皆さん。機会は大事にしましょうw
マウス新しいの買ってきましたw
さて、第2章ですねw
妹襲来
ライザ国首都、レクス。
その大通りから、裏路地に少し入った所に、ギルド。『大空の翼』はある。
朝日が街を照らし、街が活気づいてきた現在。
そのドアの前に、一人の少女が立っていた。
「ここだよね……」
手にしたメモを握り締め、小さく呟くその少女。
その格好は、平民のそれと変わらないが、ツヤツヤと煌めく黒髪や、その美貌。そしてその雰囲気が、貴族である事を物語る。
少女としては平民に化けたつもりであるが、それは失敗に終わっていることを、少女はまだ、知らない。
そんな少女が、古びたドアの前に立っているものだから、裏路地の人間たちは、なんだなんだと視線を寄せている。
それにも気づかず、少女はすうと大きく息を吸うと。
「お兄ちゃん。今……会いにいくよ」
小さいが、力強く呟いて、ドアノブを掴んだ。
その少女の名は、クレア・レ・イアモンド。
現在、世界中が探している勇者。ルーク・ド・グラムランドの妹である。
◇
戦士ギルド、大空の翼。
その2階にある、ロビーすべてが見渡せるいつもの特等席で、俺は……
「なあ~。そろそろ機嫌直してくれよ~」
「ふん!バカっ!シンなんて知らない!」
「そう言わずにさ~」
「へんだ!バーカバーカ!」
サラサラとした金の髪と、エメラルドグリーンの目を持つ女の子の機嫌を取ろうと、頑張っていた。
顔をぷいと背けて、プンプン怒る彼女も可愛いのだが、俺的にはいつもの笑顔で「シン~!」なんて言って欲しい。
まあ、こうなった理由は俺のせいな訳で、自業自得ではあるのだが……
「私であんな物切ったり、昨日一緒に寝てくれなかったどころか、カーラと寝るシンなんて知らないもん!」
と、言うわけである。そのせいで朝からいろいろ大変でした。いや、結構マジで。修羅場って初めて見たというか、体験したよ。
ていうかティアは、本当に感情が豊かになっていると思う。
ちょっと前は嬉しそうに笑うか、何かあったり、俺の傍からちょっと離れただけで大泣きしていたのに、今では俺に悪口まで言えている。
まあ、これは悪口というか、噂の痴話喧嘩的な感じだし、ティアは怒っているようで、俺の方をチラチラ見てることから分かる通り、唯構って欲しいだけのようだ。
なので俺は………
「そうか。なら、俺はちょっと出かけてくるから。ティアは大人しくしてるんだぞ?」
と、言って席を立つ。そしてスタスタと歩いていくと……
「ま、ままま!待ってよ~!置いてかないで~!」
椅子をガタッと倒しながら立ち上がり、一生懸命走ってきて、俺のコートの裾をギュッと握ってくる。
その目は寂しそうに涙目になり、プルプルと震えながら、俺を上目遣いで見ていた。
やべ、可愛い。
それに心の中でガッツポーズする。ティアちゃん。今日も朝から、萌えをありがとう。
と、ともに、イタズラ心が湧いた俺は――
「え?だってティアは、俺のこと知らないんだろ?なら、無理に俺と一緒にいなくてもいいじゃん?」
キョトンとした顔を作って、そう言ってやる。やべ、ニヤけるの我慢すんのって、マジで難しい。
それにティアは涙をポロポロと流しながら、
「ええ~ん!だってシンが~!シンが虐めるんだもん~!うわあああん!」
本気で泣き始めた。やっべ、これ傍から見たら俺、最低野郎じゃん。
ていうかやっぱり、俺が居ないとダメなんだな~。しょうがないなあ~。可愛いなあ~。
「おいルーキー!てめえ……ティアたん泣かせてんじゃねえぞ!?」
「ぶち殺すぞワレ!?大体朝からいちゃついてんじゃねえよ!目にレッドペッパー液ぶち込むぞコノヤロウ!?」
「俺らの天使独り占めしてんじゃねえぞワレ!?ていうか変われこのクソボケが!」
下から聞こえてくる男どもの声がうざいので、とりあえず俺は、
「黙れ♪」
コートの内ポケットから投擲用ナイフを一本抜くと、ぶん投げた。
それが一階の男どもが座っている机の一つに
――ガスッ!!!
