見張り
「はあ……」
濡れた頭をゴシゴシとタオルで拭きながら、俺は大きくため息をついた。
ここは戦士ギルド、大空の翼。その地下にある廊下だ。
この地下にある大浴場で、オークの血や汗を洗い流した俺は――。
「じゃあシンさん。お部屋に行きましょうか?もうティアさんはお部屋にいるそうですので、心配しなくていいですよ?」
「……分かったよ……ありがとう」
隣を歩くカーラさんにニコッと微笑まれ、また大きくため息をついた。
それを見たカーラさんは、俺にその貼り付けたような笑顔を向け、
「いえ。これも仕事のうちですので……大事なうちのメンバーを、簡単に死なせないようにする……とっても大事なお仕事です」
逃げるなよ?そんな目を向けてくる。もう逃げませんってば。はあ……
さて、なぜ俺がこんな状況になっているかというと、まあ、要はカーラさんに監視されてるのだ。
昨日今日とティアのことで忙しかった為、読んでいなかった新聞を読み、勇者の正体が実は……という衝撃的な事実を叩きつけられた俺は、頭をさっぱりさせたくなり、風呂屋に行くと言って、部屋を出ようとした。
が、カーラさんに腕を掴まれ、地下に連れてこられ、風呂に入れさせられ、装備を取り上げられ、挙句には「今日は目の届くところに」と言う宣言通り、こうして監視されている。
まあ、確かにあのまま森に行くつもりではあったのだが……まさか先手を打たれるとは。カーラさんはよほど俺を警戒してるらしい。
しかし……本当に監視してくるとは思わなかった。困ったな……このままじゃ森にいけねえ。
しかも現在の俺の装備は、短パンにシャツという簡単なもの。いつも着けてる剣の重みがないため、体が軽すぎて落ち着かない。
それに、このまま部屋に行き、カーラさんが帰ってから抜け出そうにも、装備がなければ戦えない。クソッ……どうすっかな。
「あの……俺の装備は?あれがないと落ち着かないんですけど……」
ダメ元でそう聞いてみる。すると彼女は俺の方を見て、
「オークの血でべっとりでしたので、私が綺麗にしておきます。剣の方も、ピカピカに拭いておきますよ♪明日の朝、取りに来てくださいね♪」
そんな非常に良い笑顔で微笑んだ。チッ……どうするかな……マジで詰んでやがる。
だが、こんな所で諦める俺ではない。俺は彼女の顔をチラッと見たあと、「はあああ」と切なげなため息を漏らすと、
「カーラさ~ん。お願いしますよ~……あれは俺の体の一部なんです。なのでケアも俺がやります。どうか返してくださいませんか?マジで俺、あれがないと落ち着かなくて落ち着かなくて、ツルツルにハゲちゃいます」
俺がそんな風に、一生懸命お願いすると、カーラさんは俺の方に顔を向け、
「たったそれくらいのことで、まだまだ若いシンさんの髪の毛がハゲるわけがありません。ほら、馬鹿なこと言ってないで、ちゃっちゃと歩いてください」
キッパリとそう言った。うぐっ……これは本当に疑ってやがる。クソッ……まあ、貴方の予想通りなんだけど……。
はあ……これは厳しいな。どうやって装備を取り返そう?そんな事を考えながら歩いていると、
「どこに行くんですか?ここですよ?」
カーラさんに腕を掴まれた。なので俺が前を見てみると、そこにあるのは一つのドア。どうやらここが、俺の部屋らしい。
だが、俺はここで一つ、疑問に思ったことがある。確か、普通ギルドの宿泊部屋は、2階だったはずだ。が、俺は階段を上った覚えがない。なので、
「なあ。ここって地下……だよな?」
と、カーラさんに聞いてみる。すると彼女は、
「そうですけど?」
当然とばかりにそう言った。まあ、そうだろうな。ここは地下のはずだ。
……あれっ?おかしいよね?
「あの……普通宿泊用の部屋って、2階じゃあ……」
恐る恐るそう聞いてみる。するとカーラさんはにこぉ♪と笑い、
「だってシンさん。2階くらいじゃ、飛び降りれそうですもん♪なので職員用の部屋があるここ、地下の部屋を用意しました。ここなら……逃げられませんよね?」
楽しそうにそう言った。
…………確かに出来ますが何か?
寧ろ3階でもいいですけど何か?
俺は彼女のいい笑顔を見ながら、歯をギリっと鳴らす。
クソッ……まさかここまで警戒されているとは……!
つまりあれか。地下に監禁ですか。そうですか。ふざけんなあああ!
