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  俺の彼女は聖剣です。 作者:炎雷
聖剣名、アストラエアに変えました!

案をくれてありがとう!作者は名前考えるの下手なので、助かりました!
夜に
<恩恵の森>

時刻も深夜と呼べる時間になった現在、その森の一角で、

「うわああああああああん!」

一人の少女の鳴き声が木霊する。
その少女はサラサラの金色の髪と、エメラルドグリーンの瞳を持つ少女で、その目からは、ボロボロと大量の涙が―――

「シンのばかあああああ!!!!!!!」

「いた!?耳はやめてっ!マジでごめんってば!」

戦闘で大量に作ってしまった切り株の一つに座る俺の膝の上に座り、泣きながら俺の耳を引っ張ってきた少女の名は、ティア。
その2代目<剣の勇者>である俺の相棒の聖剣さんは……

「わああああああん!なんで私であんなの斬るのおおおおお!?」

大声で泣きながら、とても怒っていた。まあ、俺が悪いんだけど。
その理由は、俺が彼女、聖剣、アストラエアを使って叩き切った……

――近くにブッ倒れている魔物。ミノタウロスの巨根が原因だ。

いやー今更になって思ったけど、俺が伝説の剣で始めて切った物が魔物のイチモツって……

――これはひどい

聖剣の初仕事が……ティアが剣として、信頼する相手に初めて切らされたものがイチモツって……

――本当にひどい

俺がもし、ティアの立場だったら、トラウマものだろう。それも一生の。
男の俺がそうなんだから、女の……しかも純情な彼女としては、一生忘れられない思い出だ。

――うん。マジでこれはひどい

「いや、なんかマジ、本当にすいませんでした!」

俺はティアの泣きすぎでボロボロになった顔を見ながら、全力で謝った。
いや、ホント、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。お、面白いとか思ってないよ?うん。
正直笑い抑えてるとかないよ?うん。
そんな俺に、ティアはボロボロと流す涙を、俺の胸に顔を押し付け、俺のシャツで拭いながら、

「絶対許さないよ!だって、ネチョてしたああああああ!!!ネチョってしたんだもーーーーん!!!!!!」

大声で叫んだ。
ネチョってしたんだ。それはひどい。

「……ぶふっ……」

やっべ、吹きかけた。危ない危ない。
ここで吹いたら絶対怒られる。だから俺は彼女にゴメンと言いながら頭を撫で、一生懸命笑みを抑え――――

「顔のとこがネチョッて!ネチョッてしたんだもん!!!!!」

「ぶふはああ!!!!!!!!ぎゃはははははっはは!!!顔ですか!顔なんですか!ゲラゲラゲラゲラ!」

「もおおおおお!!!シンのバカああああああ!!!!!!!」

これは無理!抑えられん!顔かよ!よりによってか……顔!!やべ、腹いてえええ!!!
俺は胸の中で大泣きしながら、ポカポカと叩いてくるティアの頭を撫でながら、笑いを抑えきれず、大笑いをかました。
だって顔にイチモツって……顔に牛のイチモ……ぶふふぉ!?

「ティ……ティアさん?お、俺……は、腹が……腹……ぎゃははははははは!」

「ばかああああ!シンのバカああああ!!!!うええええええん!!!」

俺の大笑いと、ティアの鳴き声はその後、ティアが泣き疲れて寝るまで続いた。






               ◇



<恩恵の森>から、街までの暗い夜道。

俺は眠ってしまったティアを担ぎ、ミノタウロスのクソ重い頭の上に、人間とは比べ物にならないほど大きなイチモツを乗せて手に持ち、街までの道のりを歩く。
まあ、カーラさんを置いてきちゃったし、服も血だらけ、戦ってなんかないよ?ってシラを切りたいところだが、これでは無理だし、そういう訳にも行かない。
早く街の皆の不安を拭ってやりたいし、ギルドのやつらにも、仇はとったぞって言ってやりたいしな。
それに、やっぱり俺は、カーラさんに怒られるべきだ。せっかくあれだけの事をしてくれた彼女を置いてきちゃったんだ。やはり、ケジメは付けるべきだろう。
しかし、驚いたな……俺は背中に担ぐ少女の重みを感じながら、息を吐く。

『貴方の傍が、私の家』

初めて会った時、彼女が言っていた言葉。
あれは、こう言う意味だったのかと、今更ながらに気づいた。
つまりは、彼女は俺の剣。俺の相棒で、俺は彼女のご主人様ってことか。
まあ、ご主人様って言うと、エロい響きに聞こえるが、俺は紳士だ。間違いは起こらないさ。うん。
決してこの後メイド服買いに行こうとか、ご主人様って呼ばせようとか考えてないぞ?唯、俺は……

