名古屋−柏 後半ロスタイム、勝ち越しゴールを決める名古屋・ダニエル(右)=豊田スタジアムで(畦地巧輝撮影)
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名古屋はロスタイムでダニエル(31)が得点を決め、3−2で柏を振り切った。首位の横浜Mが中沢のゴールで磐田を1−0で下し、勝ち点を62に伸ばした。追う浦和、広島、鹿島がいずれも敗れたため、30日の次節に新潟に勝てば9年ぶりのリーグ制覇が決まる状況となった。2位の浦和は川崎に、3位広島はC大阪に競り負けた。鹿島は鳥栖に敗れた。C大阪は4位に浮上した。湘南はFC東京に逆転負けし、来季のJ2降格が決まった。甲府は大分と引き分けて残留を決めた。新潟は仙台に勝ち、清水は大宮を下した。
◆名古屋3−2柏
優勝も降格も関係ない、ただの勝ち点3だ。それでも、どのチームにも劣らない歓喜の波が晩秋のスタジアムを振るわせた。後半ロスタイム3分、本職ではないボランチに入ったDFダニエルが、FW玉田とのパス交換から左足を振り抜く。やや当たり損ねだったがシュートは導かれるようにゴール右隅へ。次の瞬間、飛び出したベンチメンバーや駆け寄ったGK楢崎も含めた全員にもみくちゃにされた。グランパスでは最初で最後となるであろうゴールは「神様のおかげ」と振り返った惜別の決勝弾だった。
そして初のヒーローインタビュー。未発表ながら今季限りでの退団が決定しているダニエルは、涙をにじませながら自ら別れを告白した。「自分はチームを去るけれど、みんなには本当に感謝しています。2年前に名古屋に来たとき、みんなが僕のことを知ってくれていた。だから1分でも30分でもチームのために全力でプレーしようと決めた。最後にチームを救うゴールを決められ本当にうれしい」
リオの貧民街で生まれ育ち、ジャパニーズドリームを夢見て09年に来日。右腕に名前を刻み込んだ母国の娘に仕送りをしながらひたむきにプレーしてきた。陽気な性格だけでなく、オフの帰国中もスタッフにメールで小まめに近況を報告する真面目さも。6月に男子を出産したパートナーに日本語を教えるほど日本を愛し、「来年のことは何も決まっていない。でもできる限り日本でプレーし続けたい」と訴えた。
ダニエルだけでなく、田中隼、阿部、増川と退団が決定した4人の必死のプレーがチームの結束力を呼んだ3連勝。「みんなが一体となって喜んでくれたのはチームが一つになった表れ。残り2試合、前を向いて戦っていきたい」。クラブ変革の渦の中、選手一人一人の情熱は、決して冷めていない。 (宮崎厚志)
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