【東京】2002年に神奈川県でレイプ被害に遭ったオーストラリア人のキャサリン・ジェーン・フィッシャーさんが21日、都内で記者会見し、日本での民事裁判中に帰国した加害者の元米海軍兵が「軍に出国を命じられ、従っただけだ」と米裁判所で証言していたことを明らかにした。
元米兵が帰国し行方が分からなくなったため、ジェーンさんは04年に東京地裁が元米兵に命じた300万円の損害賠償を受け取っていない。米兵犯罪では同様に補償を受けられないケースが多く、証言内容が事実なら、軍が組織的に被害者救済を軽視していることになる。ジェーンさんは「米国と日本が加害米兵を守っているのが実態」と批判した。米海軍は21日現在、事実関係をめぐる本紙の取材に回答していない。
ジェーンさんは自ら元米兵の居場所を突き止め、米ミルウォーキー郡裁判所に提訴した。裁判記録によると、元米兵側は今年5月、書面で証言を提出。02年10月ごろの話として、「海軍の事情聴取が終わった時、海軍の弁護士が『日本から出国しなさい』と告げた。民事訴訟のことを質問したが同じ命令だったので、ただ従っただけ。全ては洗い流され、終わったと思った」と主張した。
米裁判所は今年10月、東京地裁判決を元米兵に適用するジェーンさん勝訴の判決を出した。双方の合意に基づき、賠償額は1ドルとされた。ジェーンさんは会見で「金額ではなく、責任を認めてもらいたかった。私だけではなく、私と同じような被害に遭った沖縄の人々にとっての勝訴でもある」と語った。
米国でジェーンさんの代理人を務めたクリストファー・ハンユーウイッツ弁護士は本紙の取材に「元米兵側による棄却の要求を2度乗り越え、判決を勝ち取った」と話した。