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危うい”プライベート画像”交換

11月22日 18時10分

村石多佳子記者

「リベンジ(=復しゅう)ポルノ」ということばをご存じでしょうか。交際中に撮ったプライベートな画像、体の写真などをふられた恨みから、インターネット上に流出させる嫌がらせのことです。取材を進めるとこうした画像を交際中にやり取りする行為が今、若者を中心に広がっていることが分かってきました。報道局遊軍プロジェクト生活情報チームの村石多佳子記者が解説します。

気軽に画像を送る若者たち

「まあちょっとだけならいいかなと思って、胸から下の顔が写らない部分の写真を送りました。」ネットで知り合った男性に体の一部の写真を送ったという女子高校生の話です。

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私はプライベートな画像の交換の実態を探ろうと、東京・渋谷や秋葉原で女子高校生を中心に話を聞きました。
このうち胸元が大写しになった水着姿の写真を交際相手に送ったという女子高校生は、「彼氏に『水着でいい感じのショットを撮って』と言われ、あまり抵抗なく『彼氏だからいいか』みたいな感じで送っちゃいました!」とあっけらかんとした様子で話しながらスマートフォンに収められた画像を見せてくれました。
「彼氏が喜んでくれてうれしい」「送るのを拒否して嫌われたくない」相手に求められるがままに画像を送る女性たち。
そのほとんどは外見も話し方もごく普通の印象だったことに私は驚きを覚えました。

リベンジポルノ被害に苦しむ女性

しかし、こうした行為は大きな危険をはらんでいます。
交際相手に送った画像が、インターネット上に流出する被害に遭った22歳の女性が取材に応じてくれました。
女性が当時の交際相手に画像を送ったのは4年前のことでした。
「『写真送ってよー』という感じで言われて、最初は『嫌だ』と思ったけど、まだつきあい始めというのもあったし、私も好きだったし、まさかこんなことになるとは思わなかったので送りました」と話す女性。
送ったのは顔も写った下着姿の画像でした。
ところがそれから数か月後、女性が別れを切り出した直後、インターネット上にこの画像が流出していることを知りました。

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驚いた女性は画像の削除を依頼し、いったんは流出を食い止めたはずでした。

繰り返す被害潜在化する拡散

しかし、被害はそれだけでは終わりませんでした。
3年後、削除されたはずの画像が、再びインターネット上に流れていることを友人から聞かされたのです。
出回っていたのは、利用者が急速に増えているソーシャルメディアの中でした。
画像が流出した先が、インターネットの掲示板など公開されたサイトであれば、運営者などに対して、画像を削除してもらうよう依頼することができます。

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しかし、特定の人しか見られないソーシャルメディアの場合、外部からは誰がどこまで拡散させているのか確認できず、完全に消し去ることも困難です。

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女性は「ネット関係は正直怖いので、自分は絶対にやっていない。そこの中でまさか画像が流出するなんて思っていなかった。これからまたどんなものが起きるのか不安でしかたがない」と話していました。
現在、女性は結婚し、家庭を築いています。
夫の目に写真が触れることがないか。
今も終わりの見えない不安を抱えています。

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急増するリベンジポルノ被害

若者からネットトラブルに関する相談を受けている東京・港区の「全国webカウンセリング協議会」では、リベンジポルノに関する相談が3年前から寄せられるようになりました。
「上半身裸の画像と下着姿がネットに出ている」「同じクラスの男子に私の胸や下半身の画像が出回っている」など、10代の女性からの相談が急増しています。

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当初は年間10件程度だった相談はソーシャルメディアの広がりとともに増え続け、現在はその10倍以上にのぼると言います。

子どもを被害から守るために

協議会の安川雅史理事長は、全国各地で開かれるネットに関する講演会に参加し、教師や保護者を対象に画像のやり取りの危険性を訴えています。

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特に安川さんが強調しているのが保護者の役割です。
保護者が知らない間にネット上で広がるやり取りから若者たちを守るためには、まずは保護者がネットに詳しくなる必要があるからです。

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講演会に参加した保護者は、「うちの子に限ってと思ってしまってたんですけども気をつけないといけませんね」とか、「子どもたちが柔軟に吸収してしまっているので、それよりも先に行かなければならないとなると大変な勉強をしなければいけないと思いました」と話していました。
安川さんは若者の間で急増しているリベンジポルノ被害について、「大人の知らない世界の中で子どもたちは結構過激なことをやっています。自分の子どもにもいつ降りかかってくるか分からないという気持ちをもっていなければ子どもを守れない」と話していました。

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リベンジポルノは犯罪

リベンジポルノを取り締まることができるのか。
ネットトラブルに詳しい清水陽平弁護士は、リベンジポルノについて、現行の法律で取り締まることができるケースは多いと話しています。
例えば男性が18歳未満の交際相手に「わいせつな写真を送って」とお願いし、女性側が送った場合、この男性はわいせつな画像を作ったということで、児童ポルノ禁止法の「製造」の罪が適用される可能性があるということです。
さらに、画像そのものでなくても、ネット上にさらされた児童ポルノ画像へのリンク先のアドレスを貼り付ける行為も児童ポルノ禁止法の「公然陳列」の罪と認めた最高裁判所の判決もあり、画像を拡散させる行為も処罰の対象になると清水弁護士は話していました。

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消し去れない画像

その一方で、犯罪として画像を流出させた人物を処罰することはできても、いったんネット上に流出した画像を完全に消し去ることは不可能だという指摘もあります。

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1度画像を送ってしまえば、それがいつ、どのような形で利用されるか分かりません。
そのため、人目に触れられたくない画像は、メールなどで他人に渡さないよう徹底することが重要です。
そして、ネット上で次々と拡散していく危険性があるということを若い人たちにもっと伝えていく必要があると感じました。