小畑精和

AD INFORMATION 明治大学の教養「レアリストの幻想」とケベック

 私は学部・大学院を通して仏文学を専攻し、レアリスムを問い直す「ヌーボー・ロマン」に興味を持った。そこから「人間は現実を加工してしか捉えることができないのに、しばしばそれが『現実』自体のふりをする」という考えに至り、それを「レアリストの幻想」と名付けた。以来、人間が現実に対して抱くイメージを様々な文化表象を通して研究するようになった。その後、ケベックに興味を持ち、モンレアルに2年間滞在して、ケベック・アイデンティティ形成について研究を始めた。幸い帰国後に、ケベックについての著作活動で、いくつかの賞をいただいた。ケベックは地理的にも心理的にも日本から遠いが、1960年代に急激な近代化を遂げて、オリンピック、万博を開催した点など意外に類似点も多い。レアリスムが育たなかったことも共通している。文化的創造力の源泉である現実とイメージとの葛藤が両者ともに見られる点がおもしろい。(談)

掲載内容は2012年2月時点の情報です。

PROFILE

小畑精和明治大学政治経済学部教授

1952年東京生まれ、大阪育ち。京都大学文学部卒業。モントリオール大学客員研究員。主著に『ケベック文学研究』(カナダ首相出版賞審査員特別賞)、『「ヌーヴォー・ロマン」とレアリストの幻想』等。1998年「北米フランス語普及功労章」受章。日本ケベック学会会長、明治大学体育会ラグビー部長。自称体育会系文学者。