「一緒に、楽しく生きようぜ?ティア」

微笑みながら、これから一緒に生きることになった彼女との生活に、期待をふくらませていた。
懐いてくれてるけど、どこの子だかわからないから一応警戒しないととか、早く家に帰さないとという焦りも消えた。
つまりティアは、新しく俺にできた、家族だ。
これから2人で、どんな冒険をしよう?そんな思いが、俺の中で渦巻く。
魔王がいて、俺が勇者な限り、魔物との戦いにも巻き込まれるかもしれない。ティアを使わないといけなくなるかもしれない。

でも、俺は…………

――せっかく見つけた俺の居場所を守るためには、力を振るってやる。

貴族や知らない国の人間なんか、俺には関係ない。
俺が守るのは、家族だけだ。
俺が求めるのは、自由だけだ。

だから俺は……

「お前も、絶対守ってやるからな。ティア」

背中に眠る少女も……絶対守ってやる。
彼女は剣だからとか、勇者の相棒だからとか関係ない。
もしもティアや俺を道具なんて言う奴が現れたら、俺がぶった斬ってやる。
そう決めて。

少し遠くに、街の門が見えてきた。
それを見ると、帰ってきたなって思う。
誰かが門の前で、手を振っているのが見える。あ、門番のオヤジだ。起きたのか。ははっ。魔物斬ったぜって、自慢してやろ。
笑みを抑えながら、門まで歩く。すると、手を振ってる人以外に、もう一人誰かがいるのがわかった。

その人は俺を見るなり、走ってやってくる。走り方からして、女性だろうか?んー暗くて見え――――

「シンさああああああん!!!!!」

…………あれ?この声、スゲエ聞き覚えがある……。
ていうか俺が、こんな綺麗な声を聞き間違えるはずがない。
それは、俺がいつもギルドの受付で聞く声。いつも笑顔が素敵で、俺たちの間ではアイドルと言われている……。

――そんな、女神、カーラ様の声でした。

アカン。足の震えが止まらん。やべえ、絶対殺される。
みんなが恐れる魔物、ミノタウロス怖くなかったのに、なんか女神の声がすごく怖い。
なんでだろう?本当になんでだろう?怖い怖い怖い!

逃げようにも、足が震えて動けない俺は、走ってくる女性をただただ凝視する。
さっきまでは怒られるのがけじめとかカッコつけてたけど、アカン。これは怖い。
ていうか俺が何かに対して、怖いと思ったの初めてだわ。マジで。
なんとかティアと頭は死守するが、イチモツが地面に落ちた。それを合図に、俺がなんとか5歩ほど下がることに成功したとき、

近くまで来て、夜道でも見えるようになったカーラさんの顔を見て、足を止めた。
その顔は、ボロボロと大粒の涙を流し、その涙が月明かりに照らされて、キラキラと光る。
よほど俺を心配してくれていたようだ。やっぱ、悪いことしたな。

「やっぱ、怒られるべきだよな」

呟いて、覚悟を決め、前を見据える。
そして、大きく俺が息を吸った時、

「シンさん!シンさん!シンさああああん!!!」

カーラさんは泣きながら俺の近くまで走ってきて、

「ひゃ!?」

俺が落とした牛のイチモツを踏み、盛大にコケた。
そんな彼女は、俺の足元ギリギリまで滑ってき、止まる。俺はそんな彼女を見て、

「………ぶふっ……た、ただい……ただい……ただいま!」

なんとか言い切った。うん。これはひどい。
そんな俺の様子に気づいたのか、カーラさんは顔を伏せたまま、

「…………笑いたければ笑えばいいじゃないですか……」

小さな声でそう言った。
ならば失敬して……

「ぶふ……ふふふ……ふふふふ」

大笑いはさすがにアレなので、なんとか耐える。そしてある程度落ち着いたところで、

「ふふっ………まあ、カーラさん。ただいま!」

大声で言い、笑った。
それにカーラさんも顔を上げて、

「ぐす……シンさん!おか――――ひう……」

何かを言いかけ、ミノタウロスの顔を見て気絶した。
……しまった。角度的にそうなるか。あーあ。荷物が増えちまった。

とりあえず俺は大きく息を吸うと、

「ごめーん!オヤジーーーー!ちょっと手伝ってくれ!!!」

大声で叫び、助けを求めた。

ホント、最後まで締まらないぜ。ったく……





          ◇



カーラさんを背負いながらニヤニヤしているオヤジと、街中の注目を浴びながらギルドに帰り、オヤジの帰り際に蹴りを叩き込んだ俺は、今日は流石に誰もいなくて、静かなギルドのロビーで一息つく。
あのオヤジ、ドサクサに紛れてカーラさんの尻を触りやがった。とんだ変態オヤジだ。後でカーラさんに告げ口しとこ。

その後、とりあえずカーラさんとティアは、ギルドで働いている女の子達に任せ、ミノタウロスの頭のせいで気絶者を数人増やした俺も、風呂に入ることにする。
地下に降り、大浴場で汗を流し、血でダメになってしまった服は、ゴミ箱に捨てる。
近いうちに服を買わないといけないな。
そんなことを思いながら、数少ない服の中から、短パンとシャツをチョイスした俺は、頭をタオルで拭きながら、今日用意してもらった部屋に戻り、ドアを開けた瞬間。

