ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
あらすじを書く~官能小説のあらすじ
 まずあらすじの引用です。以下の文章を読んでみてください。

 私立空色しりつそらいろ高校二年生の佐々木大地と勅使河原てしがわら亜由は同級生だ。
 学園でもお嬢様で有名な亜由、そんな亜由と肩をぶつけてしまう大地、そんなちょっとしたアクシデントの後、大地は亜由と会話する機会を得る。
 亜由は大地をきちんと記憶していた、そのことに嬉しくなる大地。大地は美しい亜由の姿に見惚れる。
 放課後。ファミリーレストランでバイトをする亜由。バイトをしているところを知り合いに見つかるが、社会見学だと亜由はごまかす。勅使河原家は貧乏だった。実は日々の生活費を稼ぐのにも精一杯の毎日を送っていたのだ。
 ファミレスでのバイト中に痴漢をされた亜由は、怒って熱いスパゲッティを痴漢男の顔にぶつける。店内で喧嘩になり、亜由はバイトをクビになってしまう。プライドの高さが仇となった。
 家に帰ると、電気はおろかガス、水道まで止められてしまっていた。途方に暮れる亜由。
 亡くなった祖父から託された。お家の大事の時に空けるようにと言われた封筒を空けてみることに、中には結婚の祝いに家屋敷を佐々木清十郎という使用人に与えたこと。
 佐々木清十郎が子々孫々まで勅使河原家に忠誠を誓う旨と、佐々木家が勅使河原家の送った家宝を受け取ったこと、そしてしかるべき時が来たら、それを返す旨が記されていた。
 佐々木家の住所はすぐ近くだった。家宝を目当てにメイド服を持って佐々木家に向かう亜由。
 佐々木清十郎宅を訪ねてみたら、そこは大地の家だった。彼の曽祖父が書いた念書をみせて、家の家訓だからと言って給料日までの5日間メイドをすると宣言する亜由。
 戸惑う大地だったが亜由に押されてメイドをすることを認めてしまう。そしてまずは夕食のラーメンを作ることになった。
 大地の家の冷蔵庫は充実していた。その材料を使ってラーメンを作る亜由、ラーメンは上手にできた。そこで亜由は大地に酒を盛ろうとたくらんだ。彼を酔っぱらわせ寝かしつけた後、家宝を捜索しようと考えたのだ。
 コップに酒を盛り大地に出す亜由。
 しかし大地は何の気なしに自分と亜由のコップを交換する。間接キスにドキドキする大地。
 一方水とお酒を取り替えられたことに気が付いていない亜由はお酒を一気飲みしてしまう。
 酔って熱くなり服を脱いでしまう亜由、酔いの勢いはとまらず亜由は自分の胸を大地に揉ませる。
 そのままなし崩し的にセックスを始めてしまう。
 ぎこちないセックスで、破瓜の痛みに悶える亜由、行為は結局膣内射精まで至ってしまう。
 初めてのセックスに気持ちよさを感じる大地、一方亜由も子宮に染みる精液にうっとりとしてしまう。

 フランス書院美少女文庫 わかつきひかる著 MYメイドのストーリーを要約

 ライトノベル風官能小説、ジェブナイルポルノの最大手、美少女文庫。その作品の中から一作、わかつきひかるのマイメイドのプロローグから第一章までのあらすじを書き出してみました。
 このあらすじは一見して商業官能小説の特徴を兼ね備えています。
 まずキャラクターと状況の説明が終わったら速やかにヒロインと主人公はエッチシーンに入ります。
 今どき見ない強烈に貧乏な亜由の設定や、突然出てくる妖しげな念書。一言で言い切ってしまえばご都合主義の塊です。
 私は単に官能小説における、こう言ったご都合主義を批判するのではありません。
 官能小説やアダルト漫画ではこう言った展開は比較的良くあることで、エッチに速やかに持っていくために強引な展開を使用するのは珍しいことではありません。
 読者が読みたいのは官能的なセックスシーンであり、細かな設定やストーリーでは無い、といった場合にはこういうプロットを採用することも一つの手段です。
 官能小説とは本来、誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのようにして、気持ち良いかを書いた小説であるのです。
 実際に文章の大半がセックスシーンで埋められていて、状況の説明などには最低限の文字数しか使われていません。
 率直に言ってこういった文章をプロットレベルで書くことはアイデアさえあれば誰でもできます。
 アイデア自体も昔から繰り返し使われたモチーフがほとんどで、それらは終わることなく再利用されています。
 まず状況を描写して、キャラクターを紹介し(外見描写は大事です)しかる後に、速やかにセックスシーンへ移行する。
 こういった比較的安直なプロットを多用することから、官能小説は二流三流に見られる傾向が強いです。
 しかし一般のストーリーの娯楽性を追求した大衆小説では許されないような、こう言うタイプの描写だけのプロットが許されると言うのは、官能小説が持つ一つの大らかさであるとも言えます。
 (断っておきますがここで例を挙げたマイメイドはきちんとした構成をしたラブコメディです。構成がきちんとしているのはわかつきひかるの特徴の一つです)
 官能小説はセックスがしっかりと書けていればまずはそれで良いのです。
 また状況とキャラクターの描写後、速やかにセックスシーンを書くこの手のプロットは商業官能小説(特にJポルノ)では主流です。
 もちろんご都合主義的な展開を用いず、リアルに書くことも可能ですが。その場合でも展開の構造はそれほど変化しないでしょう。
 こういったプロットは案外需要がある小説の書き方なんだと覚えておきましょう。一つの章に最低一つの濡場は現代官能小説の特徴的な構造です。
 こういったプロットの小説の質を上げることは、キャラクター表現を含め、文章の描写を磨き上げることに尽きます。
 読書を繰り返し、様々な比喩を蓄え、凝った描写やあるいはあっさりとした描写、ときにはオノマトペ(擬音、擬態語)を多用したような。ちょっと下品な表現も磨きましょう。
 そうすることでこのタイプの官能小説の質は大きく向上するはずです。

 さて私は官能といっても泣きゲーみたいなラブロマンスが書きたいんだとか、伝奇やファンタジーや探偵モノとか、燃えと萌えを書くんだから、ただ状況とキャラだけ示して、すぐにエッチじゃお話にならない。と言ったアダルトゲーム畑の方の声が聞こえてきそうです。
 こういったストーリーを書くには描写とアイデアだけではなく、物語る技術が必要になりますね。
 ちなみに私は物語る技術のお話の時に良く出てくる、起承転結のお話があまり好きではないです。
 実用的ではないし、全然具体的じゃない。
 ここではよく言われる起承転結より、もっと詳しく具体的なお話の技術について語りたいと思います。
 少し長文になるんで覚悟してください。
 美少女文庫的なあるいはフランス書院や二次元ドリーム文庫的な小説が書きたいんだと言う人は、以下の文章は飛ばして、次の箱書きに進んでもらってかまいません。
 準備は良いですか? それでは物語る技術の基礎についてお話しましょう。

同人サークルぶるずあい


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。