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  俺の彼女は聖剣です。 作者:炎雷
激闘
<恩恵の森>

月明かりに照らされたその森の中で、俺は、

「ちょこまかと煩い小僧だ!」

でかい牛……もとい、魔物、ミノタウロスと対峙していた。
その魔物は放つ斬撃は、巨大な大木をも、一撃で粉砕する程の威力を持ち、俺の様な細身の人間が喰らえば、一撃で肉片と化すだろう。

「はははっ!止まって見えるぞ化物があ!」

少し離れたところから、ダッシュで距離を詰め、斧が振るわれた瞬間に加速し、斧を避け、鳩尾に剣を当て、その勢いのまま脇を通り過ぎて背中、ちょっと飛び上がって脳天に剣を叩き込む。
その後、相手の首筋に足をかけ、空中を舞って木の上に着地した俺は、加速を停止し、

「あー!マジで硬い!全然切れないじゃねえか!何なんだよてめえ!」

木の上から、文句を言う。だって、普通なら決着ついてるのに、長々と長引かせやがって……本気でムカつくんだもん。

「貴様こそ!ちょこまか、ちょこまか動きおって!」

ミノタウロスも叫んで、斧を一閃。俺の立っている木を根元からぶった斬りやがった。

「ホント、予想通りの奴だな!」

それを確認した瞬間に、加速し、俺は自らの足元を大きく蹴り後ろに飛ぶ。そして、倒れていく木の幹に

「っだあああ!!!!」

空中で叫んで、全力で蹴った。そして、その勢いのまま、近くの木の枝に着地して、加速を停止する。
すると、バキバキという音を立てて、木がミノタウロスの方へ倒れていく。
これが決まれば、気絶くらいするはずだ。加速した俺の蹴りの勢いも乗ってるし、勢いもいい。
これで平然としてたら、……こいつは、

「甘いぞ小僧!」

バシッ!っと音がして、
ミノタウロスは、片手で倒れてきた木を受け止めやがった。うん。化物決定。
まあ、剣が通らない時点でおかしいんだけどね?さて、どう攻めようかな?
とりあえず、大きく息を吸って、冷静に周囲を見る。こういう状況で、キレたら負けだ。実戦のカンが、それを教えてくれる。
まあ、とりあえず……

「行くぜ化物!」

もう一本木を切ることにしました。
木の上から飛び、頭から地面に落ちながら、俺は小さく、

「加速」

呟く。その瞬間、俺の世界が訪れた。
舞う木の葉から、目の前にある木の幹の粗、、その全てが、綺麗に見える。
そのまま一時落ち、そしてゆっくりと息を吸うと、

――ここだ!

そう思ったところで、剣を一閃。そしてそのまま、木の幹を蹴り飛ばした。
そして空中で体を捻り、足から地面に着地できると思った瞬間、加速を停止し、地面に着地。
視線を上げ、ミノタウロスに倒れていく木を見ながら、俺は叫んだ。

「くたばれ露出魔ああああああ!!!」

相手は右手に斧、左手で木を抑えている。これは避けられないだろう!
まあ、死にはしないだろうが、足は止められるはず!そしたら無抵抗のこいつに、剣を叩きつけまくればいい。
どんな化物でも、弱点くらいあるはずだしな!それを探りながら、じっくり行くぜ!そう思いながら、倒れていく木を見つめる。

……が、その期待は、すぐに打ち破られた。

「甘いと言うとろうが!」

なんとミノタウロスは、そんな叫びを上げて、今まで持っていた大木を左手だけで持ち上げ、それで倒れていく木を叩きやがった。
そのせいで木はミノタウロスの脇に落ちて、ミノタウロスは持ち上げている木を、