という音を立てて突き刺さり、ゴクリとギルドの人間たちが唾を飲む。
既にオークの群れやミノタウロス単独撃破の噂が流れてるみたいだし、俺に逆らう奴はいないようだ。
て言うか寧ろ怖がられてね?まあ、いいか。楽で助かる。
それを確認し、俺はティアを優しく胸の中に抱きしめて、
「ごめんって。な?もう許してくれよ?その変わり、今日はティアと街の観光しようと思ってるんだからさ」
グスグスと泣いているティアにそう言い、機嫌を取ろうと試みる。
するとティアは俺のコートである程度涙を拭いたあと、上目遣いで俺を見上げて
「ホント?本当に今日は一緒に居てくれる?」
と聞いてきたので、俺は、
「ああ。当然だろ?」
優しく笑ってやる。ていうかめっちゃ可愛いから逆らえない。
それにティアは「じゃあじゃあ!」と言ったあと、
「今日の夜は、一緒に寝てくれる?」
それに俺は大声で言ったね!
「もちろんさあ!」
「わああい!シン大好き!」
ギュッと抱きついて、俺の胸にスリスリと頬を寄せてくるティア。ふっ……どうやら成功したようだ。
この笑顔を見てると、すべてがどうでも良くなるから不思議だ。一階の男どもが全員武器を構えて階段を上がろうとしているけど、それすらどうでも良くなるから不思議だ。
ていうかギルドで働く女性陣に止められてニヤニヤしながら席に戻ってるし、あの男どもも大概だと思う。
そうやってティアが押し付けてくる顔と、匂いと、意外とあるやわらかい胸の感覚を楽しんでいると、後ろからものすごい殺気を感じて、俺はギギギと首だけで後ろを振り返った。
「……シンさん?何をしてるんですか?」
うわーお。カーラさん出現。皆!クエストボードへ急げー!迎撃たいせーい!
どうやら階段から登ってきた様子のカーラさんが、俺をニコッと見ていた。でも目が笑ってない。怖い。
そんな彼女にカタカタと震えていると、カーラさんは「はあ」とため息をついたあと、ツカツカとこちらに歩いてきて、俺の耳元に口を寄せると、
「……あんまり、他所見はしないでくださいね?」
呟いて、チュッと俺の頬に口をつけたあと、一階に降りていった。
その後ろ姿を、俺はティアを胸に抱えたまま、呆然と見守ることしかできなかった。
片手を離し、カーラさんが口をつけて行ったところを、そっと撫でると、なんだか気恥ずかしくなってくる。
「む~。シン。カーラと仲良し……」
そんな俺を胸の中にいるティアは、頬をふくらませながら見ていた。
それに気づいた俺は、ティアを見下ろし、
「と、とりあえず。朝飯食べようか?すまーん!誰か来てくれー!」
ちょっと慌てながらもギルドの女の子の一人を呼び、朝食を取ることにした。
◇
古びたドアを開けると、カランという心地よい音が響く。
それを聞きながら、私は戦士ギルド、大空の翼の中に、足を踏み入れた。
結構広いのね……
少し古いながらもその大きなロビーを見て、そう思う。
中は2回建てになっているようで、少し薄暗いけど、暖かな雰囲気がある。
辺りを見渡すと、沢山の男の人や、女の人が朝っぱらからお酒を飲んだり、何かを食べている。
まあ、朝だし、朝ごはんかな?お酒はどうかと思うけど。
ギルドって初めて入ったけど、うん。悪くない。
今まで屋敷や夜会の席などの堅苦しい世界を見たことなかったから、初めて自分で歩いた街も新鮮で、楽しかった。
裏路地に入るのも少しだけ怖かったけど、悪い人はいないみたいだし、如何にもお兄ちゃんが好きそうな雰囲気が、ここにはある。
――ここにお兄ちゃんが……!
そう思うと、気持ちが焦る。
キョロキョロと辺りを見回してみるけど、お兄ちゃんの姿はない。
しょうがない、あのカウンターみたいなところで、聞いてみるか。
そう思った私は、歩を進める。なんだかジロジロと見られてる気がするけど、なんでだろう?