――腕を掴まれ、ベットに押し倒されました。

とりあえず何が起こってるのかわからないので、視界を上に向けると、そこには湯上り状態で、妙に色っぽいカーラさんが、俺に馬乗りになっていた。
あ、気絶から覚めたんだ。でも、この状況は何?そんなことを思っていると、彼女は、俺の頭の横に手を置いて、顔を覗き込むように屈むと、

「……じゃあ、言い訳を聞かせてください」

小さく、刺のある声でそう言った。
それに俺は苦笑いと冷や汗を感じつつ、

「ええと……も、森で散歩してました」

言った瞬間。カーラさんの顔が近づいてきて、唇を重ねられた。
柔らかくてしっとりと濡れたその唇と、鼻をくすぐる柔らかな匂い。
それに頭が真っ白になった俺が、固まっていると、彼女は口を離し、俺の顔を近くで見て、

「嘘をつくたびに、キスを一回します」

甘い声で、そんなことを呟いた。
カーラさんに一体、何が起こったんだ……そう思える程の小悪魔っぷりを発揮し始めた彼女に、俺は焦る。
今日は俺、一体どうしたんだろう?ファーストキスを終えてすぐに、別の女の子とキスしちゃってるんだけど?何このダメな奴の典型みたいな。
しかも2人とも美少女という、まさに男、女、共通の敵みたいになってるんだけど?ねえ、誰かこの状況を説明して?

頭の中がぐちゃぐちゃで、うまく整理できずに黙っていると、カーラさんがまた、俺の口に自分の口を付けてきた。
そして数秒後、顔を離すと、

「10秒以上黙ってても、します」

そんな事を、真剣に言ってきた。
ちょっと待って欲しい。それならずっと黙ってた方がよくね?とか、でもこのままだと永遠に終わらないぞとか、そもそもそんなことされたらまともに考えることなんかできないぞ?とか、色々あるんだけど、ひとつだけ言わせて欲しい。

何このご褒美?ここは天国ですか?

こ、これは……このまま続けたいという衝動に打ち勝つのは、もはや不可能ではないだろうか……?
それにこのあとカーラさんと裸のお付き合いというのがある訳だし、このまま発展させても――――
そんな事を思っていると、カーラさんにまた唇を塞がれる。
や、やっぱり柔らかいし、いい匂いがする。ティアのも柔らかかったけど、カーラさんのはなんかこう……年上の魅力というか……。

――ん?ティア?そういえばあいつ、どこに居るんだろう?

そこまで考えたとき、俺はファーストキスの相手、ティアのことを思い出した。
やっぱ相棒だし、俺はあいつの主人なわけだし、ファ、ファーストキスの相手な訳だし、気になった俺は、聞いてみることにする。

「あ、あの。そういえばティアはどうしたんだ?ちゃんとお風呂入ったのか?」

それにカーラさんはどこか、暗い顔をして、

「……この状況で、別の女の話題ですか?」

静かな声でそう言った。
あれっ?なんかカーラさん怒ってないか?どうしてだろう?
それに首を傾げていると、カーラさんは「はあ」とため息をついて、体を起こした。そして横に顔を向けると、

「ティアさんなら隣で寝てますよ。ほら」

と、教えてくれる。俺も首を横に向けてみると、そこにはすうすうと安らかに眠る、ティアの寝顔があった。
それに俺は、軽く笑ってしまう。

「ははっ。気持ち良さそうに寝てら」

先程まで大声で泣いてたくせに、寝るときはいつも気持ちよさそうな寝顔をしやがる。ったく、本当に可愛やつだな。
それを確認して、俺は「はあ」とため息を着くと、顔を上げた。そこには、カーラさんの、何処かさみしげな表情がある。

苦笑して、俺は体を起こすと、カーラさんを上から優しく退け、布団を被って、

「ほら。入れよ。今日のこと、教えてやる」

そう言って隣をポンポンと叩いてやった。それにカーラさんは苦笑いをして、

「はい。よろしくお願いしますね」

そう言ったあと、俺の隣に入り、胸の中に頭を埋めてくる。なんか、俺の周囲の女性達って、本当にこれ好きだな。そう思いながらも、俺は彼女の頭を抱いてやり、

「じゃあ。教えてやるよ。俺が今日。魔物たちを、どうかっこよく倒したか……な」

微笑んで、語りだした。ティアの聖剣のことだけは語らなかったけど、今日の魔物たちとの……ティアとの散歩の話から、ゆっくりと。
こうして夜は更けていく。腕の中にある大切な家族の一人と、隣のベットに眠る、相棒のことを思いながら。
さて、カーラさんは本格的に落ちた……と。
あ、気づいたらマウスが割れてた。怒りの力怖いですねえ(イライラ

さて、第一章がこれで終了ですねえw

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