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外食用加工肉、回転寿司の代用魚…偽装批判は、言いがかり?外食産業の企業努力の否定では

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2013.11.23

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●回転寿司では、多くのネタが代用魚

 次に代用魚の話です。キャビアの代わりにランプフィッシュの卵が使われているのが不気味だとか、回転寿司のえんがわはオヒョウという謎の魚だの、さまざまな話があります。

 代用魚自体は、取り立てて珍しい話ではなく、昔は厳しい表示義務がなかったために、メロは銀ムツとしてスーパーに並んでいましたし、銀ダラの代わりにメルルーサも銀ダラとして陳列されていました。「そんなのインチキ」「虚偽表示じゃないか」と言われかねませんが、銀ダラと味がそっくりで調理法も同じであれば、別に毒のある魚でもなんでもないので、それほど神経質になる問題でもないと思います。

 それでも2003年にJAS法が改正され、そのような魚の名称混同は禁止されています。

 その結果、スーパーなどでも、よくわからない名前の魚を見かけるようになったわけです。

 先ほどの肉の話と同じで、回転寿司でも別に銀ダラとしてメルルーサを出しても、なんの問題もありません。むしろ商品を安定して供給できるほうが大切であり、客もメニューが毎回変わるより、安定してあるほうが便利なので、憤慨する理由がわかりません。

 また、中にはアナゴの代用魚であるアンギーラはウミヘビの一種などという話がまことしやかに語られていますが、まったくの嘘。アンギーラは海の蛇という意味合いの言葉らしいのですが、マルアナゴという和名もある、れっきとしたアナゴの仲間です。

 またナイルパーチやティラピアといった淡水魚が白身の代用魚として出ると「淡水魚には寄生虫がいる」と言う人もいるようですが、サーモンの刺身と同じで一旦冷凍処理されているために、寄生虫感染のリスクは当然回避されています。そんなリスクのあるものは本来流通しないように、日本の食品基準は厳しい部類ですので、気にせずおいしく食べていられるのです。

 そういう意味では、格安居酒屋の一部は、流通から囲い込んで低価格化を推し進めすぎた結果、あらゆる物がブラックボックス化して、こうした安全性が失われていることもあります。

 実際、店によっては生食するとアニサキスなどの寄生虫症を引き起こす、冷凍処理されていないタラやホッケの刺身などを提供していたりして、よっぽどそういったもののほうが問題なのに、代用魚が不気味だという話で盛り上がるのはおかしなことです。

●企業努力を、なかったことにしてはいけない

 さて、今回の偽装問題。確かに虚偽のメニューは問題がありますが、それを「騙された、騙された」と言いがかりをつけまくるのは何かおかしい気がします。

 確かに芝エビとバナメイエビは全く違う味ですが、それを提供された段階で見分けがつかなかっただけでなく、美味しい美味しいと堪能したのであれば、それは調理師のセンス、調理法、すなわち腕前が素晴らしかったということでしょう。

 かくいう筆者も、最近、お気に入りの料理店が、店が小綺麗になったと思いきや、メニューが軒並み格安材料のものになり、料理の手間が二手間も三手間も省かれ、市販の調味料で味付けされただけの、アルバイトでもつくれるような味付けになっていて愕然としました。

 筆者はそうした店には別に文句も言わず、二度と行きませんが、逆に言えば、それくらい激変していても見分けがつかない人もいるということです。見分けがつくことが良いことでもなく、見分けがつかないから愚かでもありません。お金を払って満足すればそれでよし、不満であれば二度と行かないだけ。

 この当たり前の話を棚に上げ、騙されていたと罵り騒ぐのはどうしたものでしょうか。

 こうして騒げば騒ぐほど食品業界はますます閉鎖的に、ますますわからない世界になってしまうのではないかと心配をしてしまいます。

 並々ならぬ努力をして代用魚を見つけ、価値のなかった魚に価値を見いだし、安くて硬い肉を、安くて美味しい肉にする研究開発をする人たちの努力を「なかったこと」にしていいのでしょうか?
(文=へるどくたークラレ)

●へるどくたークラレ 
 数々の大型書店で理系書売り上げ1位となった『アリエナイ理科ノ教科書』著者。サイエンスライター。生化学を専門に、化学兵器、ドーピング問題、ドラッグといったジャンルから添加物や化粧品といった生活に根ざした題材を取り上げることも。サブカル雑誌から化学専門誌まで幅広く連載を持つ。
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