領は9月、ヘーゲル米国防長官との会談で「歴史、領土問題で後退した発言を繰り返す日本指導部のせいで、信頼関係ができずにいる」と語った。
11月には英放送局のインタビューで従軍慰安婦問題に触れ「日本の一部の指導者は元慰安婦を侮辱し続けている」と述べた。さらにロシアのプーチン大統領と会談し、日本を念頭に「歴史に逆行する言動が国家間協力を妨げている」との趣旨の共同声明を出した。
こうした朴大統領の姿勢を反映し、朴政権が2月にスタートして以来、日韓首脳会談は一度も開かれていない。安倍晋三首相ら日本側は「対話のドアは開いている」と会談を呼び掛けているが、「会談しても得られるものはない」というのが朴大統領の言い分だ。
安倍政権の発足当初は、村山談話の見直しを示唆するなど、韓国側の不信を呼ぶ言動もあった。しかしその後、安倍首相は靖国神社参拝を見送り、発言もかなり慎重になっている。朴大統領がなぜここまでかたくなな態度なのか、日本側は首をかしげている。
最近では韓国のメディアからも、朴大統領の「会談拒否」を疑問視する声が上がるほどだ。
朴大統領は、まず安倍首相と会って、歴史認識や領土に関わる首相の考えを直接聞いてはどうか。もちろん認識の差は容易には埋まらないだろうが、その上で日韓関係を前向きにコントロールする方策を探ることは可能だろう。
「信頼関係がないから会わない」でなく、「会って信頼関係をつくる」という発想もあるはずだ。
=2013/11/25付 西日本新聞朝刊=