眉をピクピクさせながら、俺が頭を抱えていると、カーラさんはそれを見ながらふふっと笑ったあと、ドアを開けた。
そして俺の腕を掴むと、俺の耳元に口を寄せ、甘い声で囁いた。
「じゃ。一緒に寝ましょうね?」
…………はい?
「あの、今なんて?」
俺は耳から顔を少しだけ離し、至近距離にあるカーラさんの綺麗な顔を見ながら、聞き返した。
すると彼女は、少しだけ赤みがかった顔で小さく俯き、
「2回も言わせないでください」
そう言って俺の腕を引き、部屋の中に引っ張っていった。
真っ赤な顔のカーラさんに引っ張られたまま、部屋の中に入ると、そこにはベットが2つあり、その片方では、ティアがスースーと眠っていた。
部屋に入った途端、カーラさんに腕を離されたので、俺はティアの傍まで歩き、その顔を覗いてみると、ティアは顔を真っ赤にして、枕をグショグショに濡らしていた。
恐らく、あんな別れ方をしたし、俺がいないからギルドの馬鹿どもに相当おもちゃにされたんだろう。
まあ、あんな奴らだし、ティアにはすごく怖かったに違いない。
その後、お風呂に入れてもらったようだが、連れて来られた部屋でたった一人。俺の帰りを待ちながら、泣いていたと考えられる。
で、泣き疲れて寝ちゃったと……。
「悪いことしたな……」
俺はティアの頭を軽く撫でてやる。明日は絶対、どっか連れてってやろう。そんな決意を固めながら。
そうして頭を撫でていると、部屋の中に、ガチャンと言う音が響いた。
それに疑問を持った俺は、音の鳴った方……部屋の入り口の方を見てみると、そこには体はこちらに向け、顔は真っ赤なまま俯き、後ろ手でドアの取っ手を持つ、カーラさんの姿が。
……ちょっと待て?今……鍵締めなかったか?
「あ、あの……カーラさん?」
少し動揺しながら、カーラさんにそう言うと、彼女は肩をぴくっと震わせたあと、無言のまま、ツカツカとこちらへやって来た。
そして、ティアの頭を撫でながら、固まってしまっている俺の腕を掴むと、――――――ドサッ!
俺をティアのいない方のベットに押し倒した。
「あ、あの……カーラ……さん?」
ベットに押し倒され、俺が動揺しまくっていると、カーラさんは俺の体に馬乗りになって、
「……シンさん。今日は……逃しません」
真っ赤な顔のまま、小さく呟いた。
あの……何が起こってるのこれ?ちょっと訳が分からないんだけど?
「カ、カーラさん?何をしてるんだ?」
俺は押し倒された格好のまま、カーラさんを見上げ、震える唇でそう聞く。すると、彼女は少しだけ沈黙したあと、
「……シンさんが絶対、森に行かないように、見張るんです」
そう答えた。うん。やっぱり意味がわからない。
なので俺は、カーラさんの目をしっかりと見ながら苦笑いを浮かべる。
「え、ええと……見張りに、この態勢はおかしくないか?」
「おかしくないです」
即答されました。いや、絶対色々おかしいだろ。
「あの……絶対これはおかしいよな?大体、俺はもう逃げないって。ティアもいるんだし、今日はもう寝るよ。カーラさんもほら、仕事に戻っていいよ?」
ていうか早くどいてください。この態勢は色々まずいです。と思いながら、俺は諭すように言う。
すると彼女は、俯いていた顔をスッと上げ、俺をその真っ赤な顔と、潤んだ目で見つめ……。
「……嘘です。絶対、逃げようと思ってます……」
ギクッ……。ま、まあ。バレてることくらいわかってるんだ。これくらいで折れちゃダメだよな。
さっさとその化物ってやつ倒さないと、被害があれならダメだし、というわけで早く彼女を帰さねば。……なんかこのままだとまずいし。
「に、逃げないって。と、とりあえず。ほら。冷静になろう?俺は男で、カーラさんは女。な?この態勢は色々とまずいだろ?だからちょっと退いてくれよ。じゃないと俺の中の悪い狼がガオーってなるぞ?いいのか?」
俺はいつものように、冗談を飛ばす。これでほら、いつもみたいにシンさんの変態!って終わるはず……。
そう思って彼女を見ていると、彼女は潤んだ瞳のまま、
「シンさんがそうしたいなら、私はもう、覚悟が出来てます。ただし、責任はとってくださいね?」
……あれっ?何かおかしい。あれっ?