「フンッ!!」

俺に向かって投げてきやがった。

「っ!?」

舌打ちして、横に転がり、高速で飛んできた木を避ける。ていうかこれをこの速度で投げるって……
直様態勢を立て直し、ミノタウロスに向かって走る。
敵の射程に入ったところで、ミノタウロスは、斧を横に振るってきた。それを加速せずにしゃがんでよけ、斧が通り過ぎた瞬間に加速して、飛び上がる。
そしてミノタウロスの目の位置まで飛ぶと、俺は全力で、左手に持っていたものを投げた。
その後、飛んでいくそれを見ながら、俺はミノタウロスの肩に足をかけ、蹴る。その勢いでちょっと離れたところまで着地した俺が加速を停止した瞬間。

「ぎゃああああ!!!!!」

ミノタウロスは目を抑えて蹲った。
そう、俺が投げたのは、砂。
先程、斧をよけた時に俺は森の砂を掴んでおいたのだ。
それに、加速して、全力で投げたその砂は、ものすごいスピードで目に突き刺さったはず。これなら、一時目が見えないどころか、眼球が潰れているかもしれない。
ミノタウロスが抑えている目からは、血が出てるし、うん。これは重症だろうな。うわ~痛そ~。

「ねえ?痛い?痛いか?今まで僕チン筋肉でムキムキだから効きませーんってやってたけど、痛い?ねえ痛い?ははははは!ざまあ!」

蹲るミノタウロスの前で、俺は高笑いをする。やべえ、マジ楽しい。だってさ、伝説の怪物が、俺の前で蹲ってんだぜ?愉快すぎるだろ!?

「こ、小僧……こぞおおおおおお!!!!!1」

そんな俺に向かって、ミノタウロスは蹲ったまま、斧を振るってきた。俺はそれをジャンプして避け、ミノタウロスの頭の上に着地する。

「ねえねえ?どんな気持ち?さっきまで馬鹿にしてた虫けらに膝を折らされて、頭踏まれてどんな気持ち?俺に教えてよ!伝説の怪物(笑)さん?」

頭の上で笑い、足を掴まれそうになったので、直ぐに飛び上がり、空中で体を捻る。
そして地面に着地し、前を見ると、そこにはゆっくりと起き上がるミノタウロスの姿があった。
その目は閉じられ、血の涙を流している。どうやら、視界は完全に奪えたようだ。あとは、鼻と耳を潰したいところだが……

「こ、小僧!許さん!許さんぞおおおお!?」

そんなことを考えていると、ミノタウロスは俺に向かってダッシュをかけてきた。やっぱり、鼻で場所がわかるのか。めんどくせえな。
とりあえずそれは、横にステップして避ける。するとミノタウロスは、そのまま駆けていき、森の木をどんどんなぎ倒しながら、少し遠くまで駆けていった。

「プフッ……こいつは勝ったな」

小さく呟き、ミノタウロスが駆けていった方に向き直る。するとそこには、一度止まり、もう一度ダッシュをかけようとして来ているミノタウロスの姿があった。
こっちに来たら、もう一度避けて、相手の体力が切れるまで遊んでやるか。

「ガあああああああ!!!!!!」

遂にブチ切れたようで、俺の方にかけてくる魔物を見ながら、そんなことを思っていると、

「シンー!どこー?」

そんな声が……とても聞き覚えのある声が……響いた。
それに俺は、バッと振り返る。そして少しだけ目を凝らすと、そこには、キラキラと輝く金の髪が見えた。
そう、それは、俺が絶対に見間違うわけがない、最近知り合った女の子の髪。
俺にいろんな感情を与えてくれた、女の子の髪だった。

「ティ……ティア?」

俺は、あまりの驚愕に、小さく呟くことしか出来ない。
なぜここがわかったんだとか、何で追いかけてきたんだとか、色々言いたいことがあるけど……まずは、

「や、やばい!避けろ!ティア!!!」

俺は大声で叫んでいた。
何故なら、ティアのいる方向は、俺の真後ろ。そう、今まさにものすごいスピードで走ってきている、ミノタウロスの攻撃範囲だったのだ。
だから俺は叫んだ。このままじゃ、ティアはあの化物に押し潰されて、死んでしまうだろう。それだけは避けたかった。