そんなザワザワとし始めたロビーを横切り、受付と書かれたところに行くと、女の人が出迎えてくれた。
「こんにちは。戦士ギルド。大空の翼へようこそ!受付担当の、カーラといいます。本日のご用件は?」
笑顔で対応してくれる女性を見て、私は驚いた。スッゴイ美人なのだ。セミロングの茶色の髪と、スタイルのいい体つき。
その整った顔は、人を安心させるような柔らかさがあり、女の私ですら魅入ってしまう。
そして、焦る。
お、お兄ちゃんとは、なんの関わりもないよね?そんな焦りが、私を襲う。だってあの金髪の女の子だけでも驚異なのに、まさかこんな美人さんがいるとは……!
「あ、あの?私の顔になにか付いてますでしょうか?」
驚愕し、その女の人に魅入っていると、その人は気まずそうに私に聞いてきた。
おっと、失敗失敗。私は気持ちを入れ替えるために「コホン」と一つ咳をすると、その女の人に向き直った。
「すみません。貴方があまりに綺麗な人なので、驚いてしまいました」
とりあえず不審がられないようにそう言ってみると、その女性は柔らかく微笑み、
「そうですか?ありがとうございます♪ですが、貴方も物凄くお綺麗ですよ♪貴方の前では、私なんてまだまだ……」
苦笑いを浮かべる女性。な、何この人!この見た目で謙虚とか、最強じゃん!絶対お兄ちゃん狙ってるよこの人!だってお兄ちゃん。カッコイイもん!
ぜ、絶対渡さないけど!あの金髪の女の子にも、絶対渡さないけど!くう……まさかライバルが増えるとは……!思ってもいなかったよ!
決意を固めてグッと拳を握る。そして、大きく息を吸うと、私はその女性に聞いてみた。
「で、では。今日の要件なんですが、実は人を探しておりまして……ここに、シンという剣士はいらっしゃいますか?」
「え?シンさんですか?まあ、いますが……」
少し首をかしげながら言う女性。
それを聞いて、私は喜びでいっぱいになった。い、いた!お兄ちゃんやっぱりいたよ!やったあ!
そしてもう一つ気づいた。この人、少し顔が赤い。やっぱり、お兄ちゃんのことが好きなんだな……!ま、まあ。お兄ちゃんのカッコよさなら、仕方ないけど……。
あー!ムカつく!でもいいもんね!お兄ちゃんは今日から、私の屋敷に連れて行くもんね!貴方の恋は終わりだもんね!そう思いながら、私は少しだけ、その女性を睨む。
と、とにかく。お兄ちゃんがいることがわかったし、早く会いたい!そう思った私は、心の中でガッツポーズをしながら、笑みを抑える。そして遂に……
「あ、あの!会わせてはもらえませんか!?実は先日、オークに襲われたところを助けていただいたんですが、お礼をしていなかったもので……」
少し大声で言ってしまったが、伝えることに成功した。
それに女性は「は、はあ……」と声を漏らし、
「で、では。身分証明書をお願いします。一応、規則なので」
と、言ってきた。あ、やっぱりいるんだね。あーあ。折角変装してきたけど、意味なくなっちゃったな。まあ、いいか。
私は財布を取り出すと、身分証明のカードを抜き、女性に渡した。
「はい。ありがとうございます。ええと……クレア・レ・イアモンド……。え……?」
それを見た女性はピシッと固まった。そして……
「も、もしかして、イアモンド公爵家の……クレア様……ですか?あの、勇者ルークの妹君の……」
カタカタと震えながら、そう言った。どうやら、驚いているようだ。
それに、彼女の声が聞こえたようで、ロビーはザワザワと騒がしくなる。あーあ。やっぱこうなるか。まあいいけど……
「ええ。まあ、そうなるわ。私の名前はクレア・レ・イアモンドよ。お騒がせするわね」
堂々とそう言い、ニコッと笑う。それにその女性はかしこまった様子で、「お、お返しします」と身分証を返してきた。
それを「ありがとう」と行って財布に収め、女性に向き直ると、その女性は、
「で、では。少々確認してまいりますので、お待ちください」
私に一礼し、カウンターから出て、階段を上っていった。
物語が動き出す第2章
俺の平穏はどこ?(シン)
作者がゲスいからねえよwてめえはやりすぎだ
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