うん。やっぱりカーラさん。冷静じゃないぞ?これはアレだ……なんか暴走してるっぽい。
じゃないとほら……好きでもない男にこんなことは言わない……はず。
「カ、カーラさん。やっぱりほら、カーラさんは今日。疲れてるんだ。まあ、しょうがないよな?4人も仲間が死んじゃったんだしな?それに俺の事心配してくれてたんだろ?な?俺はもう大丈夫だし、おとなしくしてるから、部屋に戻って寝なよ?な?」
俺はなんとかカーラさんを正気に戻そうと、慌てる。ていうかこの反応は初めてなんだけど?なにこれ、誰かどうすればいいか教えて?
俺がテンパりまくっていると、カーラさんは俺の顔をじっと見つめてくる。そして、静かに唇を開いた。
「……そうですね。確かに、今日はいろいろなことがありすぎて、疲れてるのかもしれません」
俺に跨ったまま、目を閉じて、何かを思い出すように言うカーラさん。
「こうして目を閉じていると、私が笑顔で手を振って送り出した……もう二度と会えない4人の顔が、くっきりと浮かびます」
言いながら、彼女の目に、涙が滲み始める。
それを見て、本当に辛かったんだなと思った俺は、先ほど聞いた4人の名前を思い出し、ぜってえ復讐してやると、心に決めた。
だが、そんな俺を他所に、カーラさんは静かに目を開けると、
「あの4人が死んだって聞いたとき、私がどれだけ悲しかったか、貴方に分かりますか?」
静かに、言葉を紡ぎ出した。
「一人だけ生き残ってて、貴方のいる所に、走って言ったって聞いたとき、どれだけ心配したか、貴方に分かりますか?」
その顔はとても真剣で、いつも綺麗なカーラさんが、さらに綺麗に見える。それに見惚れていると、カーラさんはどんどん言葉を紡いでいく。
「死んだのかもと思っていた貴方が、笑顔で私の肩を叩いた時、あのオークの顔を見たときは驚きましたが、元気な顔を見た時、私が……私がどれだけ嬉しかったか、わかりますか?」
ポロポロと涙を流しながら、カーラさんは静かに言ってくる。いや、そんなこと言われましても……。
「いや……俺があんな遅い……オーク如きに殺られるわけないだろ?ちゃんとそこら辺考えようぜ?」
俺はカーラさんに、呆れたようにそう言う。いや……正直負ける気しないし。
するとあの女は俺に呆れたような目を向けた。
「貴方のそういうところが怖いんです。確かに貴方は強い。でも、相手は伝説の化物ですよ?心配しないわけがないじゃないですか」
あ。怒られた。すいません。なんか、今日のカーラさんマジなんですけど?
「帰ってきたって安心してたのに、なのに貴方は、また死ぬような相手に挑もうとするんですか?また私に心配させるつもりなんですか?しかもこんな夜中……あんな真っ暗な森で、まともに戦えると思ってるんですか?殺してくださいって言ってるようなものじゃないですか。馬鹿なんですか?」
あ、あれっ?ホントどうした?今日のカーラさんマジどうした?なんか、すげえ怖いんだけ――
「ギルドの受付係として、クエストに送り出した人が、帰ってこないあの辛さが、あなたに分かりますか?そりゃ、死ぬ方はいいですよ?死んだら、何も考えられなくなりますものね?でも、残された私たちはどうなります?貴方が死んだら、私はまた、辛い思いをしないといけなくなるんですよ?そこら辺わかってます?ねえ、本当にわかってるんですか?」
あ、あら?なんか刺さる!すげえ刺さる!心にグサッときますよこれっ!?ちょ、いたっ!?ホントいたっ!?
「ねえ?わかってるのかって聞いてるんですよ?答えてくださいよ。ねえ、答えてくださいよ」
ボロボロと泣きながら、カーラさんは俺の胸ぐらをつかみ、俺に迫る。……はあ、こういう雰囲気、嫌いなんだけどなあ……。
しゃあない。答えるかと思った俺は、彼女の目を真っ直ぐに見つめた。すると、カーラさんも俺の目を見たまま、ピタッと止まり、
「……正直、わかんねえ。俺は、自分が死ぬなんて考えられないし、昔から、お前なんかいらねえって言われて生きてきたから。俺が死んで喜んでくれる人は知ってても、泣いてくれる人なんかいねえと思ってたからな。だから、正直わかんねえ」
そう言った瞬間、頬に衝撃が走った。カーラさんに叩かれたと気づくのには、少しだけ時間が必要だった。
「だからあなた達は……冒険者っていうのは……自分の命をなんだと思ってるんですかっ!」
全力で怒ってるカーラさんを見るのは、始めてだった。俺は、頬の痛みとともに、それに驚く。
「大体、勝てないってわかったら逃げろって……いつも言ってるのに……なんで4人も!4人も死なないといけないんですかっ!」
俺の胸ぐらを掴みながら、ボロボロとなくカーラさん。あれ?ていうかなんで俺が怒られてるの?え?その4人に言ってよ!あれ?