「あれ?シンの声だ!どこー?」

だが、神という奴は、なんて残酷なんだろうか。俺の叫びを受けたティアは、少しだけ離れた場所で、ピタッと止まっているのである。

「クソッタレがあ!」

吐き捨てて、俺はティアに向かって走り出した。

「加速しやがれえええ!!!!!」

大声で叫んだ瞬間。世界が遅くなる。そしてその世界で、俺はそのままティアに向かって駆け、
彼女の体をお姫様抱っこの要領で抱えると、少しだけ横に走って、加速を解除した。

瞬間、そのすぐ傍を、ミノタウロスが駆けていく。そしてまた、少しだけ遠くまで走っていったミノタウロスを見ながら、俺は大きく息を吐くと、

「何しに来たんだよ!?危ないだろうが!」

抱えていたティアに向かって、大声で叫んだ。
それにティアは「ひう……」と呻き、

「ご、ごめんなさい……」

涙を流しながら謝ってきた。
だが、俺の怒りは収まらない。俺は彼女をゆっくりと地面に下ろすと、

「バカかお前は!お前は、もう少し自分が女だってことと、とびきり可愛いってことを自覚しろよこのバカっ!大体、一人で夜の森なんかきてんじゃねえ!俺のところにたどり着いたからいいものの、迷ったり、野生の動物に襲われたらどうするつもりだったんだこのバカっ!」

そう言ったあと、頭をコツンと小突いてやる。ったく……本当にヒヤッとしたぜ。

「うえ……ごめ、ごめんなさ……!」

ボロボロと涙を流しながら、ティアが謝ってくる。それを見ながら、俺は「はあ」とため息を着くと、木の枝に頭をぶつけて止まっているミノタウロスの方を見て、

「全く。あんまり心配させんな。ほら、ちょこっと下がって……クソッ。そういう訳にも……」

必死にティアをどうしようか、考え始めた。
何故なら、今のミノタウロスは、目が見えない。匂いだけで判断しているのだ。そんな中に、ティアの様な、女の匂いを見つけたら……

「むっ……女の匂い……」

そりゃあ反応するよねッ!?
さっき話した感じだと、こいつはよほどの女好きと見れる。
それに、人間の女でもいいらしい。カーラさんを襲うとか言いやがったしな。ぜってえ殺す。

急に冷静になって、俺の方へと歩いてくるミノタウロス。その鼻息は荒く、耳や尻尾はピコピコと動いている。正直キモい。

――クソッ……どうするかな……

それを見ながら、俺は考える。
このままじゃあ、ティアが狙われてしまい、まともに戦えない。
守りながら戦うとしても、それはかなり無理に近い。
目が潰れてるし、逃げ切れるだろうから、一度逃げるという選択肢もあるが、その間に街に入られるわけにもいかない。
この状況を乗り切るには、どうしたらいい……?頭を高速で動かしながら、俺は唇をかんだ。

ズンズンと歩いてくるミノタウロスは、確実にこちらに迫ってくる。クソッ!考える時間が少なすぎる……!
そう思って、舌打ちをしていると、急にティアが、俺の肩を叩いて、

「シン。私を使って?」

涙を拭きながら、そんなことを言ってきた。

「は?使う?使うって……はい?」

正直、訳がわからないので、俺はそう聞いてみる。すると彼女は、

「そう。私を使うの」

真面目な顔でそう言って、少しだけ背伸びをして、俺の頭に手を置いてきた。

瞬間、痛みが走り、俺の頭の中に、ある言葉が浮かんでくる。
俺は頭を抑えながら、それを確認して、

「ティ……ティア……お前……!」

信じられない気持ちで、彼女の顔を見た。
そんな俺の顔を見ながら、彼女は柔らかく微笑むと、
唇をゆっくりと開いて、言った。

「私の……真名を開放して?」

さて、ティアいくぞー!

ズンチャ♪ズンチャ♪
(カーラさんのお風呂の覗きを行っております)
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