社説:国家公務員給与 減額やめるなら行革だ
毎日新聞 2013年11月24日 02時32分
国家公務員の給与問題に動きがあった。政府は来年春に期限を迎える平均7.8%の給与減額の延長を見送る一方で、中高年職員の給与を抑制していく方針を決めた。
来年春の消費税アップと同じ時期に公務員給与が「復元」する格好だが、復興財源目的で実施した特例措置だけに打ち切りはやむを得まい。天下り対策、独立行政法人改革、定員抑制など幅広い行革への努力で政府は身を削る姿勢を示すべきだ。
公務員給与は東日本大震災の復興財源として2012年度から2年間減額された。政府は地方公務員の給与カットも地方に要請、1000を超す自治体が応じている。
消費増税への理解を得るため来年度以降も減額を続けるべきだとする意見もあり対応が注目されたが、政府は来春以降の継続を見送った。減額措置は人事院勧告によらない措置で、人事院は来年度から給与を人勧の水準に戻すよう求めていた。
安倍内閣が消費増税に伴う景気減速を懸念し、民間企業に賃上げを要請していることとの整合性も考慮したとみられる。「デフレ脱却を掲げる傍らで給与削減はつじつまが合わない」との指摘が起きていた。
公務員の労働基本権回復を棚上げしている以上、その代償措置である人勧をこれ以上ないがしろにすべきでない。国家公務員制度改革関連法案も結局、新設する内閣人事局に人事院が関与する形となった。基本権問題を放置して制度、給与改革に取り組む限界を示したとも言える。
一方、50歳代後半以降の中高年職員の給与抑制は民間企業に比べ不十分で、官民格差がこれまでも指摘されてきた。政府は06年度から段階的に中高年職員の給与を減額しており、来年1月から55歳以上の昇給を原則停止するが、なお不十分だ。政府の要請に沿い、人事院はメリハリのある見直し案を示してほしい。
給与以上に問題なのは、第2次安倍内閣から行政改革にのぞむ熱意があまり伝わってこない点だ。
政府は独立行政法人の役員で公募を実施しているが、民間人への門戸開放はまだ足りない。官民交流人事が天下りの抜け道になっていないかなどをきちんと点検し、国民に説明していく必要がある。
検討が進む独立行政法人改革も統廃合や民営化も含めた大胆な改革に踏み込めるか正念場を迎える。地方公務員に比べ遅れていた国家公務員の定員抑制をどれだけ進められるかも問われている。
身分が安定した公務員は厚遇されているという感情は国民に根強い。政府が行革でしっかりした具体案を示さないようでは給与復元への理解は得られまい。