俺が呆然とそれを聞いていると、カーラさんは俺の胸ぐらを掴んだまま、叫び続ける。
「大体!うちの最強クラスのメンバー5人で無理だったクエストですよ!?あなたが一人で行って、勝てると思ってるんですか!?しかもこんな夜に?真っ暗な森で?ヒーロー気取りもいい加減にしてください!これは、後日やってくるはずの、勇者ルークに任せとけばいいんですよっ!貴方が行く必要なんて、全然ないんですよっ!」
いや。気取りとかじゃなくて、俺その勇者らしいっすよ?寧ろ俺が行かないでどうするんですか?とか言わないでおこう。余計怒られそうだ。
「大体、貴方は初めて見た時から気に入りませんでしたっ!なんですか!あのすべてを諦めたような、どんよりとした目は!馬鹿にしてるんですかっ!?死んでもいいとか馬鹿なこと考えてたんですかっ!?このバカ!」
ちょ、ちょっと!?なんか俺個人の罵倒に変わってるんですけどっ!?暴走しすぎじゃねえ?
「ちょ、カーラさん?少し落ち着い――――――」
「これが落ち着いていられますかっ!?貴方の過去がどうとか、どうせ教えてくれないだろうから、聞きませんがっ!そんな濁った目ばっかりしてるなら、私にも考えがありますよっ!?」
俺が一生懸命宥めようとしても、カーラさんは止まらない。どうしよう……本気で怒らせたっぽい。
初めて見るカーラさんの激怒。それにビビって、俺が次の言葉はなんだろう?と肩を震わせていると、カーラさんは意外や意外。今度は小さな声で呟いた。
「……抱きなさい」
「へ?」
「……私を抱きなさい」
「……はい?」
思考、止まりました。訳がわかりません。
「聞こえませんでしたか?私を抱きなさいと言ったんです。シンさん」
俺がピシッと固まっていると、カーラさんが本気の顔でそう言ってきたので、俺はとりあえず。
「は、はあ」
とだけ返す。ん?まあ、とりあえず抱いてあげればいいのかな?そう思ったので、俺は体を起こし――――
「えと?これでいいのか?」
カーラさんをギュッと抱きしめてみた。瞬間。
「……わざとやってます?」
あれ?なんかめっちゃ怒ってるんだけど?なんでだ?
怒り狂ってる彼女にあたふたしていると、彼女は俺の腕の中で、「はあ~……」とため息を漏らした。あれ?なんか呆れられてね?
「なあ?俺、何か間違ったか?言われた通りにしてみたんだが?」
何が間違っているのかわからないので、俺は彼女にそう聞いてみる。するとカーラさんはまた、大きくため息をついて、
「ええ。間違ってます。抱く。というのは、その……私を襲いなさいという意味です」
「………はい?」
なに言ってんのこの人?
「なにか守るべきものがれば。シンさんだって命を大事にしようとするでしょう?なので、私を抱きなさい。そして結婚しましょうといったんです。それくらい察しなさい」
呆然としている俺に、静かに言うカーラさん。へ?しちゃって結婚?つまりあれか?噂の出来ちゃった……。
「い、いや。ちょっと待ってくれ。なんでそうなるの?おかしい。うん。おかしい!絶対おかしい!」
俺は馬乗りにされたまま、大声で叫ぶ。するとカーラさんは俺を見下ろし、スッと目を細くすると、
「いつもいつも、私にセクハラしてるのに、何を今更怖気付いてるんですか?いつも私に言ってる言葉は、全部嘘なんですか?ていうかそんな覚悟もないのにあんなこと言ってたんですか?」
うぐっ!?言い返せない……!け、けど!今のカーラさんは普通じゃないぞ!?
「い、いや!そうじゃない!そうじゃないって!今のカーラさんは普通じゃないんだって!仲間が死んで暴走してるだけなんだって!そんな簡単に、こんな好きでもない相手と結婚なんて決めたら、絶対後々後悔するって!」
「別にいいですよ?恋なんて、一時の気の迷いです。重要なのは、その人といて幸せか……です。私はシンさんと居るとき、幸せですよ?だからいいじゃないですか」
「い、いや!俺はほら!住所不定だし!給料も悪いし!」
「結構いつも稼いでるじゃないですか。それに、私も働いてるんですし、問題ないです。楽しい家庭を作りましょうね?」
俺を見下ろしながら、ニコッと笑うカーラさん。いやー!ダメだこの人!壊れてる!仲間が死んで、絶対どこかのネジ飛んだ!
そんな風に慌てて見る訳だが、俺も思春期男子。この空気はひじょ~……にマズイ。だってカーラさん美人だし?普段は性格だっていいし?結婚してもいいやと思う自分がいるのである。どうにかせねば、俺はティアの寝てる隣で、ちょっとまずい事態になりかねん。
ん?ティア……そうだ!ティアだ!流石に今のカーラさんでも。あの純情少女の前で、本気であの行為に及んだりしないはず!ティアで威嚇しつつ、なんとか退路を開けば良いのだ!
それに気づいた俺は、早速カーラさんに言った。
「カ、カーラさん!?ほ、ほら!ここにはティアもいることですし、してる途中に起きるかもしれませんのでやめておきましょう!あの子に見られたら、俺立ち直れなくなります!」
必殺技を発動し、それにカーラさんはぴたっと止まった。はあ……助かった。
俺がそれに安堵していると、カーラさんは少し考えたあと、俺の耳元にゆっくりと顔を寄せてきて、
「見られそうな状況でするって、ドキドキしますね♪」
………アカン。
この人、ついに壊れた。
何かギルドのおっちゃん達と、同じ様な事言ってる。
「ちょ!俺、童貞ですから!そんな高度なの!最初からは無理ですから!」
「あら?私も処女ですよ?一緒に捨てることになるんですね?初めてがこれって……ドキドキです。それに最初は痛いって噂なのに、ティアさんを起こさない様に声も出せないなんて……シンさんって、ホントにマニアですね」
マジか!カーラさん処女だったのか!流石俺たちの女神……違う!そうじゃなくて!
「ちょっと待て!?あんた初めてなのにそんな高度なの要求してるの!?無理だから!俺そんなのに応えられないから!大体、俺がマニア発言はよしてっ!?俺普通だから!ノーマルだから!ロマンチストだから!」
「大丈夫です。最初は、気持ちいい演技しますから」
そんなことされたら、俺は泣き崩れますよ?
「やめて!プライド傷つくからやめて!男として色々と譲れないの!」
「へ?童貞のくせにプライドとか、何言ってるんですか?まあ、これから上手になっていけばいいんです。ま、毎日付き合いますから……」
真っ赤な顔でボソボソとそう言ってくるカーラさん。童貞のくせにと言われたのはムカついたけど、
…………あ、ちょっと別にそれでいいかもって思えてきた。
なので俺は、彼女から抱きついたままだった彼女から、体を離し、ベットに寝転がると。
「……わかった。俺も相手がカーラさんなら問題ないや。寧ろ、願ったり叶ったりかもしれねえ。でも、一つだけお願いがある」
降参したようにそう言った。するとカーラさんは、俺の顔を覗き込み、
「なんですか?変なのはダメですけど、ここまで来たらヤケです。大抵のことは聞きますよ」
そう聞いてきた。なので俺はハハッと笑い、
「変なのじゃねえよ。ただな?俺たち、2人とも初めてな訳じゃん?だからさ。最初くらい、綺麗に行きたいわけだ。で、俺は風呂に入ってるけど、カーラさんはまだだろ?だからさ。風呂に行って、体を綺麗にして来て欲しい。俺もその間に、心の準備済ませるからさ」
俺がそう言うと、カーラさんは何だそんなことかと頷き、
「分かりました。その点に関しては、私も賛成です。では、ちょっと行ってきますね?」
そう言って、俺の体の上から降り、ドアに向かって歩きだした。俺はその背中に、
「ああ。楽しみにしてるよ」
と、声をかけ、最後に「バカっ♪」と可愛く笑って出て行ったカーラさんに手を振った後、体を起こし、寝ているティアの頭を撫でる。
そして部屋に訪れる沈黙。この部屋は地下にあるせいか、何の音も聞こえない。
それを心地よく思いながら、ティアの頭を撫で続け、ティアの顔がほにゃ……と崩れたのにぽわっとして……
「さて。行くか」
と、言うわけで立ち上がり、ドアから出て、廊下を全力でダッシュした。
最後に言わせてもらおう。決して、ヘタレた訳じゃない。
俺は紳士でいたいんだ。だからさ……
仲間を殺し、カーラさんを泣かせたバカを………ぶっ殺す!
え?何言い訳してるの?ヘタレただけじゃんw
ヤーいヘタレー!
作者はヘタレではないので、この誰もいない部屋に入ってティアでお楽しみ・・・・ゴホンゴホン
小説家になろう 勝手にランキング
+注